第七章十九節 真意
タケル達の機体が破壊されてから数時間後。
首都ベルグレイアよりも数キロ程東に位置する、グライス侯爵領。
その中枢にある館で、二人の人物が立ったまま密会をしていた。
一人は細身の体型にフィットした、機動力を重視した服装であり。
もう一人はいかにも高級な、上質な仕立てでありかつ豪奢な服装であった。
細身の人物が、豪奢な服の男に対し、震えながら伝える。
「申し訳ございません、閣下。またも三人を、取り逃がしてしまいました……」
豪奢な服の男はその報告を聞くと、頷いてから答えた。
「またか。“子供達”は、いやそれよりも遥かに大きな何かが、私の目的を遮ろうとしているな。それで、被害は?」
「はっ……差し向けた
そこまで聞いて、豪奢な服の男は歯噛みした。
「80台近くを差し向けてこのザマか……。やはり、私の想像のつかぬ何かが遮っている」
「閣下、まさか“子供達”を……!?」
「いや、諦めはしないさ。しかし、よりにもよってベルグリーズ王家が彼らをかくまうとはな」
難しい顔で考え込みながら、豪奢な服の男はある一つの決断を下す。
「裏ルートで入手した他国の
「はっ」
フローラと呼ばれた女が、一礼した後に姿を消す。
それを見届けた豪奢な服の男は、派手な椅子に座ると、一人ごちた。
「よもやここまで、天運が我らを見放そうとはな……。だが、フローラが命懸けでハドムス帝国の機密を得てきたのだ。人倫にもとるのは、承知の上……それでも手を止めれば、我らベルグリーズ王国は技術的に後れを取る。そうなればハドムスとの戦争となった場合、飲み込まれるのは我らだ……!」
男は右手の拳を握りながら、なおも続ける。
「それだけは、我らグライス家の……このヘルムフリート・ベルリ・グライスの名誉にかけてでも止めねばならん……! 余人が私を、そしてフローラを何と
男の――ヘルムフリートの声には、焦りと義務感が混じっていた。
絞り出すような声で、さらに言葉を紡ぐ。
「かくなる上は、あの機体を……
もはや引き下がる事は出来ない。そんな覚悟を滲ませながら、ヘルムフリートは天を見上げたのであった……。
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