第28話 おじいさんが亡くなりベトナム人女性は悲しんだ

 ベトナム人女性のトゥイは常日頃、日本人男性の私に「わたしたちの家族は仲良しこよしだよ」と話している。


 どうやらベトナムは日本と比べると家族の絆は大変深く、家族を大切にする民族みたいである。トゥイは現在、ベトナムの地方都市に住んでいる。


 トゥイの家はトゥイの母親、母親の弟の家族、トゥイのおじいさん、おばぁさんで住んでいた。


 トゥイとSkypeで通話している時は、ニワトリの鳴き声が聞こえるし、母親の弟の子供がはしゃいでいる声も聞こえてくる。


 賑やかな雰囲気が電話越しに伝わるのである。トゥイは何でも話してくれるところがあり、「おじいさんの体調が悪くて入院している。とても心配だ」と私に話していた。


 私にしても昨年、おじいさんが亡くなった。すぐに病院に駆けつけたが、おじいさんの身体は冷たくなっていた。出会いもあれば別れもある。別れはとても悲しい。


私:トゥイのおじいさん入院しているのか。早く退院できるといいね。


トゥイ:うん、たぶん、もうすぐおじいさん退院できると思う。


私:そうなんだ。じゃあ、よかったね。


 こんな会話を私とトゥイはしていたのだが、事態は急変した。数日後・・・・・・。


トゥイ:大変!


私:何? どうしたの?


トゥイ:おじいさんが亡くなってしまったよ。


私:えー!


トゥイ:トゥイ悲しいよ。辛いよ。


 それはあまりにも急なお知らせであった。トゥイの家族にしても、おじいさんが退院できると思っていた矢先、おじいさんの体調が急変し、亡くなってしまったそうだ。


私:私のおじいちゃんも去年亡くなった。だからトゥイが悲しい気持ち分かるよ。私も悲しかったから。


トゥイ:うん、これからおじいさんの葬式とか、いろいろあるからトゥイ忙しくなる。


私:分かった。トゥイが余裕ある時、私に連絡ちょうだい。待ってるから。


トゥイ:うん。


 私は日本人なのでベトナムの葬式事情は知らないのだが、ベトナムでは人が亡くなると、三日三晩、葬式を行うみたいだ。


 トゥイのおじいさんが天国に行けるように、お寺でお祈りをするそうである。


 詳しいことは分からないが、ベトナムの葬式事情を書いているブログを読むと、知らない人が葬式会場にやってくるらしい。


 なのでベトナム人男性の妻になった日本人女性の場合、日本人関係者がいると知られると家に泥棒がやってくる可能性もあるので、葬式の最中、日本人妻は日本に帰国したと話している方もいたぐらいである。

※ベトナムの親族が話し合った結果、日本人妻は日本に一時的に帰国した方が安全だろうとなったらしい。


 ベトナムのことに関しては、私も全く分からないので、今後、何かあった時はトゥイに頼ることになるだろう。親日国とは言え、やはり外国であるため、日本のように安全ではない。


 日本で普通に後ろポケットに財布を入れても大丈夫だが、ベトナムでは財布を盗んでくださいと言っているようなものだ。自分だけは大丈夫だろうという考えは浅はかなのである。


 よく自分だけは大丈夫だろうと安易な気持ちで外国にひとり旅をする日本女性がいるが、危険な目に遭遇し泣くはめになっている。結局のところ、守ってくれるのは自分自身なので、事前に海外旅行する際は入念に調べた方がいいだろう。


 トゥイのおじいさんが亡くなり、トゥイも頻繁にお寺に通っている。トゥイのおばぁさんは足が悪いため、お寺にバイクでよくトゥイが連れて行ってあげるそうだ。「おじいさんが天国に行けるようにお寺でたくさん祈っている」とトゥイは言っていた。


 私の去年亡くなったおじいさんも、きっと今頃、天国で私のことを見守っているだろう。できれば私が結婚し、幸せになった姿をおじいさんに見てもらいたかった。祝ってほしかったなぁ。


 おじいさんへ

 私はトゥイと将来、幸せになります。

 天国から暖かく見守っててください。

 お願いします。

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