第166話 『その日、王国の比率を聞いた』

 神丸は用事は済んだと言いたげにそそくさとその場を後にし、自陣の控室へと戻って行った。きっと、私が対戦相手としているのか心配になって見に来たのね。

 そうしてようやく我に帰ったフェリス先輩は、毒気を抜かれたモニカ先輩にお説教を始めた。


「モニカ!」

「は、はいっ!」

「そこに座りなさい」

「え、でも」

「座りなさい」

「此処じゃちょっと……せめて場所を」

「す・わ・り・な・さ・い」

「……はい」


 フェリス先輩の怒りは凄まじく、モニカ先輩は正座をしてしまうほどだった。あまりの迫力に、思わず私も正座しそうになっちゃったわ。怒ってる姿から、ソフィーと同じような空気感を感じるわ。さすが姉妹ね。


「モニカ、私ちゃんと言ったわよね。シラユキちゃんに手をあげたら許さないって。モニカも約束してくれたじゃない。シラユキちゃんには何もしないって。あれは嘘だったの?」

「それは……心配、だったから」


 最後の方はゴニョゴニョしてたけど、聞き取れた。

 私の心配をしてくれてたのかな? それにしてはちょっと好戦的だったけど。


「そしてこうも言ったわね。シラユキちゃんは私の恩人であり、貴女の大事な先輩の恩人でもあるって。感謝の気持ちを伝えていたけれど……あれも口だけの物だったと言うの?」

「それ、は……」

「モニカ! 貴女は」

「先輩先輩、その辺で」


 ぼんやりと展開を見守っているうちに、お説教はさらにヒートアップしていて、今後の2人の関係にヒビが入りそうだったので、慌てて止めた。


「で、でもシラユキちゃん」

「それ以上はダメですよ。まあ確かにフェリス先輩の仰ることはもっともです。先輩の事となると我を忘れちゃう所は早めに治療したほうがいいと、私も思いますし。ただ、今回は私を心配して行動に移してくれたらしいですし、その割には過激でしたが先輩の放った言葉にモニカ先輩もガチ凹みしています。それで私の溜飲は下がりました。私も売り言葉に買い言葉でしたし……だから、そのくらいにしてあげて下さい」

「……はぁ、そうね。分かったわ」


 先輩はチラリとモニカ先輩を見た。モニカ先輩は頭を下げたまま微動だにしない。その姿からは、主人に怒られてしょんぼりとした犬の姿が幻視させられた。


「モニカ、こっちは良いから他の残ってる仕事をして来て」

「ごめんなさい、分かったわ」


 とぼとぼとその場を後にするモニカ先輩を見て、先輩は頭を抱える。


「はぁ、モニカの困った性格、何とかしてあげたいんだけど……これも血なのだと諦めたくはないのよね」

「血、ですか?」

「そう。モニカのお父様もその筋では有名な人でね。戦闘能力だけで見れば抜きん出た人なんだけれど、色々と……性格的に問題があるのよ。一度手綱を放すと手がつけられなくなっちゃうの」


 まだモニカ先輩に対する怒りが収まらないのか、周りに目がいってないみたいだけど……。今の寸劇、観客達の視線の中で行われたのよね。観客たちは好きに騒いでいるので、全ての会話が筒抜けになってはいないだろうけど、お説教は聞こえていただろう。

 こういううっかりなところも、姉妹そっくりだわ。

 言わないであげるのも優しさかな? きっと後で気づいて恥ずかしそうに身悶えするんだろうけど、そんな姿まで観客に晒す必要はないわね。


「モニカ先輩のお父様、ですか」

「ええ。オグマ・ヒルベルト様。通称『赤獅子』ね」

「『赤獅子』……」


 聞いたことがあるわね。


「普段はにこやかなんだけれど、戦いが始まると飢えた獣のように敵を探して、執拗に追いかけては魔物の集団へと突っ込んでいく。そして大きな戦果をあげて、毎回魔物の血で全身を濡らして帰還する姿から、そう呼ばれたそうよ。その活躍もあって一気に侯爵まで上り詰めたんだけど政治はとんとダメな人でね。そんな人を唯一操れるのが今の奥方様であり、オグマ様の幼馴染のマリア様。聡明で美しい方で、モニカはそんな2人のをとても濃く受け継いでいるの」

