第七章十六節 本命

(承知した、リラ)


 リラの全力の叫びを聞いたシュランメルトは、敢えて返事をしなかった。Asrionアズリオンに命じて、格納庫の前に向かう。

 そして拡声機を起動し、呼びかけた。


『どこに向かうつもりだ?』


 声を掛けられたBladブラドは、何の返事もしない。

 代わりに腰に取り付けられた剣を抜くと、光弾を放ちながら前進してきた。


(ふむ、本気で仕留めるつもりか。ならばおれも容赦はしない)


 と、その時。

 Bladブラドから声が響いた。


『いいのか、工房の機体を勝手に壊して!?』


 挑発する男の声だ。

 だがシュランメルトは一切気にせず、大剣を構える。


『なっ、おい、お前――』


 男の声は、途中で途切れた。

 何故なら。


『いかなる機体であれど、おれに危害を加えるのであれば自衛はためらわん』


 シュランメルトは既に、Asrionアズリオンに大剣と大盾を振り抜かせていたからだ。

 一瞬遅れて、Bladブラドの胸部と腰部が両断され、地に落ちる。轟音を立て結晶片をまき散らし、一切の行動を停止した。


『それに、今のおれはひどく不機嫌でな』


 剣を抜こうとする2台のBladブラドを前に、シュランメルトはむしろAsrionアズリオンを前進させる。


リラ工房おれたちの機体を盗み出す、というのは』


 そう言い終えたシュランメルトは、大剣と大盾の一振りで2台のBladブラドの腕部や胸部、ついでに剣まで両断し終えていたのであった。


 2台のBladブラドが倒れるのを横目に、シュランメルトはリラに拡声機で告げる。


『リラ、奪われた機体は排除した。やむを得ない選択だったが、建物への被害は小さいまま食い止めた』

「分かりました。機体を奪われたのは痛手でしたが、シュランメルトは気にしないで結構です」

『承知した……む?』


 シュランメルトの目には、小さな点が4つ見えた。

 点は徐々に高度を落とし、着地する。


『リラ、ノートレイア。この場は任せた』

「シュランメルト? どうしたのですか?」

『気がかりな事がある。おれが向かおう』




 シュランメルトはすぐさまAsrionアズリオンに思念を送り、急行したのであった。

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