第213話 紹介しましたが
高耶一人で戻ろうと思ったのだが、お狐様の儀式を行なっている場所を中心に土地神が安全地帯を作ってくれるはずだと思い出し、勇一達の班と清掃部隊の上役の居る班に声をかける。
各班のリーダーが腕に巻いた番号の付いた腕章を見れば、今回の作戦の概要を知る高耶には、どこの場所が担当かも分かった。
「あの。これから行く場所から、それぞれの担当場所までの間の安全確認を頼みたいのですが……」
儀式をやることは前提としてあったため、儀式場の周りの怨霊は掃討し、弱いが結界で囲んである。だが、今回想定外の存在が出てきているため、結界の効力も想定より下がっている可能性が高かった。
これに、清掃部隊の上役達、第十二班は目を輝かせる。
「ご、御当主が頼みをっ……っ、お任せ下さい!!」
「綺麗に! 綺麗に掃除してみせます!!」
「あ~……お願いします」
「「はい!!」」
他のメンバーもなんだか嬉しそうにフルフルと打ち震えているので、賛同してくれるだろう。
一方の勇一達の班では、顔を見合わせて頷く。リーダーは橘の者らしい。
「承知しました。結界の補強もした方が良いでしょうか」
「できたらお願いします。まだこの後のこともあるので、夜まで体力が保つように無理はせずに」
「っ、わ、分かりました」
なんだか照れられたが、問題はないだろう。
そうして、ようやく再合流した儀式場では、お狐様の解放が行われる所だった。
《クーーーン!!》
高い不思議な響きの声が空高く飛んでいく。それが完了の合図だった。
儀式場の前に居た狐と瀬良智世が運んで来たはずの御神体が、ゆっくりとその姿を消して行く。
「あ……っ」
「消えて……く?」
智世と誠が呆然とその様子を見つめていた。
すると、今度は土地神がどこからともなく降り立つ。
《先に伝えた通り、この辺りを神域にするわ。今回の事が終わるまで、あなた達が入ることを許すから。避難場所に使ってちょうだい》
「ありがとうございます」
この一瞬後、儀式のために用意した範囲全てが神域となった。
神域の外で見事に逃げて行く気配が感じられた。
《ふふふっ》
「逃げていますね……」
《ええ。けれど残念だわ……あれらを消滅させるだけの力はないのよ……頼めるかしら》
「もちろんです」
若いとはいえ神が、人に助力を求めること。それはとても珍しいことだ。力が足りないと伝えることも珍しい。
それだけ高耶を信用したということだ。
ならば応えなくてはならない。
「では、私の式にご挨拶させてください」
《いいでしょう》
「ありがとうございます。少し特殊なものがおりますので」
《特殊? 風と火、土、水は特殊ではないでしょう?》
クスクスと笑う土地神。それらはこの山で現在、術者達が召喚している式なのだろう。それならば、楽しんでくれそうだ。
「【果泉】」
《は~い》
《っ、はっ》
《わたし、果泉! よろしくおねがいします!》
《むむ……こ、これは……なんて可愛いっ》
《かわいい? 果泉カワイイ?》
《かわゆいわっ》
《わ~い♪》
木々の多い山だ。樹精である果泉は、何よりも可愛らしく映ったようだ。
「果泉。木が傷付くことがあれば頼むな」
《うんっ、任せて!》
「あとは……【瑠璃】」
次に喚んだのは天使の瑠璃だ。
《お呼びで》
《っ……》
「天使の瑠璃です。瑠璃、ここの土地神様だ。挨拶を」
瑠璃は片足を一歩引いて挨拶をする。
《瑠璃と申します……責任を持って、この場を侵さんとする者を排除させていただきます》
《う、うむ、よろしく……っ》
瑠璃の目がキラリと光った。何が居るのか分かったらしい。
《では、排除行動に移ります。行って参ります!》
「あっ」
瑠璃がやる気満々で槍を出現させて飛んで行ってしまった。
「あ……」
《お姉ちゃん、いっちゃったね~》
「ああ……」
《ねえ、ルリお姉ちゃんって、セントウキョウ? ってほんとう? セントウキョウってなに?》
「うん……」
どう説明しようかなと、高耶は思わずキラキラする目で見上げてくる果泉から目をそらした。
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