「つまり、お馬鹿で脳筋な部分と、美しくて聡明な部分って事ですか?」

「う……まぁ、そう言うことね」


 母親のいい部分と父親のダメな部分を足して割っちゃったのか……。聞きようによっては父親7の母親3くらいあるわね。

 なら史実のようにフェリス先輩を失っていたら、理性なんてきっと溶けて無くなっ……。あっ!!?


 もしかして、モニカ先輩って……あの、王国問題児筆頭の『狂乱姫』。

 またの名を『鮮血女帝モニカ』では? 戦場では常に暴れまわっていて、平時でさえ狂気9割、理性1割未満の荒れ狂う獣。言葉は喋るくせに話は一切通じず、何でもない事ですら地雷ワードになっていて、一度踏み抜けばしばらく暴れ続けて手が付けられなくなるという、とんでもキャラ。

 落ち着かせるには子供の頃の思い出のアイテムを見せるしか手段が無かったんだけど、きっとそれがフェリス先輩との思い出由来の品だった訳ね。あんな狂気に堕ちた姿、今とは似ても似つかないわね。

 そりゃ思い出せないわけよ。姿も形も表情すらも、ぜんっぜん違うんだもん。


 フェリス先輩は大切な存在である分、失ってしまうとそんな風にタガが外れてしまうんだわ……。


「……シラユキちゃん? どうしたの、悲しそうな顔をして……」

「あ、いえ。その……もしあのまま私がフェリス先輩達を助けてあげられなかった場合、モニカ先輩どうなっていたのかなって」

「……そうね。きっと、誰の手にも負えなくなっていたか、新しく執着出来る人が出来ていたか、ね」


 新しい人はついぞ、現れなかったなぁ。


 未来で現れない以上、フェリス先輩の代わり。というか、モニカ先輩にとっての執着対象に、代わりは存在しないと言えるわけで。もしこの先フェリス先輩が男性と結婚なんて話になったらどうなるのかしら?


 結婚相手をぶちのめして掻っ攫うかしら?

 それとも表面上は納得して、病むかしら?

 それとも勝手に姑ポジションについて、嫁いびりならぬ旦那いびりをするのかしら?

 もしくは自分も結婚して、自分の子供と彼女の子供で代理結婚させようと画策するかしら……?

 はたまた、完全にぶっ壊れて、自分の子供にリスフィーなんて名前を与えて猫かわいがりしたり、人形にリスフィーと名前を付けて……。うわ。


 ……うん、良い未来が1つも浮かばないわね!!


 モニカ先輩には申し訳ないけど、失ってしまった場合の未来を見ているから、どう行き着いてもハッピーエンドにはならない気がする。なりようがないわ。

 となればどうすればいいんだろう。あんな堕ちたモニカ先輩は見たくないし、フェリス先輩も助けた以上は幸せになって欲しい。

 現実的な話、彼女たちの幸せを願うならくっつけてしまったほうが手っ取り早い。という話が前提として必要だけど。

 けどそれには周囲もその状況に納得させられる理由や環境が必要よね。


 いっそのこと、モニカ先輩に、か……?


「シラユキちゃん?」

「お嬢様?」

「ふぇ?」


 おっと、いけないけない。危ない考えに身を委ねすぎていたわ。

 可能性としてはなくもないけど、ちょっと突飛過ぎたかも。


「どうしたの、今度は思い悩んでいたようだけど……。モニカのことなら心配しないで、私がきっとなんとかして見せるから」


 先輩の努力は疑わないけれど、努力だけではどうにもならなかったから、こうなってるような……。やっぱりさっきの手法を真面目に考えるべきだろうか。


「先程のお嬢様からは、何やらとてつもなく妙なことを考えている気配を感じたのですが……」


 アリシアは相変わらず流石すぎる。


「まあ……安心しなさい。今は考えても実行出来ない事だから」

「左様でございますか」

「……おほん。話は終わったか?」


 モリスン先生が煩わしそうにそう言った。……あれ? そういえばずっと居たんだっけ?


