お嬢様と電車の中で
「最高だったわ純! これ以上ないひと時だったわ! もうエキサイティングしてしまったわ!」
映画が終わった後、お嬢様は駅のホームでプリキュア映画の感想を興奮しながらいっている。お嬢様は生粋のファンだから、当然の反応といえばそうなんだけど。かくいう俺も結構楽しんで見れた。
「これでこのまま一緒に遊べたらよかったどれだけよかったことやら……。純、このまま門限を破ってどこか一緒に行かない?」
「だ、だめ!」
そう、お嬢様は八条家唯一の跡取りということもあって厳しい門限がある。それを破ることは執事たち従者にとって最大のやらかしになってしまう。なのであの手この手と元同僚たちが来るのは間違い無いので……その提案には乗れない。
……ほんとは、洒落込んだディナーをしたかったけど。
「そう……なら仕方ないわ。でも一緒に帰ってはくれるでしょう?」
「も、もちろん!」
でも今日もお嬢様を家までお送りすることはできる。それに電車でお嬢様の最寄り駅まではそれなりに時間がかかるから……まだ一緒にいられて俺は嬉しい!
「あ、電車が来たわ。乗りましょう」
「う、うん」
そして電車が来たので俺らは乗って、そんなに混んでいなかったので一緒に席に座ることができた。ああ、お嬢様が俺の隣の席に座っている、それだけで緊張してしまう。
「こうやってくっついて座るのは初めてね。純、もっと近づいていいのよ?」
「そ、それは無理!」
「じゃあ私から近づくわね」
「?!」
お嬢様は俺に思いっきり寄りかかって、俺の肩で寝るような体制を取る。やばい、こんなのもう……耐えられないよ。
「の、ノア! これは……あ」
耐えられないと言おうとしたその時、どういうわけか……。
「……スー、スー」
お嬢様が本当に俺の肩で寝ていた。映画を熱心に見すぎたからかな……だとしてもいきなりだ。さっきまで起きていたはずなのに。
だけどこうなると起こすわけにも行かない。お嬢様の安眠を奪うわけには行かないのだから! 堪えろ俺……駅までの辛抱だ……!
「……ううん……純……」
「?!」
夢の中で俺のことを見ているのだろうか。お嬢様が俺の名前を寝ながら呟く。え、どんな夢を見てるんだ? というかお嬢様の夢に俺なんかが登場するなんて恐れ多い!
「……純、もっと来ていいのよ……」
「へ!?」
寝てるんですよねお嬢様? 俺の心をドキドキさせることを言ってくるんですけど。
「……え、えへへ。純、くすぐったいわ」
「い、いやいやいや」
あんまり人がいないからよかったものの、お嬢様は夢の中での出来事を次々に呟いていく。え、本当になんの夢を見ているんですかお嬢様? 夢の中の俺は一体何をしてるんだ?
……少し、夢の中の俺が羨ましいけど。
「……そ、そこは……あ」
「!!?」
そんなに人がいないとはいえこれはやばいって! 夢の中の俺、今すぐお嬢様に向けてるその手をやめろ! 現実の俺がこのままだとメンタルやられてしまう!
「……! も、もうすぐ最寄りだ! お、起きて! 起きて!」
そんな風にあたふたしている俺に朗報がきた。もうすぐお嬢様の最寄り駅につく。よし、もう起こしてもいいはずだ。お嬢様をこんな強引に起こすのは忍びないけどそれも今は致し方ない。
「……う、うう……」
だけど結構深く眠ってしまったのだろうか。お嬢様は一向に起きる気配を見せない。それでもなんとか起きてもらおうと努力はしたんだけど……残念ながらお嬢様はスヤスヤと眠っているので。
「おらあ!」
おぶっていくことにした。他の乗客からしてみれば何事!? って感じだろうけどそんな目線は気にしない。今は……というか俺の人生はお嬢様を中心に回っているんだから。
「そんじゃ、送っていきますからね」
そして俺は駅員に事情を話してホームでお嬢様のスイカと一緒に通り、家まで歩いていく。俺は体こそ鍛えているのでおぶること自体は問題ないんだけど……。
「…………」
お嬢様の体が全て俺に乗っかっている。その事実だけでもう鼻血が出そうで仕方がない。だけどここで出すとお嬢様のご帰宅が遅くなってしまうので頑張ってこらえて先に進んでいく。
「……よ、よし……もうすぐ着くぞ」
ようやく、お屋敷が見えてきた。なんとかなったな……はあ、最後の最後でこうなってしまうのか。やっぱりお嬢様と一緒にいるとなんでもありだな。
「……純」
あと少しでつくといったところで、お嬢様がまた俺の名前を呼ぶ。今度は一体どんな夢を見ているんだか。夢の中の俺もどれだけお嬢様と触れ合ってるんだか。
……でも、それぐらい積極的になれば……夢の中みたいにできるのかな?
って何を考えているんだ俺は! 俺はお嬢様と釣り合うわけがないんだ。お嬢様とこうして仲良くしてるだけでも幸せ……。
「……大好きよ、純」
「……え?」
背負っているお嬢様が、俺の耳元で……そんな寝言を言った。……こ、これって……。
「おーお帰り純……ってええ!?」
のちにこれは知ったことなんだけど、迎えにきた佐野さんがいうには俺はこの時……立ったまま、寝ているお嬢様を背負ったまま、気絶していたらしい。
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