04/ 返ってきたアンケート課題

「四月に講演をしてくれたORDAさんから皆宛に手紙が送られてきたぞ」


 アンケート課題の返事がきたのはそれから二日後のことだった。

 担任の手から一人一人、全ての生徒に手渡されるアンケート用紙に教室中が驚き騒めきたつ。


「すげぇ。本当に返ってきた」


 前の席に座る杉本がこちらを振り向き、興奮気味にアンケート用紙をチラつかせてくる。

 ホチキス留めで一枚増えて返却されたアンケートには、職員から質問に関する答えや簡単なメッセージが添えられているようだった。

 どうやら返事を書いてくれている人物は生徒によって違うらしい。

 大きな組織は人も多い。一人の職員に一人の生徒が割り振られたとしてもどう考えても職員の数の方が多いだろう。

 それでも忙しい時間を割いて、全校生徒一人一人に向けて返事を書いてくれたのだ。なんという厚意だろう。


「次、広瀬ー」

「はい」


 担任に呼ばれ僕も用紙を受け取りに席を立つ。

 受け取ったアンケート課題には二ヶ月前書いた自分の答えが書かれている。

 時間が経って眼を通すとなんだかとても恥ずかしい。これを読まれていたのかと想像すると余計に恥ずかしくなってくる。

 そそくさと席に戻り、自分の文章を見ないようにさっと用紙を捲った。


 僕の担当は−−雪永という人のようだ。


「…………雪永?」


 どこかで聞き覚えのある名前。

 思い出そうと頭を捻っていると、僕の用紙を杉本が覗き込んできた。


「あれっ。ユキナガ、って……優に返事書いてくれたの局長さんじゃね?」

「…………………ああっ!」


 その瞬間頭にかかっていた靄がぱっと晴れた。

 そうだ。雪永といえば、講演会にきていた張本人ではないか。

 そんな偉い地位の人も見ていてくれたのか。それも僕なんかのものを。

 僕がその場凌ぎでひねり出した質問にも懇切丁寧に、おまけに分かりやすく答えてくれている。

 提出前夜、寝る前に慌てて書いたのが酷く申し訳なく思えてきた。


【お会いしてお話しできる日を楽しみにしております。 雪永】


 ざっと眼を通していく中で、最後に手書きで書かれていたメッセージが目に止まり思わず首を傾げた。


 生徒達に好評だったため、第二弾の講演でも決まったのだろうか。

 妙だとは思ったが、あまり気に留めることなくプリントをクリアファイルにしまった。


 こうしていつもより時間がかかった朝のホームルームは終わり、いつもの日常に戻っていく。

 クラスメイト達も返却されたアンケートに少し浮き足立っているようだったが、講演の日ほどの熱はなく。

 すぐに昨日のテレビの話やネットの話題など、各々の話題で盛り上がっているのであった。

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