第六章二十節 小康

「……今日も、何事も無さそうだな」


 食堂に集まった全員を見て、シュランメルトが呟く。

 その言葉通り、前回の襲撃から一週間経っているが、それまでタケル達に関する大小あらゆる規模の襲撃事件は起こっていない。


「グロスレーベにも警告はしているが、奴らの事だ。また姿を消す魔導騎士ベルムバンツェで襲ってこないとも限らない。ともあれ、今は体を休めておくか……」


 ぽつりと呟き、シュランメルトは食事を始めた。


     *


 その頃。

 裏道を通る、フードの男女数人がいた。


「ここだ。待っていろ」


 先頭の男が、後ろにいる全員を止める。

 そして、ある住居の前で立ち止まった。


「俺だ。通してくれ」


 と、中から声が返ってくる。


「合言葉は?」

「“無貌の我らゆえに為せるわざあり”」

「良し、通れ」


 中の声が許可すると、フードの人物達は急いで住居内に入り込んだ。

 全員が入り終えると、施錠音が響く。




「揃ったな。では、ベルリール城周辺の偵察状況を報告する。その後、襲撃の計画を練るとしようか」

「「了解」」

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