「もしかして、気配を消してました?」

「当然だろう。赤い方の痴話喧嘩など、関わるだけ時間の無駄だ。巻き込まれないよう影に徹するのは学園教師の中では常識だ」

「うぅ……」


 先生からそう言われるなんて、今までどれだけ事件を起こして来たんだか。想像に難くないわね。


「それで、話は中断されたがここに羅列されている効果を教えてくれないか」

「あ、そうでしたね。じゃあまずはー」


 そうして、1人実行委員が減ってしまったが『決戦フィールドV2』の設定項目に関して説明を再開した。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「そう、モニカ先輩はまたやっちゃったのね」

「またって言われるくらいの頻度なんだ……」


 選手用控室……と言っても、この場所は名前から想像出来るようなむさ苦しい場所ではなく、剣を磨く場所や精神を集中出来る部屋なんかも個別に用意がされてはいるが、実質貴族仕様のゴージャスな客間だった。

 『闘技場の控室』とは名ばかりの、お茶が楽しめるくらいには、のんびりまったり出来る憩いの空間である。

 まあこんな部屋は、今に始まった事ではないけど。


 そんな場所で先に戻っていたソフィーとアリスちゃんに、先程の騒動の説明をしたのだった。『決戦フィールドV2』の機能説明と一緒に。


「そりゃ先生もいないフリするわよね」

「それで、アリシア姉様が案じてはいたけど、何が思いついたわけ?」

「え? あー……。説明が、難しいわね。モニカ先輩を今後暴走させないための、落ち着かせる解決策ではあるんだけど」


 っていうか下世話な話だから、あんまり声を大にして言う事じゃない。


「モニカ先輩を落ち着かせる方法!? なにそれ、すごい事じゃない!」

「いやー、解決策というか苦肉の策と言うか、回避策と言うか……」


 むしろややこしくなると言うか……。


「なによ、ハッキリしないわね。アンタが言い淀むなんてどんな内容なのよ」

「モラル的に厳しいのよ。ほら、そもそも女性同士だと結婚出来ないじゃない?」

「「「え?」」」


 私が何気なく言った言葉に、全員からとんでもなく困惑した表情で見られた。中には非難めいたものまで。


「……え?」


 まさか……え?

 なんで?


 ……え?? ホントに??

 いやでも待って。ゲーム中ではそんな話一度も……。


「お嬢様……本気で、仰っているんですね」

「う、うん……」


 アリシアから、本気で心配されているような目で見られている。そんなに変な事を言ったの……?


「この国の男女比は3:7と言われています。男性が3で、女性が7です。その為男性は複数の女性と関係を持つことがされています」


 ほ!?


「それでも女性が余ってしまう可能性がある為に、女性同士の婚姻も許されているのです。他所の国でも比率に違いがあれど、同じ制度が取られているところはあると、聞いたことがあるのですが……。ご存知なかったのですね」

「し、知らないんだけど……」


 比率もそうだけど、ハーレム推奨!? 女の子同士も可!? なにそれ、そんな話全然知らないわよ!!

 いやまぁ、この世界女の子が多いなとは思ったのよ? 学校でも街中でも、出会う人の半分以上が女の子だったし、女の冒険者もやたらと見かけるなぁと。

 でもそれは、目の保養と思って深くは気にしなかったんだけど……。まさか比率自体が違うなんて。道理でこの学園で、一部の男連中が無茶苦茶やっていても、強く処罰出来ないわけだわ。

 男が貴重なんだもんね。


 それに……。女の子同士のガードが緩いのも、わかった気がする。

 シラユキちゃんがいくら最強カワイイ存在だとしても、CHRの暴力があるとしても、全員なんだかんだ言いつつも、最後には全力で甘えても嫌がられない理由の根底は、そこにあったのね!?


