第55話 選挙の熱
宇田議員と二人で近くの居酒屋へ歩くと、店は満員だった。
「あんた運転できるか」という無遠慮な質問に、「酔っています」とだけ答えた。宇田議員も酔っているようだった。
「しゃあない。議員生命を懸けて、あんたを乗せてってやる。わしも酔おとるから、捕まったら明日の朝刊を飾るぞ」
大袈裟に笑って運転席に乗り込むと、助手席のドアを開けた。無事に議員の家まで辿り着くと、そこからは歩いて近くの居酒屋へ向かった。
「次出るんか」
「わかりません。もう金森さんはいませんし」
「なんや、あれは金森の選挙か? ちがうやろ、あんたが立候補した選挙なんや。あんた早稲田やろ。それが負けるのはおかしいやろうが。この前の選挙、なんで負けたと思うとるんや」
「金森さんが亡くなって、町内の人の反発で、足引っ張られたからじゃないですか」
今さらどうにもならないことを蒸し返す質問に、腹立ち紛れに投げやりに答えた。
「違うな。金森は関係ない。立候補を決めた時点で、全部あんたの責任や。いったい何がしたいんや」
という詰問に酔いも醒めかけながら、逆に選挙への熱を思い出していた。
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