第63話 選挙の習癖

 入社後、同時期に入った新入社員三名とともに、総務課長に連れられて、部署ごとに挨拶に回った。

 企画営業部の係長が、新人四人に「がんばってな」と声をかけた。この一瞬、「ありがとうございます」と言いかけ、思わず言葉を飲み込んだ。

 選挙の癖が抜けていないことが、我ながらおかしかった。

「がんばっての」と声をかけてくれる何百という支持者に「ありがとうございます」と答えてきた。その習慣が、一年経った今も体の奥に染みついている。

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