3.12.Side-レミ-望まぬ合流
三時間程でネズミを全て地上へと持ってくることが出来た。
後はこれでギルドに持っていくだけである。
このネズミの尻尾は薬の調合に役立つのだ。
肉はとてもではないが食べれない。
なので基本的には捨ててしまうか燃やしてしまうかするのだが、国の中で燃やしてしまうと問題になる。
とりあえずギルドに持って行って、そちらで処理をしてもらうというのが良いだろう。
だが、時間がかかった分その量も多い。
ネズミの入った袋が五十程転がっていた。
中には六匹から七匹のネズミが入っている為、単純計算でも三百匹のネズミを狩ったという事になる。
レミは全く仕事をしていないが、運ぶだけで重労働だったので、これはこれでよかったと安心する。
水瀬には駆除を手伝ってもらったので、浮いたお金で食事でもという話になった。
これだけの数のネズミを駆除すれば、それ相応の資金ももらえるはずだ。
「お疲れ様です」
「疲れましたぁー……」
片付け終わって、ようやく腰を下ろす。
もう地面に根が張った様に動けなくなってしまう。
気が付かないうちに随分と披露していた様だ。
だが、水瀬は息一つ切らしていない。
一体どうしてあそこまでの重労働をして、息を乱さないのだろうか。
とは言え、考えても仕方のない事なのでまずは自分の息を整えることに集中する。
「このお肉は食べれるのでしょうか?」
「ま、不味いと思いますよ。汚い所にいるネズミなので……」
「勿体ないですね~。蛇にでも食べさせればいいのに」
そう言いながら、水瀬は自らの持つ日本刀を手入れし始める。
刀身は木幕の持っている物とほぼ同じだ。
だが、なんとなく違うという事が分かった。
しかしそれが何かはレミには分からない。
まじまじと見ていると、その視線に気が付いた水瀬が声をかけてくる。
「これですか?」
「あ、はい。綺麗ですね」
「そうでしょう? 銘は水面鏡。鏡写しの双子刀です」
そう言い、もう一本の刀も抜く。
レミが見やすいように角度を調整して、その刀身を見せてくれた。
確かに全く同じ刀だ。
長さ、厚さ、刀の形は瓜二つ。
本当に鏡写しという言葉が似合う刀であった。
水瀬は見せた後、軽々と刀身を操って鞘に納刀する。
木幕でもあそこまで軽そうに刀を振っている所を見たことは無い。
刀自体が軽そうに思えた。
「き、器用ですね……」
「ふふ。そんなことないですよ。刀のお陰です」
そんなことは無いでしょう、というのがレミの本音だったが、それは口にはしなかった。
それを聞いてから、ネズミの死体の山に目を向ける。
とりあえず、これを馬車か何かで運ばなければならない。
この近くに借りれる場所があるだろうか……。
そう思い、周囲を見渡してみる。
すると、運よく馬車を出してくれる場所を見つけることが出来た。
あそこで馬車を狩りて、ネズミをギルドに持っていけば依頼終了だ。
「水瀬さんすいません、私あそこに行って馬車を借りてきます」
「ああ、わかりました。私は此処で待っていますね」
「有難う御座います!」
それを聞いて、レミはパッと立ち上がって店に走っていく。
初めてあった人にこういうお願いをするのは気が引けるが、今回だけは任せる。
借りるのはすぐにできる事なので、そう時間は取られないだろう。
しかし、立ち上がった瞬間、体がとても軽く感じた。
体重が少し空に浮いている様な感じだ。
重労働な作業を連続でこなし、一度休むとこういう事がよく起きる。
久しぶりの感覚に、足がおぼつかなくなったがそれもすぐ慣れた。
ぱぱーっと走って、馬車を借りに行く。
馬車はすぐに借りることが出来た。
一頭の馬を操って、空の荷馬車を水瀬の所に持っていく。
そこまで来て、レミは顔から血の気が引いていった。
相変わらずネズミが入った袋が転がっており、そこには水瀬が待っていたのだが……。
何故か木幕も座って待っていたのだ。
どちらもまだ刀を抜いてはいないが、何かを喋っているようである。
レミは急いでそこに合流した。
「ちょ、ちょちょちょちょっ!」
「レミか。遅かったな」
「おかえりなさい」
何故こんなに二人とも冷静なのだろうか。
その事に不安と疑問を覚えたが、今はそれどころではない。
「なんで師匠がいるんですかっ!」
「む? いや、たまたま通りかかったのだ。すると水瀬がおってな」
「ええ……」
レミとしては、まだ斬り合っていないので問題はないのだが……。
こうも簡単に合流されてしまっては、拍子抜けである。
というより、どうしてそんなにも早く合流してしまったのだろうか。
一度会って数日も経っていないはずである。
この二人には何か引き合う物があるのだろうか?
「私の計画がっ! どうして貴方たちはこんなに早く出会っちゃうんですか!」
「運は天にありだな」
「命は天にありね」
「難しい言葉使わないでっ!」
運は天にあり
運は人間がどうこうできることではなく、すべて天命によるものだということ。
命は天に在り
人間の運命は天の定めることで、人間の力ではどうすることもできないということ。
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