オマケ外伝(3):超難易度ダンジョンに挑め!

超難易度の理由

「おいおい、

またダンジョンを壊さないでくれよっ」


今回限定相棒の冒険者であり

トレジャーハンターでもある

通称ドン・ファンは

勇者の乱暴な戦い振りを見て

心配になり声を掛ける。


「だったら、最初から

俺に依頼するなっ!」


その手にする大剣と魔法で

次々とモンスター達を

撃退して行く勇者。


だがその戦い振りは

ダンジョン内の壁や通路、

階段なども一切お構いなしで、

モンスターもろともぶち壊して行く。


これでは相方が心配するのも

無理からぬところだ。



常に単独行動をしているため

こうして相棒と一緒に行動するというのは

この勇者にしては非常に珍しい。


そしてダンジョン内に

居ること自体も珍しい、

そもそもこの勇者は

ダンジョンがあまり好きではない。


今ここは地中深くへと

潜って行くダンジョンではあるが、

もし仮に地震でも起きようものなら

生き埋めになることは間違いない。


天に向かうタワー式ダンジョンも同様で

あんないつ崩落しても

おかしくないようないにしえの建造物に

よく好き好んで登るものだ、

と常々思っているぐらいだ。


今回は勇者の仕事として

断れない依頼であったため、

仕方なくドン・ファンと共に

ダンジョンに潜ってはいるが、

若干イライラしているのが

こうした荒い戦闘スタイルとして

現れてしまっていた。


-


勇者請負人をやっているこの勇者、

そもそもここに来た経緯は

神々のエージェントを通じて、

ドン・ファンから勇者に

ダンジョン探索調査の依頼があり、

どうしても断り切れずに

ここでこうしてモンスター達と

戦う羽目になっている。


以前もただ一度だけ

ドン・ファンと一緒に

タワー式ダンジョンを

探索しに行ったことがある勇者だが、

その時はダンジョンを

見事に全壊させている。


ダンジョンには

遺跡的な価値もあるんだと

ドン・ファンには怒られたが、

「そんな壊れ易そうな物に入る方が悪い」と

勇者は言い返していた。



「今回のダンジョンはここの世界では

超難易度のダンジョンと呼ばれていてね、

最深部まで到達すると

息が苦しくなり、

体が宙に浮いたり

自由が効かなくなったりするんだ」


ドン・ファンからは

事前にそう説明を受けていた。


「それだけなら

俺である必要がないだろ、

球体シールドで空気対策でもすれば

それで済む話じゃないか?」


「それだけと言う訳でもなくてね……


最深部はどうも我々には

不思議な構造になっていて、

見慣れないような物ばかりでもあるし、


いろんな異世界を見て回っている

流浪の勇者である君なら

何か分かるんじゃないかと思ってね、

要は君の知見が必要という訳さ」


元々断れる話でもないので

勇者はこの超難易度ダンジョンに

挑むことになった。


-


もう長いことダンジョンを

下へと進み続けているが、

モンスター達も極端に強いという訳でもなく、

トラップが非常に悪質という訳でもない、

少しレベルが高いダンジョンという程度か。


そう思いながら勇者は進み、

さらにしばらく長いこと経ってから

ドン・ファンは次が最深部であることを告げた。


「この鉄の扉、

その先が最深部になる、

息がしづらくなるから注意してくれ給えよ」


そう言うドン・ファンの後について

鉄の扉を通る勇者。


その時、何とも嫌な予感が勇者を襲う。


扉を通った時の感覚、

それはこれまでも何度も何度も感じた

非常に馴染みのあるもの。


『今の、ゲートじゃないのか?』


勇者が戸惑っていると

ドン・ファンが声を掛ける。


「見てくれよ、これをっ!

天にも左右にも

街らしき建物があって、

何とも不思議な構造をしているだろっ!?」


冒険者としての血が騒ぐのか

ドン・ファンは熱く語るが、

空気が薄いのだから

止めた方がいいだろう。



勇者はそれを見たことがあった。


厳密に言うと

実物を見たことはないが、

本や漫画、アニメで見て知っている。


円筒状の内側に

びっしりと敷き詰めたかのような

都市と自然。


空気が無い、体が宙に浮く、

そしてこの内部の形状と光景、

すぐに勇者にはピンと来た。


『あ、ここ、宇宙だわ』


所々の隙間から見える闇は

地の底に続く闇ではなく

宇宙そらそのもの。


『ここ、絶対

スペースコロニーだろっ』


勇者は超難易度ダンジョンの意味に

妙に納得してしまう。


『そりゃ、宇宙なんだから、

超難易度ダンジョン扱いされるわ』





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