第五章六節 振返

 全ての機体を格納庫に収めた後、シュランメルト達は、ダイニングテーブルに座っていた。


「では、皆様。今回の模擬戦闘における振り返りを始めます。楽にしてください」


 穏やかな声で、話を切り出す。

 しかしシュランメルトは、天を仰いでいた。


「今回の模擬戦闘で、実力差がはっきりと分かった事でしょう。ですがタケル様、リリア様、リンカ様。気を落とす事はありません。貴方がたは魔導騎士ベルムバンツェを操縦するにあたって、筋が良いのです。それは私が保証しましょう」


 その言葉を聞いて、タケル達が安堵する。

 目で見て確かめたリラは、「それを前提とした上で」と前置きした。


「必要なのは、反射速度と、『無意識に動作を行うほどの反復練習』という事が判明しました。明日からは連日、魔導騎士ベルムバンツェに乗ったトレーニングですね」


 タケル達が驚愕の表情を浮かべる。

 まさか連日、魔導騎士ベルムバンツェに乗るとは思いもしなかったのだ。


「とはいえ、基礎体力を付ける為のトレーニングはします。ランニング以外は2, 3日に一度ですね。筋力はトレーニング、そして数日休ませると増加するらしいので。さて、本題に戻りましょうか。まずは、タケル様です」


 リラがタケルに向き直る。

 タケルは反射的に、背筋を正した。


「見たところ、タケル様は頻繁に体勢をシュランメルトに崩されていた様子。加えて、攻めも消極的。私の見立てが正しければ、タケル様に必要なのは、『相手の隙を見抜く判断能力』と『受け切れるか否かを見極める力』です。勇敢なる騎士として、時に攻め、時に受けて目の前の相手を確実に倒すのです。シュランメルト、指南役を頼みます」

「承知した。明日からはおれと一対一だ、タケル」

「は、はい!」


 タケルの返事を聞き届けたリラは、次にリリアに向き直る。


「リリア様は、中から遠距離の光弾攻撃を重点的に鍛えるべきですね。しかしそれだけでは心もとないもの。接近戦でも戦えるようにはします。が、やはり長所……『遠距離攻撃の精度と手数、威力を上げる』ですね。闇を照らす光がごとく、味方を支えるのです。フィーレ姫、お願いします」

「かしこまりましたわ。頑張りましょう!」

「はい!」


 リリアの返事を聞いたリラは、最後にリンカに向き直った。


「リンカ様は、『先手必勝』と『一撃と連撃の切り替え』に関して鍛えるのがよろしいでしょう。機動力を底上げして、相手よりも先に攻撃する……そして攻撃を受けた場合には、動きを読んで受け流す。その力があれば、炎のごとく戦えるでしょう。グスタフ、指導出来ますね?」

「もちろん! よろしくね!」

「はーい!」


 三人にアドバイスを終えたリラは、一転して明るい声になった。


「さっ、では今晩はもう夕食としましょう! 全員で美味しいものを作りますよ!」

「「おおー!」」




 かくしてリラ達の振り返りは終わり、夕食の調理に取り掛かったのであった。

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