016「イセカー・インクレディブル(完結)」/斉藤希有介さん②
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881198812
今どきのラノベ? いやいや!
家族ごと異世界転移、しかも魔族側、そして主人公の父ちゃんが魔王という、他にあまり見ないパターンです。
突然魔王になっちゃった父ちゃん、全然魔王らしくなくて、随所に社会人としての礼儀とか、人の良さが滲み出てて親近感が湧きます。
頭にごっつい二本の角を生やした魔王が、初対面の騎士に対して
「あ、どうも」
と、とっさに頭を下げちゃうとか、争いを避けるために話し合いで解決しようとするとか、中身はどこまでも普通の日本のサラリーマン。
たとえ異世界に来ちゃっても、お父さんは魔王だろうが魔族だろうが、家族を守ることを第一に行動する。頼りになります。
ノリと勢いだけでなく、世界観や宗教観、国の歴史と、種族の違いによる強者と弱者の摩擦と奴隷問題、先代魔王の遺した経済問題や外交問題など、しっかり伏線も絡めて描かれているのが、さすが「スリマジェ」の作者さんだなと思いました。
特色のある街並みの表現や、異世界に飛ばされたときの「なぜかみんな違和感なく日本語が通じる『違和感』」が、会話の中できちんと描写されている部分が好きです。(「グラデーション」のやりとりなど)
個人的に、登場した時はおバカポジションかと思いきや(ごめんね!)、自分の立場をしっかり弁えているマヒナちゃんを応援したくなります。言葉遣いに頭の良さをビシビシ感じます。実のところ、彼女は大変に有能な部下なのでは⁉
途中で一人称の視点切り替えがありますが、おもしろかったので大丈夫でした。
長編で書かれてもよかったのにな、と思います。
「怒ったら怖い」とウワサの美人ママさんの活躍がもっと見たかったです。あの、「パーパさん」って呼びかけるかわいさが、果たしてどう恐ろしく変わるのか⁉ 激しく気になるところです。
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