第95話

「水希…」


「あっ、芽衣。上がったんだ」


「眼鏡…」


「えっ?うん、お風呂に入ったから、、あっ」



そうだった…みんなの前では眼鏡は禁止って言われていた。芽衣がまた拗ねてしまう。

でも、お風呂に入る前にコンタクト取るのは習慣でありコンタクトをしたままお風呂に入る勇気なんてない。


それに、芽衣は気にするけど誰も私の眼鏡姿になんか興味ないと思う。

芽衣がなぜか過敏になってるだけだよ。だから、大丈夫って言いたかったけど芽衣に腕を掴まれ早歩きで部屋まで連れて行かれた。



「今日、ずっと眼鏡なの?」


「うん…日数分しかコンタクト持ってきてないし」


「そうなんだ…」


「おっ、やっと戻ってきたね。2人ともご飯の時間まで下に卓球しに行かない?さっき誘われたんだ」


「私達はいいかな。ごんちゃん、行っておいでよ」


「そっか、時間になったら戻ってくるね」



ごんちゃんが部屋を出て行き、私はベッドに座りながら芽衣と2人っきりだなって密かに喜んでいた。

呑気に鼻歌を歌っていると芽衣がいきなり抱きついてくる。芽衣に眼鏡を外され…キスをされた。最初からピッチの速いキスを。


これはなかなかの…キスを返すのに必死になる。私は芽衣と付き合い始めて思うことがある。芽衣って意外に積極的だ。

この前のこともあるし…いつも私は戸惑い慌てふためくことが多い。だって、今もキスをしながら後ろに押し倒され、潤んだ瞳で見つめられた。



これって非常にヤバい状態だと思う。だって、今は私が上になり芽衣の首元にキスをしたりしている。これ以上は進んでは行けないと必死に理性を保ってるけどキツいかも。

大きめの部屋着を着ていた芽衣の服が乱れ、肩に赤い小さなあざを見つけた。


最初は何だろうと思っていたらハッとする。これってキスマークだ。この前、私が芽衣の肩に付けたキスマーク。まだ、残ってたんだ。

理性が保ちそうにない。どうしたらいいの、、少しだけ先に進んでもいいのかな。



「芽衣、肩痛くない?」


「痛くないよ?」


「キスマーク付けたときは?」


「分からないよ…ドキドキして考えられないもん」



じゃ、もう一度付けていいよね。見えない所に、そして今度は少し胸の近くに…。

って…流石にダメか。明日もみんなでお風呂に入るし胸元なんて見つかったとき芽衣は説明出来ないから無理だ。


だったらせめてと同じ位置に思っていたけど芽衣が私の手を掴み胸元に持っていく。

触っていいってこと?私達はお互い先に進みたいけどずっと我慢をしている。

芽衣も少しだけならって思っているんだね。


いつもだったらここで邪魔が入るのに今日は一向に入らない。お陰で私の手は芽衣の胸の上にある。少しだけ力を入れると芽衣が顔を背け、私も恥ずかしくなる。

服の上からでも気持ちいい感触は、直接触るとどんな感じなんだろう。想像する・・・



「水希、芽衣ー!ドア開けて。もうすぐご飯だってー」



だよね、だよね。分かってたよ!いつものパターンだから分かってたよ!

ただ、今日は京都にいるからお姉ちゃんの空からの監視は探すのに時間が掛かったみたいだ。芽衣の柔らかいお胸…バイバイ。短い時間だったけど幸せでした。



「水希、開けるの遅いよー」


「十分早かったよ!」


「はぁ、お腹空いたー。早く下に行こう」



ごんちゃんは食前の運動でスッキリしてるみたいだけど私は全然スッキリしてない。むしろ、モヤモヤが溜まる一方だ。

誕生日まであと何日だろ、、限界が来てる。

いつも限界の先に足の指をちょこっと付け、邪魔がいつも入りすぐに引っ込めるしかなく悲しくなってきた。



「あっ、芽衣…眼鏡、掛けても大丈夫?」


「仕方ないもん」


「大丈夫だから、、誰も気にも留めないよ」



食堂に行くと四角のテーブルにみんなの夕ご飯が置いてある。隣にいるごんちゃんがずっとお腹空いたと連呼し、釣られて私もお腹が空いてきた。

先生の指示通りの席に芽衣達と話しながら席につき食事の合図を待っていると、先生の説明が始まった。


ホテルから出ては行けないとか、夜は先生が見廻りするとか…あとは、就寝が23時は誰も守らないだろう。

やっぱり友達と色々話したいし、夜はこれからだ。芽衣と楽しい夜を過ごしたいし。



「はーい、みんな!それでは頂きます!」



京都のご飯が美味しい!私の嫌いな人参の煮物があるけど無視をしたら問題ない。どれだけ綺麗に盛り付けられても私は絶対に食べないからと決めている。



「水希、人参食べないとダメだよ」


「芽衣…私が人参嫌いなの知ってるでしょ」


「甘くて美味しいよ」


「砂糖の甘さだよ…」


「はい、あーん」


「やだ!芽衣のあーんでも絶対に嫌だ!」



人参なんてこうだ、隅っこにやってやる。蓮根の下に隠し、これで私の視界に入らない。

蓮根の穴からチラチラ見えるけど気にしない、まるで今の私の現状にそっくりでチラチラと来る視線なんて気にしない。


顔も名前も知らない子に見られても私はどうすることもできない。一体、私を見てる人はどんな気持ちで見て何を考えているの?

何を期待しているのか知らないけど、私はどこにでもいる普通の女子高生だ。だから、そっとして欲しい。

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