05/ 異世界転移探査員適正候補通知

「ただいま」


 学校から帰ってくると、母親がキッチンに立って夕食を作っていた。

 父さんの帰りは大抵十九時過ぎ。姉さんは大学やらバイトやらで帰宅時間はまちまち。大抵僕が一番乗りで家に帰ってくる。


「おかえり、優。あなた宛になんか手紙が届いてたわよ。テーブルの上に置いてあるから」

「……手紙?」


 ダイニングテーブルを指差され、そちらに視線を向けると確かに長形の白い封筒が置いてあるのが見えた。

 手を洗い、キッチンからコーラとポテトチップスを拝借し、封筒片手に二階の自室へ向かう。


「晩ごはん食べられなくなるから、あまりお菓子食べ過ぎないようにね」

「わかってるよ」


 幼い頃からの母の口癖を軽く聞き流し、階段を上り部屋に入った。

 制服から私服に着替え、いつもならばベッドに寝転がりネットサーフィンをするところだが−−テスト前ということもあり、今日は真面目に机に向かうとするか。

 机に教科書を広げ、コーラとポテチを相棒に勉学に勤しむことにする。


「……っと、そうだ。手紙」


 そこで一階から持ってきた手紙の存在を思い出す。

 白い封筒には確かに僕の名前が書いてあり、下の方に『ORDA』と青いロゴが印刷されていた。

 ORDA−−あの異世界研究施設からの手紙だった。

 まさか学校で返却されたもの以外にも手紙が届いているのだろうか。封を切り中身を確認する。


「…………は?」


 中に入っていたのは二枚の用紙。

 一枚はどこかの施設の案内図。もう一枚はなにやら文章が書かれた用紙。

 そこに書かれていた文章を見て僕は思わず目を点にした。



広瀬 優 様


異世界転移探査員適正候補通知


拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

この度貴殿は当機関の民間異世界転移探査員適正候補に選出致しましたので、ご通知申し上げます。

つきましては、下記日時に当機関で説明会を行います。

ご都合つけられない場合は別日を設けますのでご一報頂けましたら幸いです。


国立研究開発法人異世界研究開発機構異世界探査局

               局長 雪永 春久



「異世界、転移……って」


 書類を握りしめる手が震える。

 何度も何度も読み返すが、内容は変わることなく僕が異世界転移適正者候補に選ばれているという通知だった。


 一体なにが起こったんだ。

 どうして僕の元にこんな手紙が? なにかの手違いに違いない。

 届け間違いかと思い、宛名を確認するがそれは間違いなく僕の名前で。


「…………説明会」


 説明会の日付をカレンダーで確認する。

 学校の予定表を確認したかのように、ご丁寧に配慮してくれたのかテスト明けすぐの休日になっていた。

 

 あまりの衝撃にテスト勉強どころではなくなった。

 結局コーラもポテチも全く手をつけることなく、晩ごはんまでその書類を見つめたまま呆然としていた。

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