第十章 ―救う為に…―
「聖人を救う為には聖人の両親に会わないといけない…だが、俺は簡単に会う事を禁止されている…一族の掟と…この国の法律だからな……。」
「じゃあ、オレ達が聖人のお袋さん達に聞いてくればいいって事か!!」
「まぁ、そういうことになるな…頼んだぞ。」
「はい、必ず聖人を救う術を聞いて来ます!!」
聖人を救う為に聖人の家へ向かう三人…そんな彼等を見つめる一つの影…。
「こんにちは、姫子さん!!」
「あら、こんにちは翔君、優君…ごめんなさいね、聖人ってばまだ帰って来てないのよ…本当に困った子ねぇ。」
首をかしげながらも二人に家に上がる様に進める聖人の母・姫子…。
「姫子ママ、実は…僕達、その…聖人の事で聞きたい事があるんです…。」
本題を切り出したのは優だった…。
だが、それをさえぎったのは他でもない聖人の母・姫子であった…。
「もし、聖人に起きた症状の事だったとしたら私が答える事は出来ないわ…。」
「「えっ!?」」
まさか、実母の姫子が答えてくれないことになるとは、二人共想像もつかなかった…。
「ちょっと待ってよ姫子さん!!」
「どうしてですか!?」
「……でも、私の口から直接話す事は……。」
車の中で二人の帰りを待つ神に一つの人影が近寄る……。
「ん? …あいつ等もう戻ってきたのか…?」
車の窓を開け人影の主を確認する……。
「…っ貴方は……。」
「息子が世話になっているようだね…如月 神先生…いや、霧咲 神…。」
「河流 胡……聖人の父親か……。」
車のドアを開け直接向かい合う形をとる神…。
車の後部座席には聖人が静かに眠っている……。
「とうとう迎えたのか……。」
横目で聖人を見ながら一言そうつぶやく胡に対し、神が口を開く…。
「聖人を救う術を貴方はしっているはずだ……。」
「………あぁ………。」
「聖人はどこに連れて行けばいいんだ?」
「…教える事は出来ない…。」
「アンタは聖人を見捨てるつもりなのか!?」
「……そうとってもかまわない……聖人は政府に引き渡す…。」
「なっ………!!」
それは、神が最も恐れていた答えだった…。
「最低だな…一度もまともに愛してやることもなく、時がきたら捨てるのかよ……聖人がどんな気持ちで今までの人生を生きてきたと思う? 認めてもらいたくて…両親に側にいてもらいたくて…心配してほしくて…一族の一員になりたくて…必死に生きている自分の息子の姿をアンタはちゃんと見てやった事があるのかよ!!」
「……………………。」
「聖人にはもう時間がない…聖人は唯一河童狩り一族であった俺の高祖母に力を与えた青年の生まれ変わりなんだろ? 雄大な自然の中に静かに佇む湖畔があるはずだ…。」
「……。」
「アンタが聖人にしてやれる事なんじゃないのかよ!!」
神の叫びが胡の心に突き刺さった……――。
「聖人が死んでもいいっていうのかよ!!」
「それは……だって……。」
翔の叫びに姫子はただ涙するしかなかった……。
「僕等は聖人を救いたいんです…聖人が僕等を救ってくれたように…。」
「…ごめんなさい…聖人……。」
「…姫子さん…頼むから教えてくれよ…。」
そして…重い口が開かれた……――。
「「…分かった(わ)…。」」
胡は、姫子はどう答えを出したのか…聖人は救う事が出来るのか…。
今、その答えが明かされる……――。
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