第102話

「水希、私は今でも…」


「ちゃんと、、結ばれたいから」


「そうだね、、」


「誕生日…止まれないから覚悟しててね」


「もうしてるよ。だから、毎日ドキドキしてる」


「私もだよ」



あと少し、あと少し耐えれば誕生日が来る。ここまで我慢したんだ、絶対に煩悩なんかに負けない。

あっ、ごんちゃんから〈どうしたの〜?〉ってLINEが来た。一応誤魔化すためにお腹痛くてトイレに行ってたと返信する。


今日はちゃんと抑制できたからお姉ちゃんの邪魔が入らなかった。いつものパターンだったら、一番最悪なタイミングでごんちゃんがドアをどんどんと叩くだろう。

来月には私は16歳になる。誰にも邪魔されず、幸せな誕生日を迎えたいから今は我慢だ。



「あっ、、」


「水希、どうしたの?」


「ごんちゃんからお腹痛いなら部屋でゆっくりした方がいいよってLINE来た」


「じゃ、まだ暫くは2人っきりだね」


「でも、イチャイチャの度が越えるとお姉ちゃんの監視の目が入り絶対に邪魔される」


「ふふ、何それ」


「いつも、邪魔されるから…絶対、空から監視されてるよ」



お姉ちゃん、私の誕生日は絶対に邪魔をしないでね。約束は守ってもらうよ。

芽衣と出会って半年、付き合って2カ月。来月には交際期間が3カ月になる。

あっという間すぎて時間の経過が早く感じる。芽衣は付き合い始めて大人っぽくなったな…少し色気を感じる。



「何?ジッと見て」


「芽衣、初めて会った時と比べると大人っぽくなったなって」


「だって、16歳になったもん」


「下着もエロかった…」


「馬鹿///!水希のスケベ…」



しまった。つい今日見てしまった下着を思い出し、ぽろっと言ってしまった。

だって、、本当に大人っぽい下着で驚いた。もしかして、私のためかなって思いつつ密かに興奮をしていた。



「私のため?」


「何が…?」


「下着が大人っぽくなったの?」


「ち、、違う…」


「そっかー。でも、入学当初の芽衣の下着って苺の・・・」


「水希!」



痛いよ、力加減を考えようよ。芽衣は馬鹿力すぎて腕にあざが出来そうなぐらい痛いのにずっと叩いてくる。

芽衣にとって苺の下着は黒歴史なのかもしれない。何度もあれは…って言ってるし。

私は可愛いと思ってたよ。苺柄の下着をつける人いるのかと思ったし(馬鹿にしてない)



「水希が人の下着の柄とか見てるなんて、やっぱりスケベだ」


「下着の柄を見たのは余りにも印象的だったからだよ。それにスケベなのは否定しない」


「もう…嫌い」


「私のこと嫌いなの?」


「今は嫌い…」


「いつもは?」



芽衣をからかうの面白い。お風呂で散々揶揄われたからお返しだよ。

言い返せない芽衣を追い詰めるのはよくなくないけどちゃんと「好き」って言って欲しいから今回は許してほしい。

好きな人に「好き」って言われたい。



「好き…」


「私も芽衣が好きだよ」


「・・・寝る」


「じゃ、一緒に寝よう」


「苛めないでよ…」


「虐めじゃないよ、本気だよ」


「遊んでるもん…」



遊んでないよ。途中までは遊んでいたかもしれないけど今は本気で、最後の夜だし芽衣と一緒に寝たかった。

だから、笑顔で頭をポンポンとしながら「好きだからだよ」って伝えると嬉しそうに笑ってくれた。



「寝ようか」


「うん」



電気を消し、私の腕の中にいる芽衣の頭にキスをする。芽衣の体温を感じると心がポカポカし眠気が襲ってくる。

今日はよく眠れそうだ。明日で修学旅行は最後だから楽しまないと。芽衣、おやすみ…大好きだよ。










うーん、よく寝た。昨日は早く寝たから疲れも取れたし、たっぷり寝れた。

私の腕の中にいる芽衣も気持ちよさそうに寝ている。寝顔が可愛って羨ましい。

そろそろごんちゃんも起こさなきゃ。ごんちゃんは寝起きが悪いから。


ごんちゃん!!!しまった!慌てて、隣のベッドを見ると誰もいなくて…ごんちゃんのことをすっかり忘れて寝てしまったことに気づいた。

携帯を見るとごんちゃんから大量のLINEと着信があり、修学旅行中はマナーモードにしてるから気付かなかった…。

やっちゃた…ごんちゃんとのLINEに大量の言葉が羅列してる。



・開けてー

・開けろー

・寝ちゃったの?

・返事返して…寂しいよ

・水希のバカー

・本当に2人とも寝てるの?

・寒い…寒いよ

・何でドアを叩いても開けてくれないの?

・風邪ひいたら恨んでやる!

・明日、何か奢れー!

・もういいもん…友達の部屋に行くから



ごんちゃんから大量のLINEが来てた。怒ったスタンプと泣いてるスタンプが連打されてるし…これって、相当ヤバい。

熟睡してて全くドアの叩く音気づかなかったし多分、時間的に思いっきりドアを叩けなかっただろう。



「芽衣、起きて…」


「もう、朝?」


「携帯、確認してみて…」


「携帯?」



今起きたばかりの芽衣が寝ぼけながら携帯を触っている。携帯を見た瞬間、「あっ!」と声を出し慌てて隣のベッドを確認した。



「ごんちゃんに悪いことしちゃった…」


「すっかり忘れてたね」


「謝らなきゃ」


「うん…それに、もうお金ないのに今日奢らされる」


「そうなの?」


「えっ?芽衣の携帯、見せて」



ちょっと待ってよ…私と全然違う。芽衣には〈開けてー〉と〈寝ちゃったの?〉の2つの言葉しか来ていない。

私と差がありすぎだよ!私の方には奢れまで書いてあるし扱いが違いすぎる。


私はこの後、ごんちゃんに〈今、起きた…〉とLINEを送り…速攻で返ってきた文字に叫びたい気持ちを抑えて凹みまくる。

LINEには〈また、軽音部とコラボよろしく!!!〉と恐ろしい言葉が書いてあった。

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