刺激的な話でした。
端からトリガーが引かれているような状態で、最初から詰んでいるといいますか、落ちるのも時間の問題。題名通り、ゆるやかにまたは急速に落ちる様子を見る話になっています。
物理的なぶつかり合い(バトル)などは、すっきりカラッと終わることが多いのですが、こういう場合は暗くなりますよねと感じた次第です。
生々しいとも言うべきか。現代が舞台であることが、それを強調しているような気がしました。
牽引力のある話の展開でした。いい意味でストーリーという感じがせず、各登場人物が自分の意思で動き、結果ストーリーが動くといった感じです。
四角関係ということもあり、ドロドロとしています。人間関係が地雷と火種しかない。
登場人物はそれぞれ悪いところがあります。完璧な人間というのは存在しません。だけど、心理描写がしっかりとしているからでしょうか。人の心があるように感じて、それが嫌な奴では終わらない魅力を与えているのだと思います。
歪んでいた関係が色々なことを通して、まっすぐになるという構成は、ある種皮肉ですね。
あと、サブタイトルに見知ったフレーズがあって、少しドキッとしたり。
ストーリー展開にセンスを感じます。さりげない対比も秀逸でした。これからに期待したいです。、
好みの作品を探して、スクロールし続けて、辿り着いた作品でした。
彼らは自分を守る為に何を失って、何処へ堕ちて行くのか。若者らしい葛藤と悩みに真剣に向き合える作品は、そう多くはありません。誰しも持ち合わせているものではありますが、自然と目を逸らしてしまいますからね。
自分の青春時代と照らし合わせて読めば、きっと同じ様な脱楽感を味わえるでしょう。
若いとは、それだけで危うさを持ち合わせているものです。そしてその危うさは時に狂気に変わるけれど、いずれは削ぎ落とされて、私達は大人になっていきます。
それが良い事なのか、悪い事なのか。勿体無さのようなものを感じてしまいますが、それが青春の本懐なのでしょう。
つまり何が言いたいのかと言うと、久しぶりに延々と感慨深くなれる作品でした。このレビューに目を通してくれた方。
何を言ってるのか分からないとは思いますが、とりあえず暇なら、その時間があるなら、この秀作に目を通してみて下さい。
きっと、あの頃に戻れますから。
あらすじを読んだだけで、吸い込まれた。
僕も、アマチュアではあるが、作家の1人だ。そして、自分の文章に自信がある。しかし、この作品に出会った時、筆を折ろうかと思った。これが才能か……悔しい。悔しくて嫌いになりそうなのに、ページを捲る手が止まらない。
この作品は麻薬である。
ネタバレにならないように、内容に触れると、4人の私立高校に通う登場人物の群像劇なのだが、ホラー小説の様に狂ってて、少女漫画の様に甘ったるい。
それぞれの登場人物の気持ちに、感情移入しながら、吐きそうなくらいに嫌悪感を覚える。
読み終えた後にあるのは、ソーダの様に爽やかな読了感と、汚水を啜ったかの様な、胸焼け。
中途半端な気持ちで、読み始めると、時間と精神を奪われる。
もう一度言う。
この作品は麻薬である。
この小説は書き手にとって「試練」だ。
まともな小説が書ける人ほど、この小説を読んだが最後、「書くのを辞めたくなる」かもしれない。
それほどまでにこの作品はすごい。
このまま感想を終えると、完全敗北っぽくなって腹立つので、ネタバレにならない程度に当作品の概要と凄さを語ってみる。
「大森靖子」や「神聖かまってちゃん」「相対性理論」等々、この言い方が正しいかは分からないが、いわゆるサブカル系のバンドの曲名が、章の題名にサンプリングされている。(ちなみに大体の曲を私は知ってたし、大体の曲が大好きな曲だった)
これらは単なる引用ではない。作品の各章の内容に抜群にマッチしている。単に曲のテーマをなぞっているのではなく、曲の持つイメージの広がりと文章が響き合ってる。まさしくアナログシンコペーション。
各章で視点が次々と入れ替わっていく形式をとっている。そして重要なのが、「誰もまともではない」ということだ。読みながら、私は語り部全員に肩入れしながら、全員を嫌悪するという、ある意味とんでもなくリアルな人間関係を疑似体験することになった。まさしくREALITY MAGIC。
ほかにも既存の表現に収まらない心理描写、「タイトルだけでどんな話か分かる」今のトレンドとバッチバチの喧嘩を挑む先の読めない展開、複雑なはずなのに読みやすいという読者への配慮!もはやPOSITIVE STRESS!
……私のサムいサンプリングはともかく、この小説はどこをどう切り取っても、すさまじい。
こんなものを高校時代に書き上げたと聞いて呆れかえった。
おそらくそのうち彼女の名前が書いてある小説が書店にて平積みされる日が来るだろう。その光景を目にするまで、自身の自尊心を保てるぐらいには自分の筆力を高めておきたいと強く誓った。
グダグダと書いてきたが、言いたいことは一つだけだ。
間違いなく名作だ。覚悟して読んで欲しい。