Side story 剣祖イテアリスの伝説 キャラ紹介つき
剣祖イテアリス=ディエール 概要と0~6歳編
~概要~
エリュトリオンにおいて知らぬ者はほぼいないと言われる聖剣流の開祖及び聖剣キュベルミナスの初代所有者。キュリヴァティ王国初代国王でもある。
本項では生い立ちから現在までを掲載する。
~プロフィール~
▶名前
イテアリス=ディエール
イテアは*古エリューバ語で叡知・救い を意味する言葉。
名字のディエールは初代イカイビトの友人のデュシア家の分家で跡目争いで没落した。
*古エリューバ語とは現在公用語とされているエリューバ語、マーガ語、クイグ語、ヤモン語、ラダクァ語以前の言語。18音ある。
▶性別と身長
女 162cm
▶愛称・別称
剣祖、剣神、聖剣流開祖、初代聖剣所有者、聖霊神、六聖神に愛された者、スラムの救世者、人から神になった者、聖剣の女傑
▶出生地
ホフム自治領メナーテ郡 人外域スラム・フォーギ
(現在はアーガラム帝国メナーテ郡と呼ばれる)
▶生年月日
3月17日 光天竜の輝座
▶血液型
Ey型
他にRt型、Hr型、Oi型、N型がある。
▶職業
戦災孤児→解放軍首領→キュリヴァティ王国国王
→剣神
▶所属
スラム・フォーギ→解放軍→キュリヴァティ王国
▶配偶者
グスターヴァス=カウリー=ディエール
▶好きなもの
野菜、剣、思いやり
▶嫌いなもの
愛する人々の流血
▶趣味
子供(子孫)たちの成長を見守る
剣の模擬戦、イサクとのお茶会
~来歴~
カミュラ歴874年、ホフム自治領メナーテ郡、人外域スラム・フォーギにて生を受ける。
カミュラ歴880年。6歳になった彼女に両親の死という試練をつきつけられる。
6~9歳、両親が残した曇りでも作物が実る畑を耕し食いつなぐが毎年盗まれることに悩まされる。
9歳、ドン・カウリーとの出会いが彼女の人生を変える。
9~16歳、ドン・カウリーの指導の元、更に読み書き算段を覚え、全スラム廃止に動き出す。
16歳、六聖神より啓示を受け、解放軍を立ち上げる。
16~18歳、各地の戦乱を鎮めていく。
18歳、エルゼンハウズとの共闘、邪神、魔神モルタナスアとの決着をつけ、終戦。
後に8000年続く王国、キュリヴァティ王国を建国し天下統一を宣言する。
20歳の誕生日、エルゼンハウズから〘幻幽騎〙を授かる。
24歳、かねてより猛アタックを受けていたグスターヴァスと結婚し、三万人が祝福する。
26歳、双子を出産する。後に兄は聖剣流を継ぎ、弟は魔剣流を創設する。
28歳、長女を出産する。彼女は後に無剣流を創設する。
33歳、〘
99歳、己の死期を悟り〘脈繋嗣〙の真の姿を研究し始める。
105歳、〘
葬儀には6万人が参列、世界中の人々が涙し、66日間止まぬ雨が降り注いだ。
死後、その功績を讃えて神々の世界、神悠淵界に招待され、剣神となる。
6に愛された人生であった。
~人物~
・幼少期の壮絶な経験から他人の過ちに対して寛容な所があり、子供たちが流派で違えた時も宥めながら後押ししたという。
・剣を教える際は一段と厳しくなるが、怒っている時も笑顔の為、その怒気によって息子たちは幾度となく失神したと逸話が残る。
───────────────────────
~生い立ちと活躍~
スラム・フォーギ。ここでは人として生きることを否定され、拒まれ、虐げられた者たちが行きつく罪地。
戦乱の時代であったカミュラ歴の時代に難民や孤児たちがより集まった。
ここに住む者は生きているだけで罪とされ、六聖神もその対処に手を焼くほどであった。
そんな中、常時曇り空のフォーギに珍しく晴れた日があった。イテアリス=ディエールの誕生である。
古エデューバ語で“叡知・救い”を意味するイテアの名を付けた疑問が絶えない子になっていた。
なぜ、スラムがあるのか。
なぜ、ここは晴れないのか。
なぜ、悲しむ人が減らないのか。
四歳になるイテアリスは既に人々を救う為にどうするべきかをいつも考えていた。
悩む彼女の姿に微笑みながら両親は実家から持ち出した僅かな本を取り出しては読み聞かせ、知識を蓄えた。だが、この安らかな一時も長くは続かなかった。
六歳のある日、イテアリスは友人の喧嘩を仲裁した帰り道のこと。人々には何の変哲もない一日だが、今日は違う。
