遠隔操作式操り人形

人間世界から新しく別のドーム球場を

転移強奪して来て、そこを置き場にし、

いよいよクローンの量産体制に入る勇者。

何気にドーム球場が気に入ったらしい。


クローンの数はすでに数百体を超え、

千体に達するのもあっと言う間だろう。


クローン自身にも

複製出来る能力を新たに付加したので、

その数は鼠算式に増えて行く。


最終的には数万体、いや数十万体を

揃えることも可能だろう。


現状魂を持たないために、

ただの遠隔操作式の操り人形ではあるが、

兵士としてはむしろ

そちらの方が都合が良かった。


元は同じ勇者の肉体であるため、

精神感応で自らの手足のように

自在に動かすことが出来たし、

ある程度目的を共有するだけで

後は勝手に動いてくれる便利さもある。


まさに勇者の分身という感じであった。


-


兵士や兵器としては

それで全く問題はなかったが、

種を存続させるために

補充された新たな人間として見ると、

少し微妙であるとも言える。


この感情がない操り人形が

将来この世界の人間の

大多数ということに成りかねない。


勇者的には、

最悪それでも問題はないのだが、

この操り人形のクローンに

魂を憑依させるとどうなるのか

という興味もなくはない。


どうせならいっその事

人間の肉体を欲している

霊体系アンデッドを

憑依させてみようかなどと考えるが

生憎つい先日大量に

在庫処分してしまったばかりだ。


それに死霊とか悪霊を

憑依させたところで、

暴れて悪さをされるのが

オチではないかという気が

しないでもない。


-


それでも少年少女魔道士団に

この辺りに霊がいないか訪ねる勇者に、

テトは情報を提供する。


「東側にも

霊体系のアンデッドはいますし、

東の外れには『お化け屋敷』もある

って噂されてます」


アンデッドやらゴーストが

当たり前のように存在している世界で

『お化け屋敷』という呼び名は

どうなのであろうか、

せめて幽霊屋敷ではないだろうか、

むしろそこが気になって仕方ない勇者。


まぁ、それは置いておいて

テトの話によれば、

その『お化け屋敷』には

幼くして亡くなった子供達の霊が

多数地縛霊化しているらしく、

種族的にはホーントという

タイプになるらしい。


子供の霊であれば

そこまで性悪で悪質な霊も

いないよう気がするし、

実験には丁度良いのではないかと思う、

あくまで勇者のイメージであったが。


「よし、お前ら、

そこ行ってお化け捕まえて来いっ」


「えええぇぇぇっ!」


勇者の無茶振りに慌てふためくテト、

そして少年少女魔道士団の子供達。


つい先日霊体系アンデッドに

トラウマレベルの怖い目に

合わされたというのに、

鬼のようなことを言い出す勇者。


それを聞いただけ

浄化魔法を詠唱しはじめる

少女もいるぐらいのトラウマ。


これではテトも

情報提供損に他ならない。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る