第六章七節 休息

「着きました。こちらが皆様のお部屋です」


 シャインハイルが案内した先は、人一人が居住するにはやや大きすぎる部屋であった。


「部屋は3つ確保しております。ただ、1つの部屋で皆様三人が過ごされるのも良いでしょう。お好きなようにお過ごしください」

「分かりました。ありがとうございます」


 三人を代表して、タケルがお礼の言葉を述べる。

 それを聞いたシャインハイルは、「そう言えば」と前置きした上で話した。


「そろそろお腹が空いた頃ではありませんか? 夕食の支度も済ませております」

「ありがとうございます! もうお腹ペッコペコで!」


 元気よく返事したのは、リンカであった。


「では、こちらへ。食堂を設けております」


 シャインハイルは引き続き、タケル達を案内した。


     *


 食堂に到着し、用意されていた席に座るや否や、タケル達に豪華な料理が出される。

 最初に出されたのは、魚介類のオードブル、カルプフェン・ブラウ コイのスープ煮であった。


「魚介類か。こう言っては何だが……リラ工房の食卓ではあまり見なかったな」

「ええ。あまり出しませんね。内陸部にある私の工房、並びに最も近い街“レスティア”では、魚介類をはじめとした海鮮は高価な食材ですから」


 リラはさらりと、シュランメルトに続けた。


「さて、お味はいかがでしょうか?」


 タケル達三人はしばしの間、食材を咀嚼そしゃくしていた。

 ゴクリと飲み込み終えて、ようやく口を開く。


「すっごい……美味しい、です」

「美味しすぎて、感想が……」


 答えたタケルとリンカは、感動のあまり食器を持つ手が震えていた。


「…………ッ」


 リリアに至っては、言葉すら出ていない――流石に食事は出来るが――。

 そんな三人を見たシャインハイルは、「王室の誇るシェフですもの。わたくしは嬉しく思っております」と、嬉しさを伝えた。


 オードブルであるカルプフェン・ブラウを食べる時間を十分に取った後、次の料理が運ばれてくる。

 ヴルストソーセージザワークラウト発酵キャベツ、グーラッシュ(スープの一種)、ハンバーグ、そして締めにフランクフルタークランツ(ケーキの一種)の順番で、タケル達に供された。


     *


「「ごちそうさまでした!」」


 食後の挨拶を終え、一同はいったん割り当てられた部屋へ戻る。

 シュランメルトは胃を休めるために、ベッドの上に腰掛けた。


「三人は初めてここベルリール城に来たが……気に入ってくれたようで何よりだ。あまり使う機会が無いとはいえ、国の象徴……それに、シャインハイルの住まう城なのだからな」


 ふぅとため息をつくシュランメルト。

 と、ノックの音が響いた。


「誰だ?」

「私です、シュランメルト。リラです」

「入ってくれ」

「分かりました。皆様も」

「“皆様”……?」


 シュランメルトが不自然な単語に違和感を覚えると、リラが、そしてタケル達が入ってくる。


「どうしてお前達も一緒にいる? リラの付き添いか?」

「はい。お願いに来ました」

「お願い……か。リラ、お前は関係あるのか?」

「はい。私は……そうですね、見届け人という事で同席しております」

「承知した。タケル達、お願いについて言ってくれ。もっとも、おれに出来る範囲で、だがな」


 その一言を聞いて、タケルが本題を切り出す。




「明日、僕達にベルグレイアを案内してください!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る