4.51.資金調達
「ちょ!? 木幕さん!? 駄目! それは駄目! 待って待って待って!」
「ライアさん暴れないで!」
「「ライア兄ちゃんを止めろー!」」
「そい」
バリィアアン!
「ぎゃあああああ!?」
持っていた大きなクオーラ鉱石を粉々に砕いてしまう。
大小様々な大きさに砕かれたため、これであれば何処でもいい値段で換金することができるはずだ。
ようやくこれでしっかりとした資金を集めることができる。
全部取り出して壊している所をライアに見られた為、こうして全力をかけて止められていたわけなのだが、説明するのも面倒くさいのでレミと子供たちに取り抑えてもらった。
という訳で魔法袋の中に入っている物全てを取り出して壊していく。
壊した物はもう一度その中に入れて、良しと頷きまた懐に入れた。
「よしじゃないですよぉ!? それの価値教えましたよね!?」
「大きすぎると売れんのだ。だから砕いた」
「ええー……」
事実を言ったまでなのだが、どうやらその理由だけでは納得できなかったようだ。
とは言え子供たちに渡した物を壊す気はないので、それだけは残しておく。
さて、ではこれを換金しにくとしよう。
「レミ」
「あー、案内ですね。分かりました」
話が早くて助かる。
思い立ったら即行動。
今日はやる事が無いとは思っていたのだが、これを思い出してしまったのだ。
そう言えばこの魔法袋も返しに行かなければならない。
換金が終わったら返しに行くことにしよう。
「これを売ればどれくらいになる?」
「んー、私でも想像が付きません。まぁレッドウルフの毛皮を売った時よりは高く売れるんじゃないですか? もしそうじゃなかったら別の店にすぐに行きましょう。再度正規の値段で買うと言ってきてもすぐに違う所に行きましょう。いいですね?」
「や、やけに食いつくではないか……。まぁよいが」
高い取引になるのだから、これくらい慎重に行かなければならない。
向こうも商売だからと足元を見てくるだろうが、それに気が付いたらそことは取引をしないに限る。
いい鴨だと思われては困るからだ。
しかし……あれだけの鉱石を同じ店で売るというのもなんだか気が引ける。
相場が分からなくなりそうだし、小分けして売るという事にして二人は換金してくれる宝石店へと足を運んだ。
◆
店を見つけるのに時間がかかってしまったが、何とか店を見つけることができた。
クオーラ鉱石を売ることができる店は宝石店と武具屋らしい。
後はギルドに売るという事も出来るようだが、やはり専門店ではないので買い取りは少し安い様だ。
ここはレミに任せて、まずは羽振りがよさそうな宝石店へと足を運ぶことにした。
そして今現在、魔法袋の中から鉱石を一握り分ごそっと出したのて鑑定をしてもらっている所だ。
偶然だが、スキルという言葉をここで久しぶりに聞いた。
鑑定スキルという物を使ってこの鉱石の値打ちを調べる様だ。
大きさと形によって値段基準が設定されているらしく、担当してくれた鑑定士はまじまじと見てその鉱石の値段を一つ一つ記載していく。
「……立派な物ですねぇ……。こういうのはなかなか取れないのですが」
「はははは……」
まさか二人で行って取って来たとは言えないので、レミは木幕に絶対に喋らないようにと釘を刺している。
変に目を付けられると困るからだ。
しかしその事は今までの反応を見て木幕も理解している。
ここは言う通りに黙っておくことにした。
「ふむ、では……ここにある物で……これくらいでいかがですか?」
「……っ!?」
鑑定士は紙にこの鉱石の値段を書いてレミに手渡す。
それを見たレミは目を見開いて驚いていた。
若干手も震えている気がするが、それ程にまでの大金だったのだ。
「きっ……きっ、キン金貨四百七十枚……!?」
「一握り程の鉱石でか……」
「はい。できればもう少し高くお買い上げしたかったのですが、ここまで一気に持ってこられるとうちとしても少し……」
「おお、そう言ってくれる人は信じてもよさそう……。じゃあこれでお願いします」
「有難う御座います。ですが金額を少し削っていることは確かなので、この店にある鉱石一つをサービスいたします。金貨三十枚以内の物をお選びください」
「まじですか!?」
それに喜んで食らいついたレミは、すぐに席を立って店の中の商品を吟味し始めた。
まぁ好きにさせておくことにしよう。
その間に鑑定士が準備した金を受け取る。
ずっしりとした袋に入った金貨は想像以上に重い。
これが今後の活動資金になるのだから、大切に扱っておかなければならないだろう。
「これで取引は成立です。有難う御座いました」
「いやこちらも助かった。鉱石だけでは飯は食えんからな」
「そうですね。因みにですが、どこのチームに所属しているのですか?」
「……旅の者故、適当に参加したから名は覚えておらんな」
「はは、そうですか。もし手に入ったら持ってきてください。今度は店に金を置いておきます」
礼をしたのを見た木幕は、その部屋を出る。
店に出てみると一つの鉱石を手に持ったレミが、一緒に出てきた鑑定士に向かってこれが欲しいと頼みこんでいた。
その鉱石は首にかける物だったようで、服の下に仕舞っていれば戦闘の邪魔にはならなさそうだ。
白い鉱石で綺麗にカットがされてある。
「お目が高いですね。それには疲労軽減の効果が付与されています」
「ですよね! これがいいです!」
「ではそちらはサービスとしてお譲りいたします。今後ともご贔屓に」
満足そうにしてその鉱石を首に下げたレミを連れ、ようやくその店を出ることになった。
さて、まだまだ鉱石はあるのだが……流石にこの魔法袋は返さなければならない。
便利さは理解しているので、何とか代わりになる魔法袋を調達できないだろうか?
「あ、武具屋さんか魔法道具屋さんにあるかもですよ」
「魔法道具屋……。気になるな。そっちに行くとしよう」
「じゃあっちです!」
「これではないのか?」
「え?」
隣にあった。
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