「アンタ、ほんっとーになにも知らなかったのね……」

「はい、存じ上げませんでした」


 思わず正座しちゃう。


「そんなに畏まる必要はないけど……。まあいいわ、そう言うことなの。でも女性同士なら誰でも結婚して良いわけじゃないわ。貴族なんかは跡取り問題があるもの。男の兄弟がその家にいれば、奥さんを貰って子供に相続が出来るけれど、女系の家には後継がいないの。高位貴族であればあるほど、体裁的に養子も取りにくいしね」


 ふむふむ……?


「私達姉妹がどちらも女性と結婚することは出来ないから、少なくともどちらかは男性と結婚しなければいけない訳。フェリス姉様は、モニカ先輩の事があるから難しいの。一時期は縁談が進んでいたんだけど、結局それも失敗に終わっちゃったし。だから私がどこかに嫁ぐ必要があるんだけど……」


 そこでチラリと私を見た。……なるほど!


「ソフィー」


 両腕を広げて構える。


「ち、ちがうちがう! そういう意味で見たんじゃないわよっ!」

「ええー?」


 じゃあどういう意味で見たのよ。……でも本当に違うみたい。難しい顔をして……あ、悲しい顔になった。


「全く、私の気持ちも知らないで……」

「ソフィー……?」


 あれ? 今のソフィーの表情、どこか覚えがある。

 どこで? ……ゲームで、だったかな?


 あれは確か、好感度がカンストした時の事。『大好きよ』って告白してくれたんだけど、その時の彼女はちょっと悲しそうで。今にも泣きそうで……。けど言葉に出来ない。言ってはいけない。そんな感じだった。

 あの時はゲームだったからというのもあってか、その表情の真意を、彼女は答えてくれる事はなかったけれど、今なら……。


「ねえ。ソフィーは、私と結婚してくれるの?」

「!! ……でき、ないのよ」


 ソフィーは悲痛な表情でそう呟いて、視線を落としてしまう。

 ……ああ、そっか。だからは、あんな表情、してたんだ。

 ソフィーはあの時点で、公爵家唯一の血を継ぐ娘。公爵様も病気がちということだったし、跡継ぎはこれ以上望めない。


 私が、女の子だったから。

 ソフィーは公爵家の娘だから。

 男の兄弟も、養子も望めない以上……私とは結婚が出来ない。


 そんな諦めから来る、悲しい表情だったのね。

 

 ……でも今は違うわ。フェリス先輩も生きているし、今の私は全ての職業の恩恵が得られる、なんでも出来ちゃう最強カワイイシラユキちゃんよ。出来ない事なんてないわ!!

 公爵家の跡継ぎ問題くらい、いくらでも解決してやるわよ!


 その決意を形にするように、思いっきりソフィーを抱きしめ、安心させるように背中を撫でた。


「大丈夫、私が何とかするわ」

「シラユキ……。うん」


 ソフィーが落ち着いたところで、気になっていたことを尋ねた。


「じゃあ私、皆と結婚出来ちゃうのね?」

「ちょっ!? 普通、舌の根も乾かない内に他の子の話をする!?」

「えー? でも気になるしー」

「……はぁ。もう、あんたって子は」


 頭を抱える代わりに、より一層ソフィーは私の体に顔を埋めた。

 拗ねちゃったかな?


 代わりにアリスちゃんが答えてくれる。


「シラユキ姉様。女性同士の婚姻は、本来は1カップルだけとなります。多妻制度はあくまでも男性に、子供を多く作ってもらうための措置ですから。……ですが、シラユキ姉様は特別ですから、他国の男性に取られてしまうくらいならと、お父様から多妻制度が特別、許されるかもしれません」

「おおー」


 という事は、皆のウェディングドレスが作れるし、直接見られるし、なんなら私の手で着替えさせられるって事!?

