決起集会

魔王軍の決起集会。


その場には十万を超える数の兵、

魔族や魔物達が集まって来ている。


こういうイベントに

喜んで集まって来るのは

魔族としてどうなのだろうかと

疑問を感じるが、

ここの者達はみんなそういう性格なんだと

勇者は思うことにした。



場所はもちろん魔王城ではなく、

この日のために用意された

拠点の中でも最も敷地が広い城。


魔王城の場所は誰にもわからず、

勇者もそれさえわかれば

魔王城を直接攻撃して

早々にこの不毛なゲームを

終わらせるところなのだが、

これだけ潜入を続けていても

未だにその場所はわからない。


-


透明化というよりは

存在を消して

誰にも気づかれないように

この場に潜入している勇者。


「大チャンス」


口角を上げてニヤリと笑う。

当然誰にも見えないのではあるが。


集まった群衆の中には、

先般、砂漠地帯で迎撃した侵攻軍、

そこで一度捕虜になった者達の姿も多数ある。


「俺、捕虜を解放した覚えは

ないんだよね」


勇者は再び口角を上げて

いやらしくニヤリと笑う。


警護には先日仲良くなった

魔獣ちゃん達が多数、

会場内を歩き回り、飛び回っている。


「役者が揃ってるね」


千載一遇のチャンスを前に大興奮で

ついつい勇者も一人言が多くなる。


-


集会がはじまると

魔王軍の要人やら

幹部やらの話の後、

いよいよ魔王がその姿を見せる。


城のバルコニー、

高所から十万以上の群衆を見下ろす魔王。


黒いマントを羽織っているため、

細かくはわからないが、

漆黒の鎧に、兜と仮面、

形状こそ違えどダークナイトと

それ程変わらない容姿のようにも見える。


「あれが、魔王か」


魔王城の所在がわからず、

人前にその姿を滅多に

現わさないという魔王、

勇者としては

魔王を暗殺するには

またとない千載一遇の機会。


ここで魔王を暗殺出来れば、

このゲームはクリアしたも同然、

勇者が大興奮するのも無理はない。



「我らが母なる大自然を、

力強き大地を、

美しき川、湖、海、

命の源である水を、

清浄なる空気を、

汚して回る勇者を

断じて許してはならないっ!」


魔王の演説、檄に、

多少違和感のあった勇者ではあるが

今は興奮状態なので

それどころではなかった。



「さあ、ショータイムのはじまりだっ!」


勇者の目が赤く光ると

空を飛んでいた

グリフォンをはじめとする魔獣達が

魔王へと向かって行く。


魔王の警護は

勇者の敵襲に魔獣が警戒したのだと

思い込んでいた、

魔獣が敵だとは思わずに。


「敵襲か!?」


先頭のグリフォンが

魔王に突っ込むと

その体内にある爆弾が

起動して爆発を起こす。


次々と魔王に突っ込み、

自爆を繰り返す空の魔獣達。


勇者はその光景に

口角を上げてニヤリと笑う。






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