第81話

人間は精神を病むとげっそりする。部活とピアノの練習の日々に私は精神的に追い詰められていた。歌とピアノのどちらかに集中すると、上手くいかないし…難しすぎる。



「水希…大丈夫?」


「芽衣、、大丈夫じゃない…」



あと1週間後に文化交流会の日を迎える。私は疲れていた。それに芽衣が気を遣ってくれて日曜日はいつも2人で家でまったり過ごしている。デートも出来てないし…。

でも、疲れが取れないから甘えるしかなくて情けなかった。



「来週、大丈夫かな…」


「応援することしかできなくてごめんね」


「芽衣は謝らないでよー」



こうやって日曜日に私を癒してくれるからもう少し頑張ろう、芽衣にカッコいいところ見せたいってなるんだ。

芽衣が私の活力で、芽衣がいなければとっくに逃げ出していた。芽衣がいたから逃げずに頑張ろうしてるんだよ。


文化交流会の生徒会の仕事もお姉ちゃんと先輩達が私の分もやってくれている。だから、ちゃんと結果を出さないと申し訳なくて必死に練習している。

お姉ちゃんに盛り上げろって言われてるから大変だけど…実は、、芽衣には内緒にしてることがある。


上手くいくといいな…お陰で私は大変なことになってるけど。一曲の予定が二曲歌う事になり、、練習量が吐きそうなくらい大変になった。

それも二曲目はバラードで…これもアニソンだけどバラードで盛り上がるか不安すぎる。



「芽衣、膝の上に乗って」


「えっ///」


「芽衣を体いっぱいに感じたい」


「こう///?」


「向きが反対」


「恥ずかしい…///」



体から疲れが飛んでいく。芽衣を抱きしめ、呼吸をすると心が安心でき力が漲ってくる。

ずっと考えていた、芽衣と釣り合うようになるにはどうしたらいいのだろうと。

私は平凡な女子高生で、取り柄は走ることしかない。同性同士の恋で全てが不安なのかもしれない。


芽衣にはもっと良い人がいる、男の人と付き合った方がいいんじゃないかとか…考え出したらキリがないぐらいだ。

私でいいのかな?って考えれば考えるほど、不安で自分に自信をつけたかったから今回の文化交流会は私への試練なのかもしれない。



「可愛いな〜」


「やめてよ…恥ずかしい///」


「芽衣、文化交流会への力が欲しい」


「・・・目を瞑って」



エネルギーが湧いてくる。芽衣はキスが上手くなった。私の頬を手のひらで包み込み、何度も離れては引っ付き唇を重ねてくる。

キスをしながら腰に手を回し、ぎゅっと抱きしめると芽衣の腕が私の首に回った。


幸せだな〜、芽衣のお陰で頑張れそうだ。あと1週間、全力で頑張ろう!

そして、芽衣に褒められたい。芽衣が私と付き合ったことを後悔しないように成長するから見ててね。










指が軽やかに動き歌もちゃんと歌えている。あとは緊張さえしなければ大丈夫なはずだ。緊張さえしなければ…。

明日は部活を休み、軽音部と最終の音合わせする予定になっている。そして、明後日が本番で…胃が痛い。次いでにお腹も痛い。


しんどい、、肩が痛い、腰が痛い。明日は軽音部に芽衣が来る前にバラード曲の音合わせを主にやって、明後日も朝イチで音合わせする予定だ。

出番はお昼頃だけど、お昼前で良かった。絶対食欲ないし食べたら吐いてると思う。



「水希、ご飯だよー」


「はーい」


「あっ、そうだ。これ、頼まれたから」


「お姉ちゃん、何?」


「今日、帰り道で知らない子に渡されたの」


「知らない子?」


「うん、私と同じ制服を着ていたから同じ学校だと思う。水希と同じ1年生の子だよ」


「誰だろ…?」



お姉ちゃんに渡された袋を開けると、お菓子が入っていた。それも私の好きなチョコの手作りお菓子。もしかして、前に私の机の中に手紙を入れた子かな?

あれ以来、手紙はなかったけど…部活を見学しに来ているのかも。だけど、何でお姉ちゃんに渡したの?直接、私にくれたらいいのに。



「水希、浮気したら許さないからね」


「するはずないじゃん!顔も知らない子だよ」


「水希って、、不思議よね。可愛い子にばかりにモテて」


「何それ」


「芽衣ちゃんに、ひかるちゃんに…それにお菓子の子」



お姉ちゃんが私の顔をまじまじと見ながら「顔は普通だけど、笑った顔がいいのよね」って言い放つ。それって貶してるよね。私自身も分かってる、平凡な女子高生だって。


私にお菓子をくれた人はどんな子なんだろう。お菓子のプレゼントや応援してくれるのは嬉しいけど、私には芽衣がいる。

出来ればそっと応援してほしい。じゃないと、お姉ちゃんや恭子先輩が暴れだす。お菓子が美味しいけど気が重いよ。



「女子校って面倒くさいこと多いね」


「そうね…未だに私にも手紙がくるし」


「そうなの?」


「告白というより憧れてます的な感じだけどね」


「お姉ちゃんも大変だね」


「いい加減、恭子との噂なくなってほしい」


「ははは、それは面白いから続いて・・」


「はぁ!?」



恐っ…お姉ちゃんも大変なんだね。でも、お姉ちゃんは生徒会長で陸上部で顔もスタイルも良くスペックが高いし仕方ない気がする。

私は全てが平凡だから、、くそ…姉妹なのに差がありすぎだ。

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