08/ 探査局へようこそ


「お疲れ様。ここが、私たちが働いている探査局よ」


 目の前には大きな建物があった。

 中に入ると、真正面には受付。その奥には駅の改札のようなゲートが見える。

 まるでSFの世界に入り込んだような近未来な空間に、僕はぽかんと口を開けて周囲を見回す。


「機密事項を多く扱うから、この部署の警備が一番厳重なの。報道機関も滅多に入らないし……関係者以外の人間、まして学生が入れることなんて滅多にないから自慢できるわよ」


 ゲートの前には屈強そうな警備員が立っている。

 総合案内所とは比べ物にならないどこか張り詰めた空気に自然と背筋が伸びる。


「あの、やっぱり転移装置とかもあるんですか」

「ええ。あるわよ。ここの建物の奥に。そこはさらに警備が厳重だから今は見せられないけれど。ご縁があれば広瀬くんは見られるかもね」

「……やっぱり、この通知書って本物なんですか」


 霧上さんの言葉に僕はカバンの中から通知書を取り出す。


「そうよ、本物。まさか偽物だと思ってたの?」

「……ま、あ。だって、僕に届く意味がわかりませんから」

「まぁ、突然そんな通知がきたら驚いて当然よ。私も局長の考えなんてよくわからないもの」 

「…………そう、ですよね」


 はにかむ霧上さんに僕は自嘲気味に肩を落とす。

 そうだ。やはりこんな一般人の高校生に通知書が届くなんて普通に考えたら有り得ない。

 霧上さんも、少しの時間接しただけで僕の平凡さは身に沁みて感じているだろう。


「別にあなたを卑下してるわけじゃないのよ。ただ、今までの探査員に比べたら純粋な子だな、と感じただけ」

「どういうことですか?」

「年相応で良いってことよ。ちょっと頭がいいからって偉そうにしたり、ガチガチのお堅い研究脳の人たちより君はとっても素敵で私は好きだけどな」

「……あ、ありがとうございます」


 他人にこんなにストレートに褒められたのは初めてで、思わず顔を赤らめてしまう。


「それ。そういう反応が初々しくて可愛いのよ」


 霧上さんは楽しそうに微笑んだ。

 最初はクールで少しだけ怖い印象があったが、こんな笑顔を浮かべる人だとは思わなかった。


 彼女は僕をその場に残し、そのまま受付に進んだ。


「霧上研究員、お疲れ様です」

「お疲れ様。局長の会議は終わったかしら?」


 彼女の質問を受け、受付嬢は確認のためモニターを触る。


「会議室が使用中になっておりますので、おそらく会議は長引いておりますね」

「ふぅむ……わかったわ。ありがとう」


 困ったように霧上さんは腕時計を確認しながら僕の元へ戻って来た。

 スマホで時刻を確認すると、もうすぐ十一時半になろうとしていた。


「残念。会議、まだ終わってないみたい」

「そう……ですか」

「うーん……少し早いけどお昼にしましょうか。私、朝から何も食べてないからお腹空いてるのよ」

「は、はぁ」

 

 お腹を撫りながらそういわれれば断れるはずもない。そもそも僕は霧上さんに着いていくしかないのだから。

 霧上さんに続いて入館証をゲートにかざし、無事探査局の中に入るとそのまま食堂に向かったのであった。

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