猫耳の少女

「や~……きみたちも、学生さんなんでないかい? だいじょうぶかい?」

 室内の一角のソファを勧めながら、気のよさそうな牛顔の村長は、すっかり心配げな様子だ。彼が真向いに座ると、今度は、地球人の女性がやってきて、テーブルに、茶の入った湯吞み茶わんを各自に置いた後、村長の横に着席したりするではないか。そして素朴ながらも整った顔立ちは、村長に負けずとも劣らぬ、人の良さ気な雰囲気のままに、モモとクーを眺めては心配げにし、

「……あら、やだ。うちの娘とそんな変わらないじゃない……」

 などと呟くのである。

「なぁ~。今日日、ハンターさんもおなごもいて当然だ~とは思うけどよ~」

 牛顔の村長は、眼鏡の位置を直しながら、後に続く。


「……あの~。それって、どういう?」

 制服姿であるとはいえ、一応、一介のハンターらしく、腰には帯刀ベルトをはめてやってきたモモが訪ねると、

「あれま~。おめーさんたち、クエストの内容は見たのかい~? 相手はヤクザだぞ~」

「…………っ」

「…………っ」

 村長に問い返され、若さゆえ、ライセンス取得のことばかりに先走り、安易に受注してしまった乙女二人は、思わず表情を変えると、察した牛の顔は、半ば呆れ顔となりながらも、

「そだな……まずは、おらたちの星の歴史を少しばかり知ってもらおうかな~」

 などと、呟き、語り始めるのであった。丁度、ラジオからは「I shall be released」が流れていた。


 べコべコ星は、かつてこそ入植してきた地球人に原住民は虐げられ、時に、それが乳製品として人類の嗜好にぴったりと解れば、なんと、その女子は、無理矢理に、泣く泣く乳も搾られ、地球人の食卓に並ぶような屈辱の時代すらもあったのだが、太陽系連邦の独裁統治が終焉を迎えた後は、元来、穏やかな性格でもあるべコべコ人の気質もあってか、入植者との間には大きな争いが起こる事もなく、結果、平和な共存の時代を互いに選択したのだという。


 共存共栄となれば、それは、一目あったその日から恋の花咲く時もある。太陽系連邦の時代こそ、異星間交遊は、タブーとされ、その間に生まれた子供など、闇っ子として生きるほかなかったりしたものだが、全ては自由となったのだ。少なくともベコべコ星では、種をこえた恋路に走り、添い遂げようとする者も少なくなかった。ただ、べコべコ人と地球人の間では、愛の結晶が生まれることが困難であった。それ故、一時は、ベコベコ星出身の者なら誰もが知る、悲恋を題材にした映画やドラマ、文学などのヒット作も生まれたそうだが、やがて、それも、養子をとるという形が確立し、幾世代かが過ぎていった。「医療」という名の、高い技術の手もありそうなものだが、先住民族であるベコベコ人と共に、入植者であり、その末裔でもある地球人たちの誰しもが、自然妊娠を望んだのは、未来都市の中を宇宙船が行き交うのが当然の銀河系連合加盟地域内で、誰もがラベンダーがそよぐ中のログハウスに住み、暖を取るために庭で薪を割るような暮らしをもずっと続けてきたという、彼らの牧歌的な風土と何か関係があるのかもしれない。


(…………っ!)

 つい、この間までただの女子高生に過ぎなかったモモは、太陽系内でも、一際に地球人の数の方が多い地球に生まれ育ったこともあり、異星間交遊の知らなかった側面に、とりあえず驚くのであった。そういえば、海外などでは、活躍している宇宙人とのハーフタレントなどの話は聞くが、少なくとも、日本、クマソにいた頃、周囲にそういった者が全く目に入ってこなかったのは、たまたまの偶然なのだろうか。

(……確か、水星って多かったんじゃなかったっけ……?)

