第11話
「水希ー!」
練習通りに私にバトンが渡った。私の目の前を走っているのは、私のライバルでもある陸上部の1年生。
お姉ちゃん、ありがとう!2位でバトンを渡してくれて。流石に恭子先輩は抜けなかったけど、そんなに引き離されず2位という順位を守ってくれた。
「さぁ!アンカーにバトンが渡りました!現在の1位は陸上部!2位は生徒会となっています。アンカーはグラウンドを1周走ります!皆さん、応援しましょう」
私が抜く相手は見えている。半周だったら厳しいけど1周だったらいける!
今のところ、私の足は絶好調だ。1位の陸上部の選手との差をジリジリと詰めていく。あと少し、あと少しだ。もう少しで並べる。
「生徒会!!!!なんと、1位の陸上部に並びそうです!」
苦しい…息が苦しいよ。でも、ここで諦めちゃダメだ。やっとやっと並べたんだ、もうすぐゴールが見える。白いゴールテープに向かって必ず走りきる。
「接戦です!あと少しでゴールです!さぁ、どちらが勝つのでしょうか!!!」
「水希ー!頑張って!!!」
あっ、芽衣が必死に声を出して応援してくれている。私はラッキーだ。ゴール位置が、私のクラスの近くで芽衣を目で捕らえられた。
力が漲ってくる。絶対、芽衣に勝ったよ!って大声で言うんだ。
「ゴーーーーーーーール!!!!!!」
終わった…最後まで走りきった。やばっ、体力の限界だ。まだ、このあと生徒会としてやることがあるのに疲れて動けそうにない。
私はフラフラしながら歩き、生徒会のメンバーに頭を撫でられグラウンドを退場する。
「水希…」
「芽衣…勝ったよー!」
「おめでとう…」
「泣くなよー、芽衣の笑った顔が見たいのに」
「ごめん…涙が止まらない」
勝てた…勝てたよ。はぁ、、疲れた。でも、最高の疲れだ。クラスメイトも私を応援してくれたみたいで、私を囲んで喜んでくれた。
芽衣は相変わらず泣いていて、涙を拭いてあげたいけど私はハンカチを持っていない。
「えっ…」
「私の体操着で涙を拭いていいよ」
芽衣を抱きしめるように体を引き寄せた。クラスメイトに泣き顔を見られるの恥ずかしいかなって…芽衣がここまで泣くとは思わなかったし。ふふ、私としては嬉しいけどね。
「カッコ良かったよ」
「本当?やった」
「ムカつくぐらいカッコいい…」
「ジュース1本にするよ。もう1本は芽衣用にして一緒に飲もう」
「うん…」
まだ体育祭は続くのにやりきった感が凄く、めちゃくちゃ疲れた。体育祭が終わっても後片付けがあるし、先は長いけど終わったら芽衣とジュースを買いに行きたい。
2人でジュースを飲みながら終わったねーって笑いあえたらいいな。
「芽衣、そろそろ行かないと」
「うん…」
「今日、帰るの遅くなるけど…待っててくれる?」
「待つ…何時間でも待つ」
「じゃ、靴箱じゃなくて教室で待っててね。靴箱じゃ立ちっぱなしでキツいから」
「うん」
よし、やる気が出てきた。これで後半の体育祭を頑張れる。泣き止んだ芽衣の頭を撫で、私は生徒会の仕事に戻った。
途中で会った、陸上部の顧問の先生や恭子先輩に褒められたりして頑張って良かったとしみじみ思う。
空が綺麗だな。最初はイヤイヤだったけどまぐれで受かったこの学校に来れて良かった。芽衣に出会えて良かった。陸上部に入って良かった。生徒会に…渋々入って良かった。
私のクラスは青組で順位は今2位につけている。お姉ちゃんのクラスは現在1位の赤組で、ライバルだけどあんまり順位を気にしてないみたい。
生徒会はやることが多いのもあるけど、一番のメイン競技だった部活対抗リレーが終わったのもある。お姉ちゃんはこの競技に一番力を入れていた。
生徒会のアピールにもなるし、一番の大勝負が終わって後は裏方に徹するのだろう。でもさ、せっかくなら勝ちたい。
みんなで喜び合いたいし、初めての体育祭でもあるから最後まで頑張りたい。頑張れ、青組!負けるな、青組!
「皆さん、お疲れさまです。そして、青組!優勝おめでとうございます!」
勝ったよー!最後のブロック対抗リレーで青組が1位を取った。そして点数は逆転!やっぱり、勝つって嬉しい。
生徒会長であるお姉ちゃんは勝ち負けより無事に終わってホッとしている。
生徒会長だから責任やプレッシャーがあったと思うし、良い体育祭になって良かった。
「えー、皆さんお疲れ様でした。生徒会として初めての行事を無事に終えホッとしています」
体育祭の大きい片付けは明後日して、今日は小物の整理などの片付けで終わるから早く帰れそうだ。
みんな一度制服に着替え、生徒会室に集まり最後の話し合いをしている。みんな笑顔で、緊張から解き放たれた感じでリラックスをしてお茶で乾杯をした。
「水希、部活対抗リレーお疲れさま!よくやった」
「へへ、佐藤先輩ありがとうございます」
「最後、凄かったよー。頑張ったね、水希ちゃん」
「はい(早川先輩、綺麗〜)」
生徒会の仕事は大変なことが多いけど達成感がある。お姉ちゃんは大学の受験に有利って言ってたけど本当はやりがいを感じて生徒会長をやろうと決めたんだと思う。庶務の私でさえ、やりがいを感じているからだ。
お姉ちゃんなりに平凡な毎日だった私に違う世界を見せたかったのかもしれない。だったら感謝をしないと。今は生徒会に入って良かったと思えるから。
さぁ、帰ろう。教室では芽衣が待っててくれてるし明日は休みだ!
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