第二章三節 回収

 リラ達三人が夕食を作っていた頃、シュランメルトとパトリツィアは、昼間に戦闘をした私有地へと向かっていた。


「ここまで離れれば大丈夫だろうな。来いッ、アズリオンッ!」


 その言葉に続き、突風が吹く。

 風が止むと、漆黒の魔導騎士ベルムバンツェが立っていた。


「よく来てくれた。早速だが、急いで回収するぞ!」

「あっちだろうね。ボクの魔力で光でも出す?」

「いや、いい。おれは夜目が利くからな」

「ボクもだけどねー」


 雑談をしつつも、Asrionアズリオンは順調に、戦闘のあった場所へと向かっていた。


     *


「ここか。残骸は……見つけたぞ」


 撃破した3台の魔導騎士ベルムバンツェを見つけたシュランメルトは、T字状の剣の柄で穴を掘る。


「何してんの?」

「せめてむくろは弔わねばな」


 シュランメルトは残骸の胸部から死体を取り出すと、穴に放り込む。

 そして穴を埋め、黙とうを捧げた。


「……終わった?」

「ああ。証拠を回収する」


 Asrionアズリオンのカメラアイに内蔵されている照明機能を用い、証拠となりそうな場所をピンポイントで探す。


Harfareysハルファレイスだが、国の所属を表す塗装がベルグリーズ王国のものに塗り替えられているな……。証拠になるか?」

「うーん、まだシラを切り通されそう。せっかくならもっと決定的なものを……ん?」

「どうした?」


 パトリツィアが、何かを見つける。


「左肩のこれ……。どう見ても、紋章だよね?」


 そこには、鷲をかたどった紋章があった。

 よく見ると、もう1台のHarfareysハルファレイスにも、そしてEmerdethエメルデスにも、同じ紋章があった。


「それだ! どこの所属かは分からんが、リラかシャインハイルに見せれば判明する。立派な証拠になるぞ!」

「全部持って帰るよ! 終わったら格納庫の前に置こう!」


 かくして、Asrionアズリオンは着実に、必要最低限の残骸を回収する。


「一気に行くぞ!」


 そして全速力で走り、空を飛んで、工房の格納庫前に残骸を置く。




 かくして、シュランメルトとパトリツィアは、何事も無かったかのように証拠の回収を終えたのであった。

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