 モモは、オジーとマミーと、お茶の間で団欒をしていた頃、畳に広げた端末で見ていたファッション雑誌からたまたま目を離し、眺めたテレビ画面では、いたるところ目玉だらけの水星の国連事務総長が、「私の八分の一の血は、地球人であり……云々」と語りながら、なにやら、水星の国々の窮状を訴えていた気がするが、それも、まるで、遠い外国の出来事に思えたものである。


 ただ、ふと、クラスメートだった異形と美女のカップルを思いだせば、今は亡き親友づてに聞いた「出産宣言」といい、行為中を目撃してしまった時のパートナーへの眼差しといい、とりわけモモは、その美女の方の、覚悟や、なにやら心意気の深さのようなものまでも、今更、解った気がすれば、

(……立ち止まってなんてらんないわっ!)

「……ちゃんとお仕事の内容まで見ていなかったのは、ごめんなさいっ! けど、わたしたち、立派なハンターですっ!……まだ仮免だケド……けど、けどっ! しっかりお仕事する気で、ここに来ましたっ! もう一度、内容、教えていただけますかっ?!」

 などと心の衝動と共に、次の瞬間に固い決意は言葉となり、強い眼差しをもって、村長をまっすぐ見つめたのであった。


 村長は、隣に座る地球人の女性と顔を見合わすようにしたが、

「ん~……まぁ、お嬢ちゃんがそこまでいうならな~」

 と、一枚の写真を、乙女二人に差し出した。黒髪と赤髪が共に覗き込んでみると、そこには、ウールのセーター越しでも、流石のモモやクーも叶わない程に遥かに爆乳なのがわかる美少女が、微笑みかけている写真であった。ただ、おっとりしてそうな穏やかな顔つきの頭には、耳が生え、角も二本、突き出ているではないか。何処かの異星人なのだろうかと、モモが、ふと、村長たちに視線を戻すと、写真の少女の美しい面影は、たった今、牛頭の村長の隣に座ってる女性そっくりであったりしている。こうして黒髪の乙女がキョトンとしていると、村長は、自らの角の周りをかきかき、

「おらたちの娘、ホルミだ~。めんこいべ~?」

 などと、はにかむように答えるのであった。


 それは、ご多分にもれず、村長夫妻も養子をとるかと考えていた矢先のことであったのだという。なんと、ホルミは、べコべコ星初の異星間の自然妊娠で生まれた子であったのだ!

「……ま、お互いに、品種改良の時期が必要だった、ってことだべさ」

 この星の、どこもかしこも酪農家だらけであるという土地柄の者らしい言い方で、村長は頷きながら、語り続け、

「……問題は、こっからだ~」

 そして、表情を変えた。村には、かつて、ギュウマという名の若者がいたのだそうだ。無論、彼も、地球人とベコべコ人の夫婦の養子であった。ただ、地球人の方の親は、仕事の酪農以外の唯一の趣味と言えるものが大昔のヤクザ映画鑑賞で、無論、本人は地球人であるので、その立体映像がフィクションであるとわきまえられていたが、ベコべコ人であるギュウマにとっては、それは刺激が強すぎたようだ。だんだん、映像作品の登場人物を真似ては、素行も口ぶりも悪くなっていくと、挙句に「舎弟」などと称して子分を連れて歩くようになり、とうとうそれを諫めた両親の事は、いづこかで手に入れたレーザー銃で銃殺すると、自らの舎弟たちを家に呼び込んでは、「ギュウマ組」などと名乗りはじめ、ショバ代だ、みかじめ料だと、近隣の村々まで脅すようになり、この、べコべコ星史上初の「反社会的勢力」の出現を前に、牧歌的な風土の警察はおろおろと、何の手立てもできないままにしているうちに、ギュウマは自らをとうとう「初代組長」などと名乗ると、山の一角に、「事務所」と称する日本家屋を建て、住み始め、尚、睨みをきかすようになった頃には、「組員」をよこしてきて、なんと、前々から目をつけていたホルミをさらっていってしまったのだそうだ。


「……ギュウマのやつら……いったら、やつらは、突然変異だ〜!」

 村長の声は、相変わらず間延びした口調でいたが、それでも娘を拐われた怒りがひしひしと伝わってくる。

「……警察もあてになんねぇ……そこでハンターさんにこらしめてもらおうって思ったわけだ~」

「ひっどい……っ!」

「なんてことアルネっ!」

 乱暴な男のやり方を前に、乙女二人の怒りもこみあがっていた!

