14
「飲み物は何にする?」
「あ、私はアイスティーにする。」
前払いのお店のようで、ボケボケしているうちに瞬くんが注文から支払いまでスマートに終わらせていた。
「瞬くん、お金。」
席についてから私はいそいそと財布を出す。
パンケーキとアイスティーの値段はいくらだっけと店内のメニュー表を見て計算していると、瞬くんは笑いながら言った。
「アイスの代わり。」
「?」
言われた意味が分からなくて、私は思いきり首を傾げる。
「ハッピーアイスクリームでしょ。」
瞬くんが頬杖をつきながら楽しそうに言う。
私は一瞬にして先ほどの結婚式のことを思い出して目を見開いた。
───同時に同じ言葉を言ったらハッピーアイスクリームって言うの。先に言った方が勝ちで、負けた方がアイスを奢るっていう遊び。
「えっえっそんなっ!」
奢るのは冗談だって言ったハズなのに。
「いいからいいから。パンケーキ半分に切るね。はい、こっちが結衣ちゃんの。」
断る隙を与えてはくれず、瞬くんは丁寧にナイフでパンケーキを半分に切って取り皿にのせた。当然生クリームも半分ずつで、山盛りの生クリームも器用に分けてくれる。おまけにナイフとフォークも手渡され、もう食べる準備万端だ。
「…ありがとう。」
瞬くんの女子力の高さに圧倒されつつも、私はかろうじてお礼だけは言えた。
ふわふわのパンケーキとふわふわの生クリームは、口に入れたとたん甘さがいっぱいに広がって、そしてしゅわっと溶けていくような繊細さだ。美味しくて美味しくて幸せな気持ちになる。
「幸せそう。」
「うん、幸せ。美味しい。」
私が落ちそうになる頬を押さえながら答えると、瞬くんも幸せそうに笑った。
その笑顔がとても綺麗だなと思って、私はしばしみとれてしまった。
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