第361話 当然です!!

 とは言えです。

 いくらヴィスデロビアを鼻血が出るまでぶん殴る為に、最初から全開でいくと言っても……最近、全くと言って良いほど全力を出した事なんて無いですしね。

 いきなり全力だとどこか痛めちゃう可能性がありますね。


 本当に、ホント〜に! 誠に遺憾ですが、徐々に上げていくとしましょう。

 超上級ヒキニートたる僕が全力運動するのだから、アップは凄まじく重要な要素!

 まずは3割程度から……


「ほっ!」


 アップがてらの3割の速度でヴィスデロビアに切迫して鼻めがけて右ストレート!


「この程度かな?」


 ひらりと、当然の様に回避したヴィスデロビアがそう言って微笑みを浮かべる。

 端的言って、かなりウザイ。

 この気取ってる感じがとにかくムカつきますっ!!


「この程度なわけ無いでしょっ!」


 空ぶった勢いを利用し、翼を回して更に遠心力を付けながら気取った笑顔へと回し蹴りを放つ。


「……!?」


 やれやれと言った感じに肩を竦めていたヴィスデロビアの動きが止まり、驚いた様に目を見開いて顔が強張る。


「やっ!」


 硬直して動きを止めたヴィスデロビアが吹き飛ばされて、爆発音の様な轟音が鳴り響く。

 発生した衝撃波が大気を揺らし遠方の雲を消し飛ばす。


「滅砲っ!!」


「っ!」


 全てを消し去るレーザーが吹き飛んだヴィスデロビアを追撃する。

 空気すら消滅させつつ飛来する滅砲は一瞬でヴィスデロビアまで切迫し……上空に離脱したヴィスデロビアが、何事も無かったかの様に姿を現し……


「妾の事を忘れては困るなっ!!」


 ネルヴィアの踵落しが脳天へと振り下ろされた。

 一瞬でヴィスデロビアが地面へと突き刺さり、けたたましい轟音と共に地面が割れてめくれ上がって巨大なクレーターが出来上がる。


「おぉ!」


 流石はネルヴィア様、凄まじい威力です!

 無人の荒野だから良かったものの、もし仮に下が統一神界だったら大惨事でしたね。

 うん、ヴィスデロビアを統一神界上空から蹴り飛ばして良かった。


「しかし、これは……」


 う〜ん、ネルヴィア様の外見は幼女……とまでは言わなくとも、ハッキリ言ってかなり幼い。

 まだまだ幼い少女が一瞬でこの光景を作り出す威力の攻撃を当然の様にするって……


「途轍もなくシュールですね」


「ルーミエルよ、お主にだけは言われとう無いわ!」


「?」


 な、なんでか怒られちゃいました……まぁ一緒に頭を撫でてくれたので別に良いですけど!


「クックック、手が痺れたのは久しぶりだ」


 僕の回し蹴りを受け止めていた右手と、ネルヴィア様の踵落としを受け止めた左手をひらひらと揺らし、クレーターから姿を表すヴィスデロビア。

 やっぱり大したダメージは無い様ですね……まだ気取った笑みを浮かべてますし。


「やはり貴方達2人を同時に相手をするのは少々キツい」


「当然です!」


 そもそも、ヴィスデロビアの相手なんて僕一人で十分なのです!!

 そこにネルヴィア様が加わっての2対1、キツく無い訳が無い!


「もう少し遊びたかったが……仕方ないか。

 次のステージに移るとしよう」

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