第62話 真珠なんて、豚に喰わせてしまえば良い

「に……逃げてくれ、エメラルド」


「だ……駄目にゃあ……動けないにゃあ……」


キース君が、じたばたと、


「ぬぬぬ……我も身体が動かぬ」


くそ……


ステータスは封じられ。

スキルは封じられ。

身体の支配、心の支配は進んだ状況。


対するクローバーは、無限の力を持つ存在。


はは……


こんなの……


糞ゲーじゃねーか。


<称号『いえ、攻略のヒントを無視した結果、フラグを建てられず、普通に攻略失敗しているだけ……』を獲得しました[1]>


……そうでした。


<称号『お疲れ様でした。災厄の討伐数、7体のうち3体……正直、初回の異世界召喚で此処までやれるとは思っていませんでした。誇って良いですよ』を獲得しました[1]>


……


<称号『』を獲得しました[1]>


?!


まさか……状況を打破できる、攻略のヒント……


考えろ……意味を……考えろ……


<称号『いえ、全く意味の無いそれっぽいフレーズを呟いただけです』を獲得しました[1]>


そういうのやめて貰えませんかねえ!!

たく……ちょくちょく意味の無い悪戯するよな……フレーバーテキストとか、称号の欄が書き換わっているとか……


……


時間が動き出し、エメラルド姫への歩みが再開する。

これ、俺の時間は動いているからって、進み続けてたら最悪だったな。


「なあ、エメラルド、キース君」


「はい」

「どうしたのじゃ?」


「これからやる事は……最悪の結果を招くかも知れない……だが……」


「やって下さい、ホダカ。このままではどうせ……世界は滅ぼされます」

「そなたを信じるのじゃ。何せ、そなたは仲間なのじゃから」


有り難う。


「何をやっても無駄ですよ?貴方は持たざる者。私は持つ者。ただ、それだけが事実」


そう。


システムが色々やらかしたジョークシリーズの1つ。


ぽちり


ずっと画面右上に表示されていた、ギブアップボタン。

[崩壊させる]を、ぽちっとな。


元の世界まで崩壊したら、最悪の結果となるけど。

を破壊するのなら?



ぴし



ぴしぴし



びり



びりびり



「?!な、何をした勇者ああああああああ?!」


クローバーが叫ぶ。


「貴様、何をしたあああああああ?!」


深く、蠢く様な声が、響く。

恐らく、死幻蝶ヴネディア。


世界が、崩壊していく。


「ホダカ!」

「ホダカ殿!」


世界が……破れ……


--


気がつくと、巨大な廃墟にいた。

見覚えがある……城か?

今崩壊したところ……という印象ではなく、昔に放棄され、長年で朽ちた……そんな印象。

無数の破片、そして、数名の人。


そして……


美しい寝顔の──人間に戻ったエメラルドと。

見慣れたキース君。


戻って、これた?

賭けに勝った、か。


<称号『賭けというか、普通に教えたとおりにやっただけですよね』を獲得しました[1]>


知らなかったんだから賭けで良いの!

水差さない!


<称号『お疲れ様です。死幻蝶ヴネディアは滅びました。世界も救われました』を獲得しました[1]>


……良かった。


<称号『まあ、ギブアップボタンを使ったので、クエスト達成報酬はあげられませんが』を獲得しました[1]>


今までも貰えてないですよね!


ともあれ。


何とか無事、3体目の災厄も倒せた……きつい。

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