お留守番のひと時2

 ジルさんは手際よく卵を炒めてベーコンを焼き、野菜を切る。それをパンに挟んでサンドイッチを作った。イケメンが作るサンドイッチ。それだけでもう美味しそうだ。

 その様子を眺めながら私は紅茶を淹れた。お嬢様にお出しするときとはまた違った緊張感がある。


「あの、どうぞ」

「ありがとうございます」


 サンドイッチと紅茶を挟んで向き合って座る。ジルさんがティーカップに口をつける様子を盗み見ていると、にこりと微笑まれた。


「美味しいです。リーフに聞いていた通りですね」

「ほんとですか! よかったです」


 ほっと胸を撫でおろした。緊張が抜けてふわふわした気分になる。


「昔はお茶を淹れるのすごく下手だったんですよ。お嬢様も眉をしかめるくらいで。でも毎日頑張って、なんとか――。ジルさんは料理もお上手なんですね、サンドイッチ美味しいです」


 特別な行程はなにもなかったはずなのに、サンドイッチは美味しかった。イケメンパワーかもしれない。


「俺も昔は料理なんてできませんでしたよ。それ以外もなにもできなくて。あなたと一緒で、毎日必死でした」

「そうなんですか? ジルさんは昔からなんでもできていそうなイメージがあります」

「そんなことありませんよ。俺は、もともと捨て子でしたから。使用人になりたてのときなんて、本当になにもできないただの汚い子どもでした」

「え?」


 捨て子? ジルさんが?

 目を見開く私をみてジルさんが穏やかな笑みを浮かべた。

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