「村長さんっ! わたしたちに任せてっ! ホルミさんを絶対に連れて帰ってきてあげるっ!」

 最早、早速、駆けつけようと立ち上がる聖剣の鞘が揺れる隣では、カンフーの使い手も同じように立ち上がり、ウンウンと頷いていたが、

「……あのこもおんなじようなこといって、飛び出していったんだども~」

 と、村長夫婦は、尚も、心配げな顔で、そんな二人を見上げてみせたりもするのであった。


 村からかなり外れたところにある大きな岩山の丘陵とした一角には、ギュウマが家来たちと共にアジトとしている「牛魔組」と筆文字で書かれた表札もある門構えがあり、その前には、背広姿に、サングラスをかけ、ない髪型に反り込みを無理矢理いれたベコべコ人の他に、なんと地球人の姿までも門番としてあるではないか。


「……うわ~。趣味わる~いっ」

 遠目から、双眼鏡で視察しながらモモはひとりごちた。すぐ隣では、クーが握り拳をぶつけ合い、ひたすらに張り切っている。と、BOOOOOOOOOM……という音と共に、偵察にいっていたテオのドローンは舞い戻り、

「ホルミ様ノ位置ヲ確認致シマシタ。少々ノ憔悴ハ見ラレマスガ、バイタル異常ナシ」

 などと、あっけなく「事務所」の全ての間取りを把握してくると、一室の畳の広間で、縛られ、俯くようにしている本人の現在の画像まで添付し、立体映像でもって二人の目の前に映し出すのであった。


「可哀想に……っ!よーし、テオは手出し無用よっ! クーっ! いこっ!」

「明白っ!」

 モモが言い終えるや否や、お国言葉で返したクーは、既に己が持つ超能力を解放すると、突風の如く、駆け抜けていこうとしていて、モモも鞘から聖剣を抜けば、負けじと後を追うようにして駆け始め、

「Yes,Miss……Have a fight……!」

 テオは、もう、数えきれないほど見てきた主の一人である、ゆれる長き黒髪の乙女の凛々しい横顔を、その一つ目のスコープの視界の中にいれながら、見守るように、そっと呟いてみせつつ、従うのであった。


「なんだべ……あれ?」

「ん? おなごでねぇか……めんこい……」

「うあちゃあああああああああああっ!!」

 所詮は、映画の真似事レベルのままごと遊びである。正面突破で、実力高きクーが門番たちをあっという間に彼方まで蹴りとばせば、門まであっけなく粉砕され、漸くモモがテオと共に屋敷に辿り着く頃には、

「おめえ、どごの組のもんだあ??!!」

「組、いうな! こんな悪趣味してるの、あんた達だけネっ!」

「斬り込みだべええええ!」


 BEEEEEEEEEAM!

 BEEEEEEEEEAM!

 BEEEEEEEEEAM!

 今や、屋敷の庭園では、ガラの悪さだけは着飾るだけ着飾った組員たちが、チャイナドレスに素手でしかない女子一人に向け、レーザー銃すら一斉に発砲しているところではないか! だが、クーの風にも勝る動きはそれらを見事にくぐり抜けては次々に、拳を繰り出し、蹴り飛ばし、あっという間に組員たちは次々に崩れ落ちていくのであった!


「おめーもあのガキのなかまかああああ?!」

「…………っ?!」

 モモが声する方を振り向くと、パンチパーマ頭が、刀身がレーザー状となっているドスを片手に、こちらに威嚇している!

「……あら、おじさま、フェアなのね……っ!」

 初めての戦いであるというのに、そう呟くモモの肝っ玉はすっかり座っていて、手にした片手剣状の切っ先にそっと指を置くようにすると、クーやウズメに習ったように重心を低く構えては、相手を睨みつけていた!勇壮でいられるのは、カムイもモモも女系の遺伝なのだろうか。その姿に、抜刀のまま震えることしかできなかった大昔の祖先の片鱗など微塵もない! 可憐な女子高生の制服姿であるというのに、ハッタリもきかない事に、更に狼狽えたパンチパーマは、

「こんの! こむすめえええええええ!!」

 などとレーザードスを振り回して襲いかかってきたが、付け焼き刃にもならない脅迫の玩具でしかなかったものなど、本気で訓練に打ち込んだ剣技の前で相手にもならない事は必然! 乙女の黒髪が華麗に舞うようにした時には、勝負は瞬殺だった!


