カートゥーン幽霊

東の外れにあると言う

通称『お化け屋敷』に行き

子供の霊を連れて来いと

テト達少年少女魔道士団に

命じた勇者だったが、

子供達があまりに

ビャービャー泣くので、

複製勇者五体を一緒に付けてやった。


その複製勇者に

子供の霊を憑依させて戻って来る

というのがテト達に与えられたミッション。


勇者本人は、肉体の方、

自分の複製をつくるのに忙しいらしい。



「あわわわわ」


ビビりながら『お化け屋敷』の敷地に

入って行く少年少女魔道士団の子供達。


まず目の前に姿を現したのは、

雲のように白くてフワフワした

大きな目がクリクリしていて可愛らしい

子供の幽霊であった。

厳密に言うと雲ではなく霧らしいのだが。


コミカルな感じと言うか

カートゥーンアニメとかに出て来そうな

タイプの幽霊に見える。


「なんだ、そっち系かぁ、よかったぁ」


恐ろしい方の幽霊ではなく、

安堵する魔道士見習いの子供達。



しかし、その可愛らしい霊の後ろから

子供の霊が大量に押し寄せて来る。


同じように可愛らしい外見なのだが、

数十体ぐらいはいそうな群れが

全力の勢いで向かって来るので

見た目など関係なく子供達はビビる。


「体くれぇ~、体くれぇ~」


口々にそう言いながら、

テトと子供達を追い掛け回す幽霊達。


「ひえぇぇぇ」


「いや、僕達じゃなくってぇっ、

あっち、あっちにお願いしますぅ」


追い掛けられて逃げ回る

テトと子供達は、なんとかして

複製勇者に誘導しようと

必死になってい叫んでいる。


どうやら子供達には

またトラウマが増えてしまったようだ。


-


「ゆ、勇者様ぁ、連れて来ましたよぉ」


自分達に憑依しようとする霊を

何とか言い聞かせて、

複製勇者に憑依させ、

集落まで泣きながら戻って来た

テトと子供達。


新しい肉体を得た

子供の霊は大層喜んでいたが、

外見はまるっきり大人なのに

やることは子供そのもの。


「ねぇねぇ、ち〇こ、ち〇こ」


「ぎゃはは、う〇こ、う〇こ」


発言もほぼ子供が大好きな

下ネタばかり。


ちょうどそういうのが面白い

年齢の子だったのか、

よっぽどアホの子だったのかはわからないが、

そんなのが五人も居た日には

鬱陶しいことこの上ない。


それに自分と同じ姿をした

アホな子のやることが

まるで自分が滑っているようで

勇者はいたたまれない気分でもあった。


『やっぱ、クソガキはダメだな』



しかし、この試みにより

思わぬ収穫を得ることも出来た。


幽体系アンデッドは

勇者の複製した肉体に憑依させると

肉体に支配されて

勇者の言う事を聞くようになり、

有効な策であることが判明。


これまで霊体系アンデッドを

苦手としていた勇者だが、

まさかのここで

その対応策が見つかったのだった。






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