第82話 はじめての夜会
ライラ様の体調が戻り出した頃、宮廷からダンスパーティーの招待状が届いた。毎年この時期に行われる貴族間交流のための一大イベントだ。パーティーの開始は日暮れから。
ライラ様は辺りがすっかり暗くなってから、華やかなドレスに包まれてバルド家を出発した。胸の部分は細かい刺繍が施された白い布地、腰は桃色のリボンで絞られて、スカートはチュール素材でふわふわと揺れる。
ライラ様の支度を手伝ったメイドたちはその出来栄えに全員満足そうだ。
馬車にはライラ様、ジル、私の三人で乗り込む。
「体調はいかがですか」
「問題ないわ。今日は気分がいいの」
「それは何よりです。ですが、あまりご無理はなさらないでくださいね」
レイチェルお嬢様はすでに宮廷についているはずだ。ライラ様は体調を考慮して遅れて参加することに決めたため、二人の出発の時間はずれていた。馭者の親父さんは宮廷と屋敷を行ったり来たりで忙しそうだ。
宮廷につくと、楽器の音色が聴こえてくる。すでにパーティーは始まっているようで、賑やかなざわめきが聞こえてくる。
「さすが、王宮のパーティーですね。貴族の屋敷で行われるものとは規模が違う」
パーティー会場を見渡して圧倒された。
「リーフは宮廷のパーティーに来るのははじめてだったかしら。せっかくなのだし、リーフも楽しんでね」
ライラ様は口元に手をあてて笑った。
ずっとレイチェルお嬢様が社交界に顔を出さなかったため、私も夜会には縁がない生活を送ってきた。きょろきょろと辺りを見渡してしまいそうになるのをぐっと抑える。
そのとき、ちょうど曲が終わったようで一度静けさがおりてから、次の曲の演奏が始まった。ゆるやかなメロディーライン。すると、会場にざわめきが広がった。
「何かしら――」
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