 私や小雪、アリシアや大事な人たちが他人の物になるのは我慢ならないし、大事な家族もいつかは誰かに嫁いで行っちゃう。そう考えただけで涙が出て来ちゃうほどだったから、普段はなるべく考えない様にしていた話題だけど……。

 私の手で、彼女達を着飾ってお嫁さんに出来るって言うなら! その制度、願ったりだわ。


 ……そんな素晴らしい話があったなんて、目からウロコだわ。

 はわわ、夢が広がる……。うふふ、うふふふふふふ。


「シラユキ、今まで以上に顔が蕩けてるわよ。……本当に知らなかったのね、嬉しそうにしちゃって」

「んふふー」

「っていうか、知らなかったのに普段からあんな行動してるなんて。そこが何より驚きだわ」

「えへへー」

「……ダメ、聞いてないわね」


 えへへ、皆のウェディングドレス……えへへ。


「その様ですね。ここまで深く入り込むお嬢様は珍しいです」

「あの、ソフィア姉様」

「どうしたのアリス」

「今までのシラユキ姉様は、この制度を知らない状態。つまり愛情を抑制した状態で、私達を愛でられていたのですよね?」

「そうなるわね……あっ」

「はい。我慢しなくて良くなった今、どうなってしまうのでしょう……。主に、私達が」

「うわ……」

「お嬢様の愛を、ただただ享受すれば良いのです」

「アリシア先生はそれで良いのでしょうけど、うう。私、身がもたないかもしれません……」


 妄想の海にドップリとハマっていた私は、彼女達の悩みに気付くことは無かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「……えへ」

「お嬢様、しっかりしてください」


 時間がそろそろ。

 と言う事で、私は闘技場のリング手前まで呼び出されていた。いまだに現実へと戻ってこない私を見て不安に思ったのか、アリシアとソフィーに引っ張られる形でだけど。

 ちなみにアリスちゃんは背中から押す役を担っている。


「もう、今から戦いが始まるのよ? そんなフニャフニャの状態で戦えるわけ? しゃんとしなさい」

「ふにゃふにゃ」

「聞こえてるじゃない。ほら、しっかり背筋を伸ばして」

「んう……。いまはそんな気分じゃないのに……」

「甘えないの、時間は待ってはくれないのよ」


 そうは言われても……。だって、今まで皆、その制度を知ったうえで私と関わって来てくれていたんでしょう? 勿論私の思うような、じゃ無かった子も居ただろうけど、彼女達の好意は紛れもなく本物だった。

 つまりは、『』なんでしょ?


 嬉しくて顔がニヤけてしまうのは仕方がないわ。

 はわわ。


「ソフィア姉様、ここは1つアレを……」

「そう、ね……。こうなっては仕方がないわ」

「ほぇ?」


 あれってなんだろう。


 ソフィーをぼんやりと見ていると、ソフィーは顔を紅潮させ、決意の満ちた眼でこちらを見据えて来た。


「シラユキ。……こ、この戦いが終わったら、ご……ご褒美をあげるわ。だから、1つも大きな怪我をする事なく、無事に戻って来なさい! 良いわね?」

「!!! ご、ご褒美ってなに!? 同衾とは違うの!?」

「そ、それは戻ってからのお楽しみよ。勿論、完全勝利ではない時は無効と思いなさい! 気をつけて戦うのよ! 良いわね!?」

「うん! うんうん!! 任せて!!!」


 ノーダメージ縛りね!!

 よーし! やるぞー!!


 元気になった私は彼女達の補助を外し、戦いの場へと駆け出した。


「ソフィア姉様、内容は決められたのですか?」

「う、まだ決めてない……」

「シラユキ姉様の事ですから、ご褒美と言えば大体許されるのでは?」

「そんなチョロくはないんじゃ……」

「特別感があれば……。あとは本気度合いが伝わればお嬢様も喜ばれるかと。内容の濃度がなんであれ、結局同衾はなされるんですし」

「そっか、そうね。ようは気持ちよね。結婚の話も出ちゃったし、覚悟を決めるわ」

「はい、私も手伝います!」


 やる気に満ち溢れ、先を急ぐ私の耳には、彼女達の相談事は聞こえていなかった。


『ウェディングドレス、憧れるわね!』

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