第16話

ストレッチと筋トレを黙々とやり、せっかくお風呂に入ったのに少し汗をかいた。

友達の家に泊まりに来ているのに、筋トレって変だけど日課だし恭子先輩にやりなさいって言われてるから頑張らないと怒られる。



「水希、頑張ってるね」


「芽衣もやる?」


「筋肉ないからいい…」


「そうなの?あっ、本当だ!柔らかい〜」


「ちょっと、触りすぎ」


「ぷにぷに」



芽衣の腕は柔らかくてお餅のようにモチモチしている。私は腕立て伏せを毎日30回3セットやってるから硬く筋肉質だ。

毎日筋トレをして最近、女子力が減ってきている気がする。悩める乙女心が辛いよ。



「そろそろ勉強する?」


「そうだね」


「あっ、後片付けありがとう」


「芽衣に美味しい料理ご馳走になったから」


「飲み物入れるね」


「あっ、お菓子…はいいか」


「お菓子あるの?」



どうしよ…この前、貰ったお菓子を一緒に食べようって言ったら芽衣にダメだよって言われていたの忘れていた。

今日もこの前、お菓子をくれた子に貰った。手作りお菓子だから出来るなら、その日のうちに食べたいけど…きっと拒否されるよね。



「今日、お菓子を貰ったの…」


「この前の子?」


「うん」


「そっか…食べたら?」


「芽衣も一緒に…」


「私はいい」


「だよね」



芽衣は頑に拒む。私としては美味しいお菓子を共有したいのに出来なくて、芽衣が拒否する理由が分からなくて困惑する。



「飲み物は紅茶でいい?」


「うん」


「私はミルマロ飲もうかな」


「ミルマロ・・」


「何…?」


「いや、別に」



何か文句ある?って目で見られ、危うく余計なことをまた言いそうになった。

ミルマロは私にとって甘い牛乳でしかなく味を想像するだけで苦手で拒否感が強い。

でも、さっきから芽衣が美味しそうにミルマロを飲んでいる。香りは私好みの匂いだけど、甘い牛乳が受け付けない。


紅茶を飲みながら私は今日貰ったお菓子を食べる。手作りで美味しくて感心するよ。

芽衣もお菓子を一緒に食べて欲しい。私だけお菓子を食べるの気が引ける。

芽衣の家に来る途中、お菓子を買う予定がすっかり買い忘れていた。私の手許にあるのは貰ったお菓子だけだ。



「芽衣、期末試験終わったらクレープ食べに行こう」


「うん」


「あと、ジュース奢ってね」


「あっ、そうだった」


「忘れてたなー」



芽衣とジャレ合い、ふざけあってクッションを投げ合った。修学旅行に来ている気分になる。2人だけの枕投げ大会も楽しい。



「えいー」


「うわぁ、顔にモロに当たったー」


「水希、大丈夫!?」


「眼鏡に直撃したから鼻筋が痛いー」


「ごめん…」


「ふふ、とりゃー」


「きゃ!」



あっ、ヤバイ。投げたクッションが芽衣の頭に直撃した。慌てて近づくと芽衣が少し涙目になっている。痛かったのかな…強く投げすぎてしまった。



「芽衣、大丈夫?」


「えい!」


「うわぁ、体当たりはずるい!」


「へへ、仕返し」


「このー」



私達はずっとジャレあって勉強をするのを忘れていた。結局、疲れたから寝ようって話になり勉強は明日にして一緒にお布団に入る。

芽衣、ベッドから落ちないよね…芽衣を壁側にしたらよかったと反省する。



「芽衣、もっとこっちに来ないと落ちるよ」


「大丈夫だよ」


「ダメ、危ないからこっち来て」


「水希の心配性」


「ほら」



やっと安心して寝られる。芽衣を腕の中に入れ私は目を閉じた。芽衣の体は柔らかく、ぬいぐるみを抱いている様な感覚になる。

ふわふわして気持ちいい。安心効果で一気に眠気が来た。芽衣も目を瞑っているし、私はお休みと呟き心の中で「芽衣、ありがとう」と感謝を伝えた。芽衣の温もりが安心する。










夢なのかな…唇に何か触れた気がした。柔らかく、温もりがあり、いい香りがした。

触れた時間は短かったけど、幸せな気持ちになった。良い夢のお陰で心がポカポカする。


夢の中の私は大自然の中で寝っ転がっている。暖かい気候の中で大の字になり空を見上げ、綺麗な青空と風が気持ちいい。

そして、隣には芽衣がいてニコって笑いながら私を見つめる。



芽衣が可愛いよ。芽衣と出会って毎日が楽しい。生まれて初めての感情だ。



私はいつまで芽衣の隣に入れるのだろう。芽衣に彼氏が出来たら隣を取られてしまう。

チクり胸が痛くなり、嫌だなって…友達として最低な考えがよぎった。このまま、ずっと芽衣の横にいられたらいいのにって。



ねぇ、芽衣。我儘を言ってもいい?

もう少しだけ芽衣の隣を独占したい。

芽衣に彼氏が出来るまでいいから…。



私はどんな恋をするのだろう。チョコレートみたいな甘い恋?ブラックコーヒーみたいなほろ苦い恋?それともレモンスカッシュのような酸っぱい恋?

出来るならミルマロみたいな程よい甘さの恋がしたい。ミルマロを飲んだことないけど、芽衣曰く程よい甘さって言ってるし。


もう少し甘い恋にしたかったら、私の好きなチョコレートをかけて甘くしよう。

芽衣はいつも甘いミルクのような匂いがする。赤ちゃんみたいな匂い。守りたい…生まれて初めて人を守りたいと思ったよ。

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