狼の甘い誘惑も鈍感な姫には通じません。
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結局、私は体育祭のポスターや看板作りを手伝うことになった。
室内で作業することが苦手な百合野は、そのまま帰宅する。
生徒会室には執行部とボランティアが集まり、ポスターの構図を考えていた。
「みんな、新しいボランティアを連れて来たよ」
「こんにちは、一年A組の南です。宜しくお願いします」
執行部の生徒とボランティアの生徒の視線が、一斉に私に向く。
「一橋がボランティアを連れてくるなんて。初めてだな」
生徒会長が驚きの声を上げた。
「南は出身中学の後輩なんだ。南は中学の時に美術部だったし、コンクールで受賞したこともある。絵のセンスも光ってる」
「まじで? それは心強いな」
「一橋は次期生徒会長候補だから。君も次の生徒会に立候補しなよ」
「わ、私はいいです。生徒会なんて大役は不向きだし。人前に出るのは苦手だから、裏方が性に合ってるの」
「生徒会なんて裏方だよ。なぁ、一橋」
「そうだよ、こうして学校の行事がある度に、放課後残って準備するんだから」
いやいや、生徒会は花形だ。
優等生のイメージしかない。
「体育祭だから、イキイキした躍動感出したいんだよね。南さん何かいい案ない?」
「躍動感ですか? 明るい色がいいですね。太陽のイメージかな。太陽をバックにして、走っているシルエットを描くとか……」
「太陽のイメージか……。それいいね」
生徒会長や一橋先輩におだてられ、私はポスターのデザインを担当することになった。
みんなの意見を聞きながら、頭でイメージを膨らませる。
「一日だけ待って下さい。明日デッサンを持って来ます」
「うん、頼むよ」
一時間ほど生徒会室でポスターの打ち合わせをして、一橋先輩と一緒に下校する。
「南、助かったよ。いいデザインが浮かばなくて困ってたんだ」
「一橋先輩は美術部ですよね。私なんかより一橋先輩の方がきっと素敵なデザインが描けるのでは?」
「図案の違う物をいくつか制作するつもりだから。体育祭のプログラムの表紙にも使いたいんだ」
「プログラムの表紙ですか!? ハードル高いですね。私に描けるかな……」
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