 ドサリ…………と、白目を向いて倒れる背中にも振り向かず、

「……峰打ちよ! 感謝なさい……っ!」

 尚も、厳しく語りかけるモモは、最早、立派な一介の剣士であった! と、その時!


「おめーらー!!そこまでだー!」

 野太い声に、モモとクーが振り向くと、屋敷からでてきたのは、腹も突き出るようにブクブク太った、入れ墨だらけのべコべコ星人の姿であった! レーザー銃を片手に、もう片方には縄が握られ、その先には縛られたホルミの他に、もう一人、見知らぬ金髪碧眼の美少女の姿もある! ただ、その金髪からは猫のように大きい耳と、ミニスカートからは長い尻尾も覗いていた!


「くっ……!」

 おまけに猫耳の少女は相当痛めつけられた様子で、傷だらけであった。また、ホルミの爆乳には、そこにいる誰もが叶わないにしろ、モモとクー並の、猫耳の乙女の巨乳も、それは余計際立つように縛られていたりしていれば、とても苦し気であったのだ!

「どうぜ! おめらの、めあてもホルミだべ?! あのクソ村長……! ほうれ!おとなしくしねーと、ホルミのあたまに穴さ、あげっぞ!」

 男の脅しは続く! どうやら、この男こそが諸悪の根源! 組長ギュウマだ!


「……次から次へとわけわがんねーの、きやがって……!」

 ぶつぶつ呟く醜い肥満は、その太り方もさることながら、目の下にあるクマの出来方もどこか不自然ですらあったが、

「……だけんど、どいつもこいつもめんごいべな。ぐっへへ。おめーら、おとなしくすんだぞ~……くっそ。最近、なーんで勃たねーんだが。今晩こそ……!」

 ホルミがなにか物言いたげに、傷だらけの猫耳を見つめている中、ギュウマは下品な想像すらはじめていたが、猫耳乙女は、丁度、庭先などを見たりしていると、今や、なんの種も仕掛けもなしに、その場に転んでいたレーザー銃が少しずつ、動いていくところであり、

(この子、まさか……っ!)

 モモは、それを見逃さなかったのだ!


 瞬間! レーザー銃は一気に飛び、猫耳乙女の片手に収まるとBEEEEAM!! と発砲されるのであった! だが、命中を狙ったわけでもない銃口は虚しく、ギュウマを脅かすだけで、

「こんの! また、気味悪い事、しやがって!」

 ギュウマが銃のグリップエンドで派手に殴りつけると、猫耳乙女がなんとか握っていた銃も転がり落ちてしまう!

「F××k youっ!」

 だが、猫耳は負けじとギュウマを睨みかえすと言い返していて、その隙をモモとクーが見逃すはずもなかった! 際に、クーが疾風の如く駆け抜けていれば、

「あっちょぉぉおおおう!!」

 と、華麗に舞って、蹴り上げ、猫耳に向けられていた銃口は遥か彼方まで吹き飛ぶと、

「げっ!! このっ!」

 尚も、なんとかギュウマは歯向かおうとしたが、クーの背中ごしに立ち代るように、今度はモモが現れれば、男のすぐ眼前にまで剣先を突き出し、鬼気迫る顔でもって睨みつけていたのであった!

「ぐっ……!」

 正に組長もどきがぐうの音も出ずにある中、モモは相手の顔をじっと見据え、

「ホルミちゃんとその子の縄を外す……!」

 と、呟けば、

「……縄ごを、はずす……」

 あっという間に屈したギュウマは、まるで操り人形であるかのように、人質たちの縄をほどきはじめ、なんだか更なることもできそうな気がしたモモが、

「警察に、自主をする……!……罪を悔いなさいっ!」

 などと続けると、

「警察に自主する……おっとう、おっかあ、おらがわるかっただ~……」

「私ガ同行致シマショウ……! 御嬢様、クー様、Good job!!」

 あっけなくギュウマは答えると、そのまま、ユラユラと屋敷の外に歩いていき、それまでを見届けるように見守っていたテオが、後に続いていくのであった!