彼女の誕生日だ。
一般階級の人間が家というより物置小屋と称するだろう我が家の玄関が珍しく開いている。
血だまりがじわり、じわりと流れ着き、道を赤く染め、履いている手作りの木靴に届く。
お父さんとお母さんの身に何かあったのか。
有頂天で気付かなかったが、良く見れば畑が荒らされている。
急ぎ、我が家へと駆け込むイテアリス。
そこには見るも無残な両親だった肉片。
もうどちらが父と母なのかわかったものではない。
運良く傷がなく確認出来た母の顔は微笑み、額には血文字で矢印が指されている。
矢印の先には僅かな本が並べられた引き出しつきの机。一つだけ丸印が付いた引き出しを開くと手紙が入っていた。
「愛する我が子へ。この手紙を読んでいるということは私たちはもうこの世にいないのかもしれません」
この丸くて読み易い字はお母さんの字だとすぐに理解した。
「どうか、泣かないでね」
「そんな……の……無理に……決まって……る、でしょ……」
「六聖神の内の一柱、耀姫神レナーテ様より啓示を受けました」
『貴女の子、イテアリスが六歳の誕生日に五英傑狩りを称する賊が現れ、貴女方を抹殺します。
これは天命。わたくしたち神々でも変えることの出来ない運命なのです。ですが、イテアリスは生き延びます。わたくしたちも善を尽くしましょう。愛しき人の子よ』
「強く生きなさい。非道に走らないこと。
復讐せず、必ずしも戦乱を終わらせるのはイテアリスしかいないことを信じます」
彼女は唇を噛んだ。
このようなことあってたまるか。
お父さんとお母さんが死んだなんて。
信じたくない、信じない、だけど事実だ。
復讐から何も生まないことはスラム暮らしだから学んでいる。
……くっ。生きてやる。生きて生きて、生き抜いて、私が戦乱を終わらせる。
だから今は泣いても良いかな、お父さん、お母さん……。
彼女の慟哭はスラム中に響き渡り、音もなく殺された両親の死を周囲に知らせた。
丁寧に埋葬し、両親と親交があった人々と共に家を建て替え、再び畑を耕した。
彼女の心は以前より強くなった。
両親の復讐をしない約束を守り、まずはスラムの環境を変えることから試みた。
一年目。父が遺した悪天候でも育つ作物を育てたが、不作。
種も前年より減ってしまった。
二年目。全天候に適応する種を偶然発見し、そちらの開発に着手する。
三年目。彼女のことを馬鹿にしていた者たちもその努力に心打たれ、スラムの環境改善に乗り出し、畑を耕し始める。やがて実りの季節となり、収穫をしていた所にある女が現れる。
これが後にイテアリスの人生を変えるマフィア、ドン・カウリーとの出会いだった。
◆◇◆◇◆
今日も曇り空の中、不思議と金色に輝く小麦を刈り取る人々を見てあたし、カウリーは驚いていた。
かつて人として認められない人々が築いた罪地がただの農村部になっているだって──!?
齢9歳の少女が先陣を切って肥溜めの土地だったここを開墾し、盗賊団が現れれば自らの人望をもって説得。いつしか開拓民に……。
そんな嘘みたいな噂を聞きつけ、五年振りに来てみればこの有り様。本当にスラム・フォーギなのか?
「──刈り取った小麦はこちらへお願いします! ヒックさんとベントミンさんはマラヤお姉さんの手伝いへ行ってください!」
「へいよ!」
「すぐに終わらすぜ!」
先程からきびきびと指示を出している子供がいる。あれはヒック盗賊団とベントミン盗賊団の首領。そしてマラヤ閣下。
最近見ないと思えばここにいるとはね。
3人があたしの前を横切ると、ニ度見をして冷や汗を流しながら即座に逃げていった。
ふん、滑稽だこと。
しかし、“狂犬”のヒックと“麻薬王”ベントミン、“傾国の女帝”マラヤを懐柔させるとは……あの娘が件のイテアリスだろうか。
情報提供者の吟遊詩人から貰った似顔絵と照合する。金に橙混じりの髪、左手に光聖神の祝福を受けた聖印。瞳は桃色。
………間違いない。一致している。
「なぁ、嬢ちゃん。あんたが噂のイテアリスかい?」
「はて、旅のお方でしょうか? お宿はあちらを行って……」
「違う、あんたに用がある」
ぽかんと口を開けてあたしをじっと見つめてくる少女。最近、ほうれい線が深くなってきたから目立つのだろうか?
