4.55.受け継いだ雷閃流
ライアはなかなか部屋に入れないでいた。
だがまだ窓が割れる音は聞こえていない。
この騒動に気が付いた子供たちが状況を察知し、隠れてくれていたらいいのだが……今は自分の事だけで体一杯だ。
レミと別れた途端、窓から三人の敵が入ってきたのだ。
それに続いてレミの方にいた二人もこっちに走ってきている。
最悪だとは思ったが、ここで負けてはいられない。
敵が入って来た瞬間に体をぐっと落とし、持っている日本刀を模した武器に手をかける。
「雷閃流……横一文字!」
「!? がっは!」
空中にいる敵は身動きが取れない。
故に剣を防ぐことしか出来なかったが、ライアの一撃はそのナイフすらも砕くほどの威力だった。
すぐに一人を倒したライアは、未だに空中を飛んでいるもう一人の敵を横から強襲。
居合からの二連撃。
すぐに納刀し、前にいるもう一人の敵に集中する。
先程とは違い少し大きめのソードを持っている為少し警戒をしておく。
だが立ち止まってはいられない。
こいつを素早く始末して後ろにいる敵に目線を合わせなければならないのだ。
無理を承知で突っ込み、活路を開く。
「水よ──」
「させん! 雷閃流
「なんっぐぼっ!」
何故剣を振らず魔法を発動しようとしたのかは分からないが、師匠から唯一褒められていた素早い踏み込みの間合いつぶしが役に立った。
昔から脚力には自信があったライアは、この攻撃が一番得意なのだ。
この技の一番良い所は、納刀をしないところ。
すぐに振り向いて眼前まで迫っていた敵を斬り伏せる。
「雷閃流縦二文字!!」
正手持ちからの抜刀。
敵の頭をかち割って刃を振り切り、右下からの切り上げで後ろにいた敵に間合いつぶしで急接近して斬り上げる。
ここにいるのは子供だけだと思って油断したのだろうか。
敵が少し弱すぎる。
だが、この最後に残った敵は攻撃を防いだ。
「ぐっ……」
「お! 手がしびれてますね! 効いたようでよかった!」
だがナイフでこの攻撃を受けるこいつは強い。
今のうちに何とかしなければ後から後手に回りそうだ。
刀を両手で持ち、そのまま突き刺す。
ナイフなので力はなかなか入り辛かったのだろう。
意外とすんなりと突き刺すことができた。
敵はドサリと地面に転がって動かなくなる。
それを見届けたライアはようやく一息つき、子供たちが寝ている部屋に大急ぎで入っていった。
「皆無事か!」
『はぁい! お客さんが来てたからおもてなししておいたわよ~』
「ああ、そう……」
そう言えばこんなお化けがいたな。
そんな事を思いながら、周囲の状況を確認したがまぁ酷い物だった。
魔法を発動させたのだろうか。
氷が周囲に付いており、数人の凍り漬けにされた敵が二人ほど転がっている。
メランジェは魔法使いだったらしい。
これであればエンリムに魔法を教えてくれるかもしれないという考えが湧いたが、今はそれどころではない。
見た所子供たちは無事な様だが、敵が殺しいに掛かって来たが為に怯えてしまっている様だ。
流石に一人で三人を抱えて移動する事は出来ない。
ダッダッダッダ!
「くっ……! まだ来るか!」
『ライア君は廊下の敵をお願いね。私は窓からくるのを標本にするわ!』
「んー、不気味だが心強い」
『なにか言ったかしら?』
「いいえ何も!」
ライアとしてはレミの方も気になるが、流石にこの状況では見に行くことができない。
だが後ろは任せれそうなので、廊下に出て戦うことにする。
こっちの方が部屋よりは戦いやすいのだ。
バンッと蹴り開けた扉に敵がぶつかった。
ラッキーと思いながらすぐに廊下に飛び出て低姿勢を取って構える。
敵の数は四人。
レミのいる部屋の扉に二人いるがこちらにはまだ気が付いていなさそうだ。
時間の問題ではあるだろうが。
「雷閃流……!」
間合いにいる敵は三人。
視界内でその数を数えて敵が振り上げてくる武器を把握。
突き技と上段からの斬り下ろしと横薙ぎ。
速いのは横薙ぎなので……!
「扇!!」
ぐっと持っている刀を後ろに下げ、右肩を前に出す。
そして扇を描くように斬り上げて斬り下ろした。
それにより全ての刃を巻き込んで吹き飛ばし、隙を作り出す。
すぐに両手持ちに変えて三人を一気に斬り捌いた。
ライアではまだこの居合で敵を仕留めるのは難しい。
居合で隙を作り、そして斬り伏せる。
今のスタイルはこれだ。
師匠にはさんざん言われているが、一撃で仕留めなければ今後に響きそうだ。
さて、反省はこれくらいにして、残っている一人とレミのいる部屋の扉を殴っている二人を仕留めることに専念する。
「炎よ、我が前に姿を現し、敵を穿ち給え。ファイヤーランス!」
「ぐっ!」
敵を三人倒した瞬間、その後方から攻撃が飛んできた。
何とか回避は出来たが、屋敷の一角にぶつかって炎が上がり始めている。
これはマズいと思ったが、心配は無用だったことを思い出して突っ込んでいく。
後方から冷気が漂って来たことは言うまでもない。
その中で、師匠から教わった技が自分の力になっていることに気が付いたライアの集中力は上がり始めていた。
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