◆第4回ネット小説大賞を受賞した、ある書籍化作家のエッセイ◆

作者 名もなき多肉

自尊心を捨てずに生きるとは

  • ★★★ Excellent!!!

自尊心とはなんだろう?
人のレビューに自分語りで申し訳ないが、私は彼の文を読んで我が身を振り返った。

自分は音楽関係の仕事をしていたのだが(今はやめている)音楽の世界と小説の世界は似ている思う事が多々ある。
この独白にも、旧帝という全てを持った天才が出てくるが、音楽の世界でも、実際演奏だけで食べていける選ばれた人間なんて一握り
それでも皆その魅力に取り憑かれ、その道のプロになる事を望み、多くの人間がどこかで諦め、折り合いをつけてそれぞれの人生を歩んでいく。

音大受験の1年半前、とある教授にこの子はダメだと言われた事を、今でこそネタのように話せるようになったが
当時は、それこそ毎日何時間も練習してレッスンにのぞみこれを言われたわけで
その言葉は紛れもない事実だったとはいえ、やはり相当ショックだった。

そこで私が自分の傷を軽くするためにした事が、自尊心を捨てることだったのだ。
最初からそこ目指してないですよ、上の人達は凄いなあ!と傍観者として下から見上げていれば、全く傷つかずに日々を過ごしていられる。

思えば私は、一生懸命必死にやってダメだった経験をもうしたくないがために
音大に入ってからも、バイトが、お金が、周りほどピアノが好きじゃないなどと言い訳して
自尊心を捨てたふりをしながら、自尊心を保っていただけだったのかもしれない。

この小説を書いている彼は、私から見たら、一度書籍化した経験があるだけでも凄いのだが
自分が小説を書いてきた事にプライド、自尊心を持ち続けている。

それでいて、自分が今何者でもない事と真っ向から向き合い文章にしている。
プライドを守るために嘘をついた事も、成功者への妬みも、全て赤裸々に描き
目を背けていたかった、自分自身の心の奥底にある狡さ、醜さ、弱さ、自尊心を揺さぶってくる。

正直私は文学に造詣が深いわけでは全くないのだが、三島由紀夫さんの仮面の告白を読んだ時なみの衝撃を受けた。

ただ、最後の話しはとても心配になる。
どうか人を殺さず、自殺もせず、生きてほしいと切に願う。

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