知らない間に彼女がいることになっていた 番外編集
狐雨夜眼
クリスマス
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス。寒い中わざわざうちに来ていただいてありがとうございます」
「気にしない気にしない。今日はいつもよりちょっと暖かいし。むしろもっと寒くなって雪降って欲しいぐらいだし」
「一応それっぽい料理を揃えてみました。足りないものがあれば作れる範囲で作りますけど」
「十分だよ。ローストビーフにシーザーサラダにあとクリスマスケーキ。……さすがに全部自作じゃないよね?」
「まあ、ケーキは店で予約してたものっすね。ローストビーフは自作です。今日のために寝かせておきました。ソースも自作っす」
「キミの料理の腕は留まる事を知らないね。いいなあ」
「ローストビーフに関してはわりときっちりとレシピ見てましたし、何度かお試しで作ったりもしたんで自信作です。ああ、そうだ。お酒もありますけど、今日はどうします? センパイってお酒苦手っすよね」
「シャンパンがあるなら、雰囲気的に一口ぐらいは飲みたいかなあ」
「了解っす」
「シャンパングラスなんてあるんだ」
「この日の為に買っておきました。まあ安物ですけど。ついでにシャンパンも安物です。センパイが飲まないって言われたら後日一人で飲むつもりだったんで」
「私、お酒の味の良し悪しなんてわかんないし平気。雰囲気だよ」
「うっす。てことで、改めて――」
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
「センパイ、顔真っ赤っすよ」
「一杯で済ませてよかったよ、ちょっとぼーっとする。それにしてもキミは本当にお酒強いよね。結局一人でシャンパン一本空けてるし」
「体質ですかね。まあだからといって普段は飲まないようにしてますけど」
「美味しいご飯食べて、ケーキも食べて。ねえ、どうしよっか」
「プレゼント交換忘れてません?」
「あっ、そうだね」
「ほんと酔ってますね。はい、これどうぞ」
「私からも、はい。受けてとってね」
「あざっす。――指輪?」
「そ。シンプルなものにしたから、ちゃんと右の薬指に付ける事」
「俺、左利きすよ?」
「あれ? 利き腕って関係あったっけ?」
「いやわからんす。指輪なんてつけるの初めてなんで。……まあ、いいか。右の薬指っすね。……おお、ぴったり。どうっすか」
「うん、似合ってる。外に出る時は絶対に付ける事。特に大学の時はね?」
「うっす。んで、俺のプレゼントはどうっすか」
「おお、ネックレス。キミからもらうのは二回目だね」
「毎日同じネックレス付けてるんで、バリエーション増えたほうがいいかなあって」
「うん、嬉しい。前のもだけど、今日貰ったのも凄く私好み。シンプルで……あと、ハートが付いてるのが嬉しい」
「喜んでもらえて嬉しいっす。センパイと『こういう関係』になって、『それらしい』ものをプレゼントした事ないなあって思って」
「このフィクション恋愛脳め、最高に雰囲気の良いタイミングで渡してくれるなあ」
「そのネックレスは、俺が大学に行かない日と休日俺と一緒じゃない時はつけないでくださいね」
「りょーかい。もう、人の事あんま言えないけど、キミも結構独占欲強いよね」
「こんな素敵な女性を放っておけるほど心臓強くないっす。いつでもどこでも、俺が助けにいけるわけじゃないんすからね?」
「ちょっと前の『アレ』思い出すね」
「やめて! 久しぶりに頭にきたのと暴力に訴えたから加減がわからなかっただけだから!!」
「もう……大人なんだからさ」
「うっす、さーせん」
「まあ、でもそれだけ大事にしてもらえてるって思えたし、嬉しかったのも事実。だから私は『面白い思い出』って感じだけどね」
「というか、センパイもセンパイで反省するところあったでしょ。あんな風に――」
「んっ。なんかただの愚痴りあいじゃない。折角のクリスマスだよ?」
「そうっすね。じゃあ、俺からも――」
「んんっ。……はあ、キミのキス、すればするほど上手くなってる」
「センパイに喜んで欲しいと思うと、無意識に」
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