第39話 活動への思い

 市長の勧めをありがたく感じながら、これからの活動への僕なりの思いを話した。

「志学館は今朝の新聞で見て、申し込もうと考えていました。でも、志学館の参加者以外の人とも一緒に活動したいと思うんです。政治とは別の場所で、積極的にまちづくりの活動をしている人がいて、その人たちは志学館などにも出て、他の市民活動にも参加しています。今現在、星野川市のまちづくりに関心を持たない人、あるいはあっても距離を感じて参加をためらっている人の中に入って、一緒に活動できるようにしたいんです」

 田舎の投票率は高い。この前の選挙では、八十一パーセントもあった。そのほとんどが、これまで通りの利益誘導型の政治を望む人たちである。町内の道路や川を整備するために、それぞれの町から議員を出す。そして議員は地域代表として、将来の星野川市のビジョンもないままに、種々雑多な有権者の要望に応じて公共事業を行う。

 本来なら、将来を見越し、この先も自分たちの子どもや孫が地元で働けるよう、産業の育成を第一に考えた計画が必要である。仕事を求めて若者が星野川から出て行くことが過疎化を進ませ、やがて道路整備もままならなくなっていく。

 残りの十九パーセントの中には、きっと今の状況をおかしいと思いながらも、諦めて選挙に行かない人がいるはずである。そういう人たちの中で活動し、今眠っている票に働きかけてみたいと考えていた。

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