第四章三節 書庫
「着きましたわ。グライス家の書籍は、この辺りにございます」
「ありがとう。用があったらここを離れるから、しばらく読ませてくれ」
「いえ、一緒にいさせてくださいませ。ゲルハルト」
「ボクもちょっと読ませてねー」
「もちろんでございます、パトリツィア様」
かくして、シュランメルトとパトリツィアは本を読み始めた。
*
「ふむ、昼か。そろそろ食事にしたいところだが……」
「そうですわね。そして、その合間にグライス家に関する情報をまとめましょうか」
「さんせーい」
三人は一旦書庫を離れ、食堂へ向かう。
それから数分後、昼食が差し出された。
「さて、いただきます」
「「いただきます」」
各々のペースで、食事を口に運ぶ。
と、最初に話題を切り出したのはパトリツィアだった。
「いろいろ見たけどさー、グライス家の本。シュランメルトのいるリラ工房並みの実績だよねー」
「それは既に知っている」
シャインハイルからの説明で、シュランメルトには伝わっている。
だが、パトリツィアはまだ続けた。
「しかも昔、とゆーか8年前はさ。積極的に戦争に助力して、ゲルハルト同様にアルフレイドの指揮下にいたってのもあるし」
アルフレイド――アルフレイド・リッテ・ゴットゼーゲン――とは、今は亡きシュランメルトの父親だ。
8年前、ベルグリーズ王国が隣国ハドムス帝国と戦争状態にあったとき、見事な戦略や卓越した指揮能力で、連戦連勝を収めた実力があった。
「……アルフレイド、か」
「ゲルハルト……」
「いや、心配しないでくれシャインハイル。
だが、彼は息子のシュランメルト――正確にはゲルハルト――の記憶を取り戻すために、自らを悪と為してシュランメルトに討たれたのだ。
1年経った今では、既にある程度心の傷も癒えてはいるものの、自らの実父であるアルフレイドを討ったシュランメルトには、一生忘れられぬ記憶となった。
そんなシュランメルトに、シャインハイルは優しく微笑む。
「かしこまりました。けれど辛くなったときには、いつでも
「ありがとう。やはり貴女は優しい方だ」
「ボクもいるからねー」
「ああ。いざとなれば、お前にも頼む」
かくして、シュランメルト達は情報共有を一旦止めて食事を済ませたのであった。
*
「さて、続きだ」
書庫に戻った三人は、情報共有を再開する。
「
「それは始祖に起きた出来事を知れば、当然と言えますわね。我らが守護神の恩恵を直に見て、感服してベルグリーズ王国に帰順した、と聞いております。その愛国心の裏付けとして、次のハドムス帝国との
シャインハイルは自然な流れで、自らの調査結果を報告する。
「
「戦争に備えてくれてはいるのか……。あまり私情は挟みたくないが、守護神の息子としては、国を積極的に守ってくれる存在を疑いたくはないな」
「そのお気持ちは分かりますわ。
シャインハイルはうつむきながらも、怒りを示していた。
「ともあれ、戻る方法を探るのも必要でしょう。どうしますか、ゲルハルト?」
「まだ時間がある。神殿に行き、
「かしこまりました。では、
「ボクはゲルハルトについてくよー!」
かくして、シュランメルトとパトリツィアは神殿に向かい、シャインハイルはそのまま書庫にとどまったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます