オマケ外伝(1):オネエ異世界

オネエ国王

「あら、やだっ、

ちょっと勇者って

男前じゃないっ」


この世界の国王は

新たに来た勇者を前にして

興奮していた。


玉座から身を乗り出し

階段下にいる勇者から

目が離せない、

違った意味で。


『また、

このパターンか』


前回同様の展開に

うんざりしている不遜な勇者。


また一喝してやろうかと

勇者が思ったその時、

予想外なことに国王は

その巨漢を揺らしながら

階段をノシノシと降りて来た。


「遠路はるばる、

わざわざすいませんねぇ、ホント」


『こいつはちゃんと

わかってる奴じゃないか、

やはりこういうのは

対等な立場でないといかん』


勇者がそう思っている内に

国王はどんどん近寄って来て、

真横にぴったりと

密着するかのように立った。


『おいおい、

いくらなんでも、

距離近過ぎないか?


上から目線も失礼だが、

初対面でこれだけ

馴れ馴れしいしいのも

それはそれで無礼だろ』


そうは思ったが

国王の妙な迫力と雰囲気に

気圧されタジタジ。


「あら、やだ、

近くで見ると

ますますいい男じゃないのっ」


どうも人間世界で言うところの

オネエのように見えるのだが、

『国王』と名乗っているのに

『男ですか? 女ですか?』と

聞く訳にはいかず、

困惑する勇者。


なんだかやたらに

手を握って来る国王。


「どこのご出身なの?」

「いつから勇者なさってるの?」

「彼女とかはいらっしゃるの?」


オネエ口調で

勇者を質問責めにする国王、

しかもやたらに

スキンシップが激しい。


手を握って来る他にも

肩に手を置く、

背中に手を置く、

腰に手を回す、

しかもそれが

不自然に感じないぐらいの

絶妙な加減で

スキンシップを図って来る。


『もうこれ、

完全にプロのオネエだろ』



しまいにはお尻まで

触りはじめる国王。


「あらやだ、

すごいいいお尻してるじゃない、

勇者って」


『もうこれ、

完全にセクハラだろ』


そう思う勇者だが

オネエ国王はなんだか

憎めないキャラをしている。



周りで大人しくしていた

側近の中高年

いわゆるおじさん達が、

お尻タッチの件を境に

口々ににわかに騒ぎはじめた。


勇者は今までここにいる全員

ただのおじさんだと思っていた、

オネエは国王だけだと、

しかしそれは大きな間違いだった。


「ちょっと、国王、

そんな下品な真似は

おやめなさいよっ」


「もうやあねぇ、国王ったら」


「いい男見たら、

すぐお尻触ろうとするんだからぁ」


「国王様ばっかり、ズルいっー」


側近のおじさん達も

全員がオネエ口調。



勇者は解釈に苦しむ。


王族をはじめ、

貴族もオネエというのが

この世界の流儀であるのか?


確かに人間世界でも

中世の貴族には男色家が

多かったらしいし、

それがこの世界の貴族の間で

高貴な風習として流行っているのか?


それともこの世界では

男も女も関係なく

この人達はこうした種族であるのか?


異世界の人間も

自分が元居た世界の人間と

同じだと勝手に思い込んでいたが

それはそもそも

間違いなのかもしれない。


国王や側近が

オネエ口調で騒々しく

喋り続けるので

もう何がなんだかわけがわからない。


『もうこれ、

ただのオカマバーだろ』

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