お嬢様と背中を洗いあう


 「さて、じゃあまずは私が純の背中を流してあげるわ!」


 「ママママママママママママママママッテ!」


 お嬢様に強引に引っ張られ、俺はシャワーの前に連れて行かれては椅子に座らされてしまう。しかも意気揚々とお嬢様は俺の背中を洗う準備をしている。


 かういう俺はろくに待ったすら喋れずガチガチに体を震わせてるんだ。これから起こる惨状を想像できてしまうからな……。でもその惨状を避けるために行動できるかって聞かれたら……無理。


 「じゃあ早速行くわね!」


 「あ、ああ、あああ」


 お嬢様はそんな俺を気にせずにゴシゴシと背中を洗い始める。ああ、なんか柔らかいものが当たっている気がするよ! それが一体なんなのか突き止めたら俺はこの場で気絶しそうだから知らないふりをするけど。


 ……ただ、すごく心地がいい。お嬢様は何をしても才能がある方だけど、まさか背中を洗うことに関しても才能をお持ちだとは……すげえ。


 「どこか痒いところとかはないかしら?」


 「あ、ああ、えっ、えっと……」


 「あ、ここかしら!」


 「ひゃ!」


 また何かムニっと当たる感触が俺の背中にくる。しかもお嬢様が勝手に俺の痒いところを察して……まあ実際ほんとに痒いところを当てて洗ってくれる。


 ……天国と地獄って紙一重なんだな。


 「それそれ〜純、気持ちいいかしら?」


 「あ、ああ、あああ!」


 「良さそうね!」


 そのまま俺はお嬢様に背中を洗ってしばらく時間が過ぎる。その際何度も気絶しそうだったり、鼻血が出そうになるものの、気合いでなんとか耐えていく。よし、このままやり過ごせばまだ生きて帰れるぞ!


 「よし、これで終わりよ!」


 そしてようやく、この天国とも地獄とも取れる時間に終わりが告げられた。た、耐えた……なんとか耐えたぞ俺は!


 「じゃあ次は純が私の背中を洗ってちょうだい!」


 「……あ」


 ……そうだった。次は俺が洗わないといけないんじゃん。


 「あ、でもこのまま私体にタオル巻いてちゃ洗えないわね。よい……」


 「それはダメ!!!!!」


 お嬢様がタオルを外そうとしたので、俺はすかさず止めようとお嬢様の手を掴んでしまった。あ、やべ、これむしろお嬢様のタオルを俺が外しちゃうんじゃ……。


 「させねーよ!」


 「あ……さ、佐野さん」


 危うくお嬢様の裸体が俺の目の前に広がるところだったが、すんでのところで佐野さんが止めてくれた。


 「嫁入り前のお嬢様の裸男に見せたら、うちが首になるからな!」


 「じ、自分から洗いあいをけしかけたくせにそこは真面目なんですね。で、でも助かりました!」


 「流石にお嬢様が恥じらうかと思ったんだよ!」


 確かに常識的にお嬢様がまさかこんなことするとは思わないか。


 「失礼ね。純の前でしかこんなことしないわ」


 とうのお嬢様はこんなことを言ってるし。


 「よ、よくないから! じ、自分の体は大事にして!」


 「ぶー。なら背中だけ出すようにするわ。それなら洗ってくれる?」


 「ま、まあそれなら……。あ、佐野さんタオル落ちないよう見ててくれます?」


 「わーったよ」


 「決まりね。楽しみだわ、純のテクニック」


 「その言い方やめて!」


 というわけで結局俺はお嬢様の背中を洗うことになった。……ああ、腕がガチガチになってろくに動きやしない。でもお嬢様に満足してもらう為にも……頑張る。


 「……んっ。純……とってもいいわ」


 なんか艶っぽい声をお嬢様が出してるんだけど。すげー心臓に悪いんだけど。


 「そ、それは良かった」


 でも指摘はできずに、俺は邪念をブンブン払いながら必死に背中を洗っていく。うう……た、耐えろ俺。お嬢様に痴態を見せていいのか? よくねえよな! だったら頑張って切り抜けるんだ!


 「……あっ」


 「!!!」


 でもお嬢様が時折出す色っぽい声が俺の神経を刺激してしまう。や、やばいってその声は!


 「……ねえ純、ここ、洗ってほしいわ」


 「……!? こ、ここ!?」


 お嬢様からリクエストが来たけど……そこは俺にはあまりにもセンシティブな場所だった。で、でもお嬢様のリクエストを断る訳にもいかないし……やるっきゃない!


 「……よし」


 「……あっ! い、いいわ純。とっても心地いいわ」


 何もかも問題があるが気にしたら俺の意識は保てない。ここだ。ここを乗り越えれば俺は無事にいられる!


 ……それから数分後。


 「良かったわ純。またやってもらいたいぐらい」


 「そ、それは良かった……けどまたは勘弁……」


 なんとか終わった。無事に意識を保ててる。はあ……ほんと良かったわ。


 「さて、それじゃあまた一緒に入りま……あら」


 「!!?」


 だが、油断をしてしまった時こそ危険なんだ。神様のいたずらか、お嬢様がつけていたタオルが取れてしまった。と、いうことは……。


 「………………………」


 「あ」


 「じゅ、純!?」


 これは防衛反応だったのかもしれないけど……お嬢様の裸体が目に映る前に、俺は気絶したようだ。後から聞くに佐野さんが頭をなんとか地面に打たないよう抑えてくれたらしいけど……。


 ……ちょっとだけ、見たい気持ちもなくは……なかったなあ。


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