第29話 ベトナムのひとり吉本新喜劇かと思った

 ベトナム人女性のトゥイが日本人男性の私と出会い、頻繁にLINEメールをするようになった。


 トゥイは私とのLINEメールのやり取りをしていた際、もろに顔にでてしまうタイプだったようで、スマホの画面を見つめてはニタニタしていたらしい。


 トゥイはお母さんと妹と姪といっしょに住んでいるため、トゥイの様子の変化にお母さんは気づいたのである。トゥイは非常にオープンな女性であったため、私とネット恋愛していることを洗いざらい話した。


 そして、現在に至るわけだが、私はSkypeのテレビ電話でトゥイの4歳の姪と対面したことがある。


 言葉の通じない私は変な顔をしてみたり、何か動きで分かりそうなコメディッタッチなことをカメラ越しにやってみせた。


 すると、姪の反応は無反応であった。


 唯一の救いは、トゥイがかろうじて笑ってくれただけである。私は往生際の悪い男なので、例え姪から反応がなくても心折れずに笑わそうと頑張った。そして、ついに編み出したのが手で口を隠し、隠している間に口を舌を使ってタラコ唇にする芸である。


 手を口から離すと、口のタラコ唇がシャキーンと現れる。これには姪もやっと反応をしめしてくれて、クスクスと笑えてもらえたのである。

※もしかしたら、同情して笑ってくれただけなのかもしれないが。


 笑うこと、楽しむことに関して世界共通なのだと感じている。ちなみにトゥイにしても、茶目っ気な一面がある。トゥイから奇妙なポーズをしている写真を見せてもらったことがあった。


 私は写真を見て、ベトナムのひとり吉本新喜劇かと思ったほどだ。


 吉本新喜劇とは日本で言うコメディ番組である。私は関東の人間なのだが、吉本新喜劇が東京に進出し、関東のテレビでも放送されていることがあった。その時に初めて吉本新喜劇なる笑いを観て衝撃を受けたのである。


 吉本新喜劇の登場人物がギャグを言う。すると他の出演者が待ってましたとばかりにずっこける。


 私は今日も世界は平和だなと思った。

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