第52話
「芽衣!」
「うぅ…溺れるかと思った」
「馬鹿だな、だから言ったのに」
どんなに浅瀬でもバランスを崩すと慌ててしまい人は溺れそうになる。私の予想通り溺れそうになり、海水を飲んでゴホゴホ言う芽衣を抱きしめ背中を撫でる。
一緒に浜辺まで歩き、落ち込んでいる芽衣を初めて叱った。初めて立場が逆転して、ちょっとだけ嬉しい。
「芽衣。浮き輪をレンタルしよう」
「大丈夫だもん…」
「危ないでしょ」
「水希がおんぶしてくれたらいいじゃん」
「おんぶ?別にいいけど…」
しまった、、水着でおんぶをすると背中にダイレクトにお胸の感触を感じる。それに芽衣の水着は布の量が少ないから、柔らかな感触にドキドキが止まらない。
近くで泳いでいるひかるとさわちんがジッとこっちを見るし、顔を赤くしてしまうと変な誤解を受けそうで私は必死に心を無にした。
「芽衣、やっぱり抱っこにしてもいい?」
「えっ…」
海で初めておんぶをし気づいたことがある。おんぶは基本前屈みになる。前屈みになる私の顔は海面に何度もつきそうで、波で海水が口に入って辛い。
それに、おんぶだと海の中ではバランスが不安定になり、力が上手く入らず簡単に波に押されるとは思わなかった。
「おんぶだとさ、口の中に海水が入って…」
「分かった…」
抱っこは恥ずかしいし、さわちんの視線が痛いし、ひかるとは目があったのに逸らされてしまった。
できれば、みんなで海を楽しみたいのに距離をとられる。お姉ちゃん達はなぜか手をパンと合わせ喜んでいる。2人の行動はいつも不思議だ。勝手にはしゃいでいる。
せっかく海に来たのに芽衣を抱っこしたままだと身動きが取れない。せめて浮き輪があればと思うけど芽衣が拒否をし、私を路頭に迷わせる。
それに、、芽衣との顔の距離が近くめちゃくちゃ緊張する。この距離感は簡単にキスできる距離で前に一度抱っこをした時、キスしようとしたことを思い出した。
深呼吸をしたいけど芽衣が近くにいるからできなくて、私はどうしたらいいのだろう。
何でお姉ちゃん達は近くに来ないの?さわちんは顔が怖いから!
みんなで海に来たから遊ぼうよ。何か話したいよ。芽衣も海が怖いのか黙り込んでいるし、この状況が辛すぎる。
「みんな。そろそろ、お昼にする〜?」
「する!お腹空いた」
お姉ちゃんの言葉にやっと緊張から解き放たれる。この時間がしんどかった。
海の中を歩くと芽衣がギュッと抱きついてくるから心臓が激しく暴れ痛みが出てきた。
芽衣の肌がお餅みたいにもちもちして、気持ちいい。男みたいな感想だけどその通りだ。
もし今、芽衣とお風呂に入れと言われても絶対に入れない。芽衣の肌の感触に意識し、芽衣の裸を意識してパニックになりそうだ。
前だったら大丈夫だった事がダメになってる。私は女なのに…なんでなの、、
「さぁ、何を頼む?水希が注文係ね」
「お姉ちゃん、勝手に決めないで!」
「水希、私はサラダがいい〜」
「恭子先輩、気持ち悪いです」
「こら!私は先輩だぞ!」
「あの…少しですけどお弁当を作ってきたので良かったら」
「ひかるの手作り弁当?食べたい!」
「水希、食い意地はりすぎ!」
大声を出したら、さわちんに怒られた。でも、お菓子作りが得意なひかるの手料理だよ。絶対に美味しいに決まっている。ほら、見た目から最高だ。
みんなの食べたい物を注文した後、私はやっとひかるの手作りお弁当にありつけた。唐揚げが美味しい!それに私の大好きな甘い卵焼きが入っている。
「ひかる、甘い卵焼き美味しいー」
「水希が好きって言ってたから」
「覚えててくれたの!?」
「うん」
海の家で食べる料理も美味しいけど、この日のために作った手作り料理も最高だ。
私が頼んだ焼きそばを食べつつ、お弁当をがっついていると最後に食べようとしていた甘い卵焼きをお姉ちゃんに取られてしまう。
前にも卵焼きを芽衣に取られ、今度はお姉ちゃんに取られ酷いよ。最後の一口を何で好きな物で締めさしてくれないの。
「あぁ…卵焼き。お姉ちゃんのバカー」
「ほら、私のたこ焼きあげる」
「食べるけど、卵焼きで締めたかったの!」
「水希、これあげるから我慢しなさい」
「恭子先輩!私は人参が嫌いなんです」
「うん、菜穂に聞いてるよ」
酷いよ、極悪非道の2人だよ。それに何で、海の家に人参サラダなんてあるの?私へのイジメにしか思えない。
この海の家はお洒落すぎる。海の家って少しボロいのが通常なのに、大きく白いカフェみたいな海の家で、焼きそばやたこ焼きなどの通常メニュー+お洒落な食べ物がある。
メニューを見た時、人参サラダなんて誰が頼むのって思ったけど、恭子先輩がいた。
「水希、これあげる」
「芽衣…このフライドポテト冷めてる」
「やっぱり、あげない!」
「嘘です、ごめんなさい!」
冷めても美味しいフライドポテト。マックより数倍の値段だけど普通に美味しい。できれば熱々で細く切ったタイプの方が好みだけど文句は言えない。
あと、お姉ちゃん頑張って!恭子先輩頑張って!周りにいる男達のムカつく目線を最強の睨みで蹴散らして欲しい。
さっきから、あの小さい子可愛いとかお姉ちゃん・恭子先輩・ひかるのことをジロジロ見てマジでウザい。
こっちは海を楽しみに来てるから、芽衣にナンパなんて絶対にさせない。お姉ちゃん達と海に来て良かった。最強の守護神の2人が芽衣やひかるを守ってくれている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます