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【礼奈side】
創ちゃんにキスされた首筋。浴室の鏡に映すと赤く浮かびあがっている。
「吸血鬼みたい」
恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。
創ちゃんと私だけの秘密。
私と創ちゃんは中学の時から付き合っているけど、キスもまだ未経験。お兄ちゃんの監視が厳しくて、創ちゃんは文句を言いながらも忠実に約束を守ってくれている。
高校生になった私。創ちゃんの恋人に早くなりたいけど、このままでいい気もする。
中学生の頃は創ちゃんに女性として見て欲しくて、あの手この手で迫ってみたけど。今はそんなに急いで大人にならなくてもいいと思えるようになった。
今でも創ちゃんの愛情を十分感じとることができるし、もしも一線を越えてしまったら、心と体のバランスが崩れてしまいそうな気がするから。
でも年下であることの不安は拭えない。
創ちゃんは女子大生と付き合った方が私といるよりも気楽で、お兄ちゃんにガミガミ言われなくてすむんじゃないかって……たまにそんなことも考えてしまう。
創ちゃんに嫌われてしまったら、もうこの世の終わりだ。生きている意味がない。
ブクブクと湯船に沈み、鯨みたいに「プハァー」と、浮上する。
浴室から出て、濡れた髪をドライヤーで乾かした。
高校生になり身に付ける制服は変わったけど、内面は中学生の時と何も変わらない。
子供っぽい私。
大人に見えない私。
◇◇
翌日、登校すると百合野が私の首筋に視線を向け、目を丸くした。
「わぁお、お子ちゃまの礼奈もなかなかやるじゃん」
「えっ? これは虫刺されだよ。昨日、公園を散歩したから、手も足も痒くて……」
「虫刺され? なーんだ、キスマークかと思った。お子ちゃまの礼奈に限って、そんなわけないよね」
お子ちゃま、お子ちゃまって、連呼しないでよ。気にしてるんだから。
「やだな、百合野。そんなわけない。だって私はキスも未経験なんだよ」
「そうなんだ。礼奈の彼氏って大学生だよね。しかも、交際して長いのにキスもしないなんて、あり得なくない?」
百合野の言葉に、内心ドキッとする。
「おはよう、南。随分楽しそうだね。山本と何を話してるの?」
「桐生君、おはよう。礼奈に彼氏がいるの知ってた?」
桐生君は私に視線を向け、百合野の言葉にニッコリ微笑んだ。
「知ってるよ。イケメンの大学生だよね」
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