第十二章 ―夢の中の世界への鍵―

「とりあえず先生の所に戻ろう、優…。」

「うん、先生も何か考えている事があるかもしれないし……。」

「ありがとう姫子さん!!じゃあっ…。」

「ちょっと待って!!」


二人が立ち去ろうとした時に姫子が彼等を引きとめた…。


「?? 姫子さん? …どうしたの?」

「……渡したい物があるの……役にたつかは分からないけど…でもやっぱり聖人は…私がお腹を傷めて産んだ子供だから……。」


そういって姫子は『渡したい物』を取りに寝室へ入って行った…。


「渡したい物ってなんだろうね…?」

「あぁ…まぁ、聖人を救う手がかりになれば良いよな…。」



「俺は…聖人を救う為にここにいる…だから後に引く訳には行かないんだ…。」


うつむきながらも胡に自分の思いを伝える…。


「私は聖人を救おうと考えた事は1度もない…ただ、せめて普通の人間の子供か河童の子供であれば苦しまずにすんだんだ……。」


聖人が悪いわけではない…でも子供が親を選べない様に親も子供を選べない…。


「だが、子供が親を選べないのと一緒で自分の種族なんて決められない…。」

「あぁ…私はその事を忘れていたようだ…。」



「はい、これを持って行って……。」


姫子から渡されたのは、紙を束ねて作られた一冊の本の様な日記の様な物だった……。


「これは……?」

「胡さんとこの家に来た時に胡さんの荷物の中に入っていたの…たぶん一族に伝わる何か大事な事が書かれていると思うの………。」



手渡された一冊のノートの様な物は、翔と優には開く事が出来なかった……。

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