まぁ、そんなことではないだろう。
「どうした? 顔になにか付いてるのか?」
「い、いえ! ……おほん。まさか私のことが噂になっているのは初耳ですが、自己紹介を。私はイテアリス=ディエール。しがないスラム民です」
言葉遣いまで9歳とは思えない。うちの愚息はタメ口を利かして舎弟にシバかれるってのに、面白い娘だ。
「これはご丁寧な説明どうも。あたしはドン・カウリー。しがないマフィアのボスさ」
マフィアと聞いた瞬間、大汗を垂らし、焦りに満ちた表情へと変わったイテアリス。腰に携えた短剣を掴んで、あたしに敵意を剥き出しである。
「マ、マフィアが何の用ですか? 私を殺しに来たのですか?」
震えながらも切っ先をあたしに向ける。
幼いが、圧倒的な剣術を持つと聞く。
この娘は親を“五英傑狩り”に殺されたことからそれで怯えているのか。あたしほどの知名度なら殺してもおかしくないと考えているのだろう。
周りにいる人たちもあたしの名前を聞いてか怯えている。
「いいや、そんなつもりはない。あたしにそんなおもちゃは通じないよ。確かにマフィアだが、金や命より義理人情。人によっては義賊と称する者もいる。……ほう、良い
「そんな……マフィアの下につくなんて……」
「うーん、そうだね。メリットに欠けるか。あたしは解放軍ってのをやってんだ。この戦乱を終わらせる為にね」
「開放軍ですかッ!!!?」
◆◇◆◇◆◇◆
〜イテアリス視点〜
カウリーは包帯を外し、左手に施された聖印を見せた。それは風聖神の印だった。
「そ、それは聖印!? 何で貴女が持っているんですか? 」
──聖印。
それは名誉・地位・誇り・実力全てを持ってしても得られぬ最上の印だ。
純粋な心を持ち、世を変える者しか認められない神に愛されし象徴でもある。
絵本の存在が目の前にいることに頭の整理が追いつかない。
「あたしは神なんか信じない口でね、それでも目の前に現れて『頼む』と言われたもんだから断れなかったのさ。今こそ“その時”じゃないかい?」
カウリーの問いかけにわたしは少し迷いを感じた。
まだ早いのでは? もう少し大人に近付いてからの方が良いんじゃないか?
──いや、違う。今、ここでチャンスを逃せば戦乱は終わらない。お母さんとお父さんの無念が消えないままで終わってしまう。
「……ここには帰ってこれますか?」
「あたしの舎弟を守りにつけとくよ」
彼女の舎弟はこの乱世でも指折りの精鋭揃いらしい。待遇の良さと言い、チャンスは今しかない。
「わかりました。皆に報告してきます」
数日前に聖印を持った人が現れる、と光聖神レナーテさまより啓示を受けたわたしは完全に信じてなかった。今が好機だとしか思えない。
「皆、報告があります! 啓示の時が来ました。だから行ってきます!!」
「ッ! そうかい、本当に来たのか!?」
「仕方ねェ、後は任せとけ!」
「だけど、ドン・カウリーだぜ。付いていって大丈夫かァ?」
「いえ、彼女は義賊だと評判だわ。大丈夫よ」
「正義の為以外に力を振るうと聖印は持ち主を消滅させるそうです。だから大丈夫だと思います」
「イテアリス、頑張れよ」
「頼むぜ、イテアリス先生」
「はい!」
ヒックさんとベントミンさんに別れを告げる。マラヤお姉さんは相変わらず興味なさそう。
二人とも笑い泣きの状態だが、背中を押してくれた。
こうしてイテアリスはスラム・フォーギ改め、メナーテ村を離れ、ドン・カウリーの本拠地、ケット・シーの集落へと向かった。地識を蓄え、技術を磨き、武を鍛える為に。
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