 初仕事の成功に、乙女二人はキャッキャッと抱き合って喜んだのは言うまでもない。そして、 

「すっごいアル!モモの『気』、あんなことまでできるアルか?!」

「や。わたしも、あそこまでできるとは思わなかったんだケド……」

 などと語り合っていると、

「ルーシーさん! ほんとにすまねぇ!」

 自由となったホルミは丁度、猫耳の少女に何かを詫びているところで、

「No problemだよ~。あーあ。けど、これでLicenseはおあずけか~っ」


 やたらとカタカナ表記の単語の発音がいい、ルーシーと呼ばれた猫耳乙女は、少し、残念そうに、肩をすくめてみせたものの、未だあちこちでのびているヤクザ風の男どもを、耳もクルリと見回せば、

「Hoo……cool!……ねぇ、キミたちも、エスパーなわけぇ?」

 などと、今度はモモたちに話しかけてくるのであった。

 

 ホルミの帰還に、これだけ人がいたのかと言う程、村は歓喜で大賑わいとなった。涙を流して謝意を繰り返す村長が、空間にクエストの電光掲示板を表示し、「完了」と表記されたボタンを押せば、これで、モモと、クー、そして今回は猫耳のルーシーも含め、晴れて正式にハンターを名乗れることとなったのだ。

「……ありがとう。モモ、クー、これからよろしくねー」

「ううんっ。こちらこそっ!」

 そしてルーシーが、少し、はにかみながらも、拳を突き合わすようにしてくれば、モモたちは、同じようにして答えた。


 村に戻る最中、少女たちの会話は弾んだ。なんでも、変化の術の超能力をもつという猫耳少女のルーシーは、単身、ギュウマ組の屋敷に乗り込めば、初代組長に姿を変化し、侵入には成功したものの、漸くホルミの居場所を突き止め、喜んで近づいてしまうと、乱暴されると勘違いしたホルミが騒いでしまったので、慌てて、自分の変化を解いたところで、不信に感じた組員たちと共に、話を聞きつけたギュウマにもばれ、駆けつけられては、捕まってしまっていたのだという。話の中途では、モモたちの目の前で、実際、ルーシーは物の見事にギュウマに化けてみせるではないか。その能力には仰天した二人だが、それよりもその向こう見ずな勇気に、モモもクーも非常に好感を持ったのだ。二人が旅の仲間に誘い出てみると、「うれしいよ~。ワタシ、ここくるまでで宇宙船も故障しちゃってさ~。おまけに女の子一人じゃ、この先、厳しいかな~って思ってたんだ~」と、ルーシーも快諾だったのだ。


「ギュウマも元々はいいひとだったんだべさ~。私、おっとーとおっかーたちともよく話し合って、これからのべコべコ星の事、考えていきたいと思います~……」

 見送るホルミが語る後ろで、未だ村長たちが涙しながらも頷く中、こうして三人となったハンターの旅の一行は、宇宙へと飛び立つのであった。


 華麗な運転さばきを、後部座席へと移ったモモが誉めると、

「ワタシの星の国じゃ、子供の頃からの運転も、当たり前だからね~」

 慣れた手つきで計器を眺めては、なにやらテオに訪ねたりもしつつ、猫耳乙女は答える。彼女は生まれた星をバウーフ星といった。太陽系以外の事をまるで知らないモモとクーが、目をパチクリしていると、

「……まっ、ワタシも混血でさ~。こう見えてもちょっとは地球人なんだよ~。だから、あのクエスト見た時、なーんかほっとけなくてさ。早くlicense、欲しかったしっ!」

 などと、新しい仲間は交付所からべコべコ星まで向かった理由を語ってみせたりするのであった。だが、モモとクーが、やがては大オノゴロ国を相手にするつもりだなどと言ってのけると、

「Wait! なに! キミたち! 猛鬼を相手にするつもりなの~?!」

 とも驚き、蒼き大きな瞳を更に見開けば、猫耳をクルクルさせたりもしたが、ヒュ~などと口笛も吹けば、

「モモ、クーっ! ほーんと、Coolだね! OK! ワタシ、とーっても楽しみっ!」

 などと、モモとクーにも負けない肝っ玉は、満面の笑みでもって、これからの旅の行方に心躍らせている様子であった。




















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