第309話 来られたようです
メールで昼ご飯にも間に合うと俊哉には伝えていたこともあり、旅館に戻った高耶を俊哉達が待ち構えていた。
チェックインは朝からこの日の夕方までというのが第一陣。よって、昼食は用意されない。
朝には到着していた高耶達は、ここに併設されているレストランで食事をするか外に出ることになる。
俊哉、彰彦、満、嶺の他に時島も待っていた。時島にも俊哉が事情を話していたのか、お疲れと手を挙げてくれた。
「お待たせ」
「おうっ。じゃあ行くか。無難に和食になったぜ。美味い蕎麦屋があるんだってよ」
「そうか。ん?」
そこで、一人の青年が奥から駆けてきた。そして、俊哉を見つけてこちらに駆けてくる。
「あっ。俊哉っ。俺もっ。俺も行くっ」
「武雄。お前、ここの手伝いいいのか?」
「ああ。俺もちゃんと同窓会して来いって、ばあちゃんに言われてさっ」
彼は
俊哉とは二度ほど同じクラスになったこともあり、たまに連絡も取り合っていたらしい。
「時島先生。お久しぶりです。夫馬武雄です」
「おお。元気そうだな。今回はこんな大掛かりなことになって、迷惑じゃなかったか?」
「いいえっ。ばあちゃんもじいちゃんも、若返ったように生き生きしてますよ。もう閉めるって決断はしましたけど、多分、まだ納得はしてないみたいで……だから、今すげえ楽しそうです!」
「そうか。またゆっくり挨拶させてくれ」
「はい!」
ハキハキとした元気な青年だ。
「じゃあ、武雄。案内してくれよ。『水里』って蕎麦屋」
「おっけー。あっ、高耶? も久しぶり」
「ああ……」
「なんで疑問系?」
俊哉がすかさずツッコむ。
「だって……高耶こんなカッコよくなってるし……いや、昔からの面影はちゃんとあるけど……あの頃は、なんか話かけづらい感じもあったからさあ」
歩いて五分ほどだと言う蕎麦屋に向かいながら、話を続ける。
「あ〜、それあるわ」
「「うんうん」」
「……」
満や嶺も、ものすごく同意すると頷いていた。
「まあ、高耶は御当主様だしなっ。それは仕方ないっ」
俊哉の言葉に、今度は時島が頷く。
「そうだな。私より年上の者達も、頭を下げているしな。立場としては上の方なのだろう?」
「まあ……そうですね。一応、九人いる代表の一人なので」
「それは、小学校の頃からか?」
「さすがに義務教育の内からというのはということで、高校からですね。まだ新米です」
「それでも、すごいことだ」
満や嶺、武雄の三人は、これを静かに聞いている。色々と聞きたいことや疑問はあるが、俊哉と時島が当たり前のように話しているので、どう切り込めば良いのか迷っているのだ。
ちなみに、彰彦はなるほどと納得の流れ。彼の察する能力は特別高い。
「そんで? あの団子屋の人たちどうなったん?」
「瑶迦さんの所で保護してもらうことになった。あの店員の女性達はあそこに残るが、他の隠れ里の住民は全員移動させた」
「そっか。ならまあ安心だよな。姫様んとこで住まわせんの?」
「その方向だな。外への警戒心は強いが、あそこなら、瑶迦さんの許可がないと入れないから」
新たな隠れ里とするには最適だろう。世界でも有名な、魔女が守ってくれるのだから。
「母さんや優希にも頼んでおいた。ゆっくり里の人以外とも交流を持ってもらって、閉じ籠る必要がないって教えていくつもりだ」
「なるほどな〜」
「一応、六時頃に、団子屋に残った人達も今日はあちらに送ることになってるから、ちょい出てくるが、すぐに戻る」
「ならよし!」
夕食もきちんと一緒に出来ると分かり、俊哉は満足げだった。
蕎麦屋に着いた。
「ここが水里だよ」
店に入ると、そこで高耶と武雄が同じ人物を見て声を上げる。
「え?」
「あっ」
「「ん?」」
高耶と武雄は、二人で知り合いかと顔を見合わせる。
「おや。見つかってしまいましたね」
そこで蕎麦を食べていたのは、伊調だったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます