第61話
「ラピスそろそろ抱きしめるのをやめてくれ。」
視界がブラックアウトしたのはラピスが俺の後頭部にヘッドロックを決めていたからであった。今もラピスの幼い胸に顔を押し付けられている。柔らかさがあって中々良いのだが流石にこのままでは首が痛くなりそうだった。
「ダメ、連れてかないって行くまで離さない。」
「どうしてダメなんだ。」
「新婚旅行邪魔されたくない。」
その理由は最もだ。
「邪魔はしないと思うぞ。」
「ダメ、この人、心読めない。」
あー、確かに神っていうか四次元の人だから幾らでも防御可能だわな。
「大丈夫だってその辺の良識はあるよなアルティマさん。」
「流石に夫婦の営みなどの邪魔はしませんし、今回外交も少なからず兼ねるそうなのでその辺りでアピールをしようかと思う所存です。」
「ほらこう言っているしさ。」
「ダメ、信用ならない。」
「どうしてそんな頑なに拒むんだ?」
「アレンが鼻の下伸ばしたから。」
「グフォ!」
今一瞬鈍器で腹を殴られたような衝撃が走った。
確かに鼻の下を伸ばしていただけに否定はできないぜ。
「ラピス、その辺してあげなさい。女性は誰にでも平等な権利が必要ですよ。純愛なのは良いことですが嫉妬は醜いですよ。嫉妬をするなら自分を磨いてアレンに振り向いてもらいなさい。」
おお、救世主(ミーシェル)が現れた。
「むむむ、盗られない自信がない。」
「なら自信が持てるようにお稽古を致しましょう。」
「嫌、やりたくない。」
「じゃあ盗られてしまっても良いのですね。私が独占致しますよ。」
「それも嫌。」
「ラピス、どちらを取るか決めなさい。」
「なんで?」
「束縛する女は男が離れるからですよ。」
「アレンは抵抗してない。」
「抵抗していいならするけど。じゃあするぞ。」
というわけで俺は必死の抵抗をすることにした。
「え?……あひゃひゃひゃひゃひゃやめてひゃひゃひゃやめてったらあひゃひゃひゃひゃ。」
なんとも不気味な笑いだ。元から滑舌も悪い方だったが多分喋ることをサボり過ぎたせいで呂律が回らないくらいに舌ベラの筋肉が衰えていたのだろう。
「わかった離すから離すからやめて。」
ラピスはすんなり俺を離した。
「もうこんなことしちゃダメだからな。」
と今度は俺が抱きしめて撫でてやる。
「うん。お稽古するからまたナデナデして。」
「ああ、いいとも。そういうわけだからアルティマ同行は許すけど夫婦間のやり取りに仕事以外のことは持ち込むなよ。」
「はい、わかりました。」
(ありがとうございます。これで悪魔の調査ができます。)
このようにして隣国への行く準備をしていき時が過